涙のホテル・ル・ドーファン

2019年3月4日

ホテル・ル・ドーファン

ホテル・ル・ドーファンの客室

予約の手配ミスで、今夜泊まるはずじゃなかったホテル・ル・ドーファン。私たちが案内された部屋は最上階のペントハウス。ルーフテラスや中庭までついた豪華なスイート仕様だ。

ママは「いい部屋じゃん!ここでゆっくりしなさいということだよ」とケラケラ笑う。

まあ確かに日本からロングフライトのあとモロンダバへ行き、それからベレンティーへ行きでちょっとハードスケジュールだったことは事実だ。時計を見ると午後6時前。今夜これからどこにも移動しないで、このホテルに泊まるのだとすると、ナルホドかなりゆっくりできますね。

 

ホテルルドーファンのラウンジ

          ラウンジのカウンターでビールとアイスクリームを注文するママ

 

真夜中の間違い電話

ソファーにもたれながら、携帯のアドレス帳をもう一度チェックする。すると、おお~~マックスサファリの森田さん(代表)の番号があるじゃないか!さっきは気が動転していて見落としちゃったのかな。でもとにかくこれでとりあえず連絡が取れるよ。暗闇に差し込む一条の光のように落胆したわたしの心の片隅がパッと明るくなる。もう問題は解決したかのような気分になって発信、が、なかなか出ない。今、日本は真夜中すぎだ。もう寝てるのかなーー、あきらめかけた時、すごく眠そう、というか眠ってておこされましたふうのしわがれ声で誰かが出た。

「もしもし、誰ですか?」

「え、森田さん、、、じゃないですか?」

「え、森田、、ちがいますよ、わたしはナカイワです」

ええ、ナカイワさんって、もしかして昔同じ会社で働いてたナカイワさん?そんなーー、どうして?森田さんじゃないの?ナカイワさんとは転職してからもう3年以上会ったことがありません。3年ぶりの会話が真夜中にマダガスカルからの間違い電話で叩き起こされるものだなんて、オーノゥ~不幸すぎる。ごめんなさい!と丁寧にあやまればよかったのだが、わたしにしても「なんで森田さんじゃないんだよ、チェッ!」と勝手に落胆して逆ギレしてるから、ろくにあやまりもしないないまま電話を切ってしまった。

「今のマチガイ電話?」横で耳をすましていたママが尋ねる。

「あ、うん」

「ちょっと~信じらんナイ、いま日本何時なのよー、こんな時間に間違い電話なんて相手の人すごい迷惑!」

「いや、そうなんだけど、なぜか森田さんじゃなくてナカイワさんにかかっちゃった」

「アナタが普段からいいかげんにしてるからでしょ、日本に帰ったらよくあやまっときなさいよ」

「へ~~い」

 

ホテルのまわりを散歩

                   ホテルのまわりを散歩する

 

気持ちを切り替えてセットで遊ぶ

でもこれで今夜はもう打つ手がなくなった。明日の朝またマックスサファリのオフィスに電話するとして、これからどうしようか?

「せっかくだから散歩してそのあとロビーで冷たいビールでも飲もう」とママが提案する。

ママは本当に気持ちの切り替えが早い。気持ちを切り替えたというより、最初から何も入ってなかったんじゃないの、という感じだ。まあこんなトラブルの時、親が2人とも落ち込んでいたらどうしようもないしね。家族4人でホテルのまわりをぶらぶら散歩して、そのあとロビーで冷たいビールを。こどもたちはアイスクリームをオーダーする。それから誰もいないロビーで自分の部屋のようにくつろいでセットで遊ぶ。

セットは頭脳と反射神経を鍛えるカードゲーム。単純なわりにものすごく盛り上がる。家族でやると本当に時間がたつのも忘れて没頭できる遊びだ。

 

客室とルーフテラス

 

連絡がついた!

あまり夢中になって遊んでいたら、ふっとわれにかえって、ああ、今、トラブルでフォールドーファンに足止めになっているんだったと、現実に引き戻される。

と、その時わたしの携帯が鳴る、

「もしもし?イルカですが」

「森田です、いったいどうされたんですか?」

さっきマックスサファリのオフィスに電話した時、誰も出なかったのでボイスメールにメッセージを残しておいたのだ。日本時間でこんな夜中にメッセージを聞いて、これは一大事と連絡をくれたらしい。すごい!さすがアフリカ旅行に関して日本一頼りになる森田さん。

事情を説明するとやはり森田さんもわたしと同じ認識だ。今夜はタナに飛んで明日ペリネへ向かう、というのが正しいスケジュール。もう今夜の飛行機は出てしまったのでそれはどうしようもできないけど。明日以降のスケジュールをなんとかもとにもどさなくてはいけませんね、と森田さん。とにかく大至急そちらにいる松崎に連絡を取ってホテルに向かわせます。

ああ、こんな時同じ町にその会社のスタッフがいるなんてどんなに頼もしいことか。地球の裏側でうれしさのあまり横っ飛びジャンプするわたしだった。

 

ホテルのラウンジで飲んだ冷たいビール