「神」を信じる者は「紙の橋」を渡る〜万国民の教会とゲッセマネの園

2019年2月23日

バスは、エルサレムの旧市街を北東から取り囲むように、螺旋状にぐんぐん登って行く。

そしてオリーブ山の中腹にある展望台で停止した。

ドアが開くと皆、ポップコーンが弾けるみたいに勢いよくバスから飛び出す。

「おお~~黄金のドームだ」

「すげー景色!」

オリーブ山の展望台

オリーブ山の展望台

オリーブ山からエルサレムの旧市街に向かって半円形にせり出した、バルコニーのような展望台。目の前に、朝日を受けてきらきら輝く世界遺産の街並みが広がっている。イスラム教の聖地、岩のドームや、イエスが最後の晩餐をいただいた建物など、ガイドブックや絵葉書などで度々お目にかかる、イスラエルを代表する景観だ。

日差しは強いが、空気が乾燥しているので、こりゃまた予想外に快適。

ゲッセマネの園の入り口

                      ゲッセマネの園の入り口

「神」を信じる者は「紙の橋」を渡る

オリーブ山は標高825m。ここから見下ろすと岩のドームや、黄金門がある神殿の丘はすぐそこに見える。しかし、オリーブ山と旧市街の城壁の間には、ケデロンの谷という深い渓谷がよこたわっている。

旧約聖書によると、終末の日、このケデロンの谷をまたぐように、オリーブ山と神殿の丘の間に、「鉄の橋」「紙の橋」が架けられるという。最後の審判に望む人類は、どちらかの橋を選ばなくてはならないと伝えられている。

100kgの鉄のかたまりと、100kgの綿ではどちらが重いでしょうか?というひっかけ問題みたいですね。

結局「神」を信じる者は「紙の橋」を安全に渡ることができる、という話しらしい。

「神」と「紙」をひっかけたかーー。

あ、でもヘブライ語では違うでしょう(苦笑)。それとも、数千後に日本という国があって、そこでは「神」と「紙」が同じ発音になるとまで、予言して読んだうえでのひかっけ問題だったかーー。いやいや、いくならんでも、そんな壮大なスケールのひっかけ問題、作るの無理でしょう。

ゲデロンの谷からダビデの町にかけては、ダビデ王の時代から3000年も続く墓地になっている。最後の審判の日に、死者の魂がここで蘇ると信じられてるのだ。

*展望台にはトイレもあります(きれい!)

万国民の教会

           樹齢2000年を越えるオリーブの木 / イエスが通ったゲッセマネの園

ゲッセマネの園とオリーブの木

さて、展望台からの眺めを堪能し、説明を聞いたあと、再びにバスに乗って、今度はゲッセマネの園へ移動する。

ゲッセマネの園は、オリーブ山の麓にあるイエスゆかりの場所。あたりはオリーブの林が繁り、オリーブ油の精製が盛んだったらしい。イエスは度々この庭園を訪れては、祈りを捧げていたと言う。現在も園内にはたくさんのオリーブの木が生えているが、その中の8本はイエスの時代からすでにあった老木。

これらの木々は、イエスの祈りの声を聞いたのだろか?

万国民の教会。祭壇と聖なる岩

万国民の教会。祭壇と聖なる岩

           

万国民の教会

庭園の奥まったところには、万国民の教会が建っている。

最後の晩餐を終えたイエスは、弟子たちとゲッセマネの園にやってきて、最後の夜をすごした。

その時イエスが座って祈り続けた岩が残っている。

その岩を取り囲むように建てられているのが、万国民の教会だ。

            この岩の上に座って祈りながら、イエスは最後の夜を過ごした

教会の中に入ると、賛美歌が流れ、祭壇で神父が聖書を朗読している。

もう少し奥へ進むと、神父が立っている祭壇の前の床に、白い岩が横たわっているのが見えた。

畳5~6枚分くらいの大きさだろうか。

岩の表面は、一度溶けてしまったアイスクリームを、冷凍庫に入れて固めたような、不自然で自然な凹凸がある。

イエスの様子が描かれたモザイク画

                 イエスの様子が描かれたモザイク画

2000年前、この岩の上で、イエスは祈りながら最後の夜を過ごした。大勢の観光客や信者らしき人が、岩の前でひざまづいて祈りを捧げている。中には涙を流している人もいる。万国民の教会は、美しくももの悲しく、そして、心が洗われるような、とても神聖な場所だった。

*教会内へは、信者でなくても自由に入ることができる。

*写真、ビデオ撮影も可。ただし、ノースリーブやミニスカート、半ズボン、水着など肌の露出の大きい服装は避けよう。

万国民の教会の礼拝

黄金門

万国民の教会の美しいモザイクのファザードは、ちょうど正面にある黄金門と向かい合っている。

黄金門はエルサレム旧市街を取り囲む城壁にある門のひとつ。城壁には全部で8つの門があるが、唯一、黄金門だけが閉ざされている。

この黄金門が開くのは、救世主が現れてエルサレムに入城する時だと信じられているからだ。

 神聖な岩に触れるこどもたち

                     神聖な岩に触れるこどもたち

興味深いことに、救世主が黄金門からエルサレムに入城すると信じているのは、キリスト教だけではなく、イスラム教もユダヤ教も、同じようにそう信じているのだ。

ゲッセマネの園を出てゲデロンの谷に沿った道路をバスまで歩く。

見上げると、吸い込まれそうな青い空をバックに、神殿の丘を守る黄金門が、静かに語りかけているようだった。

万国民の教会のファサード

  万国民の教会の美しいファサード / 万国民の教会前から黄金門を見上げる / ゲデロンの谷にあるアブサロムの塔