ラクチ遺跡とビラコチャ神殿
ラクチ遺跡
クスコの南およそ120キロの荒涼とした高原に、こつ然と巨大な神殿を中心とする遺跡群が現れます。カンチス地方を代表するインカ時代の遺跡「ラクチ遺跡」です。ラクチ遺跡は、インカの人々に崇められていたビラコチャ神を祭る「ビラコチャ神殿」を中心に、食料貯蔵庫、貴族の館、人工湖、道路、などの建造物から構成されています。特筆すべきは、マチュピチュやクスコなどインカ時代の遺跡、建造物が石組みで造られているのに対し、ここラクチ遺跡では、建造物のかなりの部分が日干しレンガ/アドベで造られているということです。
また遺跡全体を取り囲むように城壁が建設されており、その「インカウォール」の全長は30キロメートルにもおよんでいます。チチカカ湖で紀元前200年頃に生まれたティワナク文明がインカ文明の起源とされますが、クスコよりチチカカ湖に近いこのラクチのほうが、よりインカの「原型」に近いのかもしれません。
バスを降りて教会前の露店を眺めながらラクチ遺跡へ向かいます。
ラクチの集落。このあたりには約80世帯の家族が住んでいて、陶芸や農業、観光などで生計をたてています。
鷹でしょうか?教会の軒下にとまっていて、みんな写真を撮っていました。
羊が放し飼いになっています。
少し歩いたら遺跡が見えてきました。
近づくに連れ大きさが実感できます。
ラクチ遺跡の主神殿「ビラコチャ神殿」の壁です。
神殿の先には居住区と食料貯蔵庫が見えます。
この風景は何百年も前から変わってないんでしょう。
ガイドさんが見せてくれたラクチ遺跡全体のイメージ図です。
インカウォールで取り囲まれた内側に神殿や居住区、農地などがありました。
インカウォール
ラクチ遺跡を取り囲む城壁「インカウォール」です。
望遠で撮影したので画質が悪いですが、丘の尾根沿いに全長30キロメートルにもおよぶそうです。この城壁に囲まれた広大な範囲の中心がビラコチャ神殿です。丘の尾根にそって築かれているとこなどまるでインカ版プチ万里の長城といったところです。
広大なインカ帝国にたった2つしかないビラコチャ神殿のひとつ
ビラコチャはインカ神話に現れる創造神です。伝説によるとビラコチャは世界の再創造をおこない、人間を造ったと伝えられています。インカ帝国では、太陽神「インティ」を天の序列の第一位に置きましたが、これは統治のため作為的におこなわれたと考えられています。それに対して、もともと民衆の間で自然発生的に崇拝されていたビラコチャ神は、インカの「正統」な神様と呼べるのではないでしょうか。そのビラコチャ神を祭る神殿は、実は広大なインカ帝国に、たった2つしかなく、1つはインカ帝国の首都だったクスコ、そしてもうひとつがここラクチです。
クスコ/アルマス広場のビラコチャ神殿は、石組みの土台だけ残しスペイン人に破壊され、現在はキリスト教会の聖堂/カテドラルになっています。一方、ラクチ遺跡のビラコチャ神殿は、土台以外の壁や円柱などが残されています。しかも高さ12m、長さ92m、幅25mというとてつもない大きさで、首都クスコやマチュピチュにあった、どの神殿をもしのぐ圧倒的な巨大建築物です。これだけ大規模な神殿が、なぜこんな何もない高原に建てられたのか?この場所がどれほど重要だったのか?
残念ながらよくわかっていません。
日本ではほとんど知られていないラクチ遺跡ですが、インカ帝国最大級の神殿遺跡は一見の価値があると思います。インカの遺跡のほとんどが、石組みの土台しか残っていないのに対して、神殿の壁や円柱などが当時の姿のまま残されおり、見応えもあります。
広大な都市遺跡、希少なビラコチャ神殿、巨大な建造物、保存状態、クスコやマチュピチュより古い可能性、など、ラクチ遺跡の魅力は大きく、もっと注目されも良い遺跡ではないでしょうか。
単にクスコからチチカカ湖へ移動する目的で利用したバスツアーですが、こんな珍しい場所に立ち寄ってくれて、思わぬ遺跡を見学することができ、本当に良かったと思います。
神殿の長さは92mあります。インカ帝国最大規模の建物だと思います。
神殿の壁は石組みの土台の上に日干しレンガを積んで造られています。
そして壁の外側には円柱が建ち並んでいました。
円柱も何本かは現存しています。
こちらも壁同様、石組みの土台と日干しレンガで造られています。
ガイドがさんがビラコチャ神殿のイメージ図を見せてくれました。
一番大きな壁は「外壁」ではなく、「主柱」の役目を果たしていたんですね。
神殿のすこし先にも大きな建造物があります。
こちらは居住エリアです。なんか日本の城下町のような感じです。
まっすぐ伸びるメイン通りは、冬至の日に太陽が正面に見えるように設計されています。
食料貯蔵庫も整然と並んでいます。
こうしてビラコチャ神殿を中心とした広大な都市遺跡ラクチの見学が終りました。遺跡が広過ぎて、1時間程度の見学ではとてもまわりきれません。バスツアーのついでに立ち寄れたのはラッキーでしたが、もっとゆっくり見たかったなという気持が強く残る遺跡でした。