さよならシチリア島さよならニコラ
お世話してくれたバレンチィーノ兄さんとニコラと
シチリア最後のプール遊び
モディカから戻ってプールで遊んでいたらニコラたちがやって来た。アンドリューに 昨晩の食事のお礼を言うと、モディカはどうだったかと尋ねてくる。
「いや~結婚式には出くわすし、チョコレートは美味しいし、ママなんか山のようにチョコ買って、持って帰るの大変だったよ~」
「そうか、それはよかった、ガッハッハッ」
わたしたちがモディカを気に入った様子がわかると、アンドリューはヒゲに隠れた白い歯を見せながら、大きな声で豪快に笑った。その声はずっとむこうの谷まで響いているようだ。
一方、その間にもこどもたちはプールで大暴れ。今日でお別れなのに寂しそうなそぶりも見せない。
わかっているのかな?いやいや、子供にとっては明日の別れより、今この瞬間をいかに遊ぶかのほうが大事なんだ。
夏のヨーロッパの日は長い。ファームステイのプールで夜まで遊ぶこどもたち
シチリア最後の夕焼け
やがて日がかたむき、シチリア島で最後の夕焼けを見る時がやってきた。
乾燥した大地にオリーブの木の影が長く伸びて、絵の具を混ぜたような西の空が、しだいに夜の色に統一されてゆく。
シチリア島にいたこの数日間でも、日没の時間が日に日に早くなっているのを感じる。夏は確実に過ぎ去ろうとしており、この島にももうすぐ秋がやってくるのだ。
「宝物」のポケモンカードを交換するこどもたち
さよならニコラ
いつしかプールからあがったこどもたちは、それぞれが大切にしている「ポケモンカード」の交換を始めた。
男の子はいつの時代でも大切な宝物を持っている。メンコだったり、ビー玉だったり、石ころだったり、ライダーカードだったり。今の時代はそれが「ポケモンカード」なのだ。昔と違うのはその宝物が「世界共通」ということ。イタリア語や日本語がわからなくても、ポケモンの名前は同じなんだね。
この子たちが大きくなったら世界はどうなっているのかな?今より平和で豊かで、もっともっと世界中の人たちが笑顔で話し合える世の中になっているのかな?
「そろそろ行かなくっちゃ」ニコラが言う。
「ぼくにとって、カイとリュウは、はじめての日本人の友達だよ」
「ぼくらにとっても、ニコラははじめてのイタリア人の友達だよ」
こどもたちの記憶にこの夏の思い出はどううつってゆくのだろう?
緑の芝でサッカーボールを追いかけたこと、きらめくプールの底でにらめっこをしたこと、オリーブの木陰ですやすやと居眠りをしたこと。
本当に楽しかったね。ありがとう、そして、さよならニコラ。
ぼくたちはきっと忘れない、太陽のような君の笑顔を、君と出会ったこの夏を。
夕闇にまぎれて見えなくなるまで、遠ざかる君の背中に、いつまでもいつまでも手を振り続けていた。
いつまでも友達だよ