月夜のトゲの森でナイトサファリ
ベテランガイドのジョンは日本語が達者
食事が終わったらいよいよお待ちかね、ナイトサファリへ出発だ。
今夜、トゲの森を案内してくれるのはベテランガイドのジョン。背が高くがっしりした体つきで、猛獣に襲われても助けてくれそうな頼りがいのあるナイスガイだ。ってマダガスカルには猛獣はいませんから。
ジョンの話すかたことの日本語が面白い。
レストラン前で待っているとバスがやって来て、ジョンとマミーがしっしょに乗り込む。他に乗客はいない。どやら今夜のサファリはわたしたちだけでおこなわれるようだ。
このピンク色のはセミだって
夜のバス
ベレンティーには、シロアシイタチキツネザル、ハイイロネズミキツネザル、レデッシュグレイネズミキツネザルの3種類の夜行性キツネザルが生息している。昼行性のキツネザルが群れで行動するのに対して、彼らは単独で行動する。それでなくても夜は暗くて見つけにくいのになんてややこしいやつらなんだ。
このあたりにはロッジ以外に人口の建物はないから、夜は本当に真っ暗になる。わたしたちを乗せたバスは、その暗闇の中をゆっくり進んで行く。そういえば井上陽水のセカンドアルバムに「夜のバス」という歌が収録されていた。夜の闇を走る乗客の少ないバス。失恋した男が行き先のわからない夜のバスに揺られている。ミステリーと童話の中間地点のような幻想的な描写が印象的な歌だった。
5分ほど走ってトゲの森に到着。ここでバスを降りて、いよいよナイトサファリの始まりだ。ここから歩いて夜の森を散策する。バスを降りると、ひんやりした外気に体が包まれた。乾燥地帯では、夜になると急に気温も下がってくる。昼間のあの強烈な日差しがウソのようだ。
どこにいるかわかるかな~ / これはわかるでしょ、ハイイロネズミキツネザルです
トゲの森に潜入
「みなさん、準備はいいですか?」
バスを降りて少し進んだ広場でいったん集合。そこで各自に懐中電灯が渡され、ジョンを先頭に、いざ出発!
真っ暗闇に思えた夜空も、よく見ると満月に近い月が登っている。それがトゲの森の不思議な形の枝や葉の影を地面に落とす。月明かりで影ができるのも不思議だが、それがこんな珍しい木々たちの影なら、それでひとつの物語ができそうなほど幻想的な光景だ。オルセー美術館で見たルソーのへび使いの女の世界を歩いているよう。先頭を静かにゆっくり歩いていたジョンが急に木の上をサーチライトで照らす。
「はい、ではこちらは、はいいろいたちねずみざるになります」
え、もう見つけちゃったの? で、何色いたちさるねずみだって?
いやいや、さるねずみじゃなくって、いたちねずみざるです。
いたちねずみざるって、その生き物はいたちなの?ねずみなの?さるなの?そもそもなんだ、その紛らわしい名前は!
なんて1人でツッコんでる場合じゃなく(長いよそのツッコミ!)、ジョンがサーチライトを照らすその強力な光線の先をよく見ると、おお~いたいた、いたちねずみおとこ、頼むよ~金貸してくれよ~って鬼太郎か!鬼太郎の目玉のおやじの息子みたいなやつ、ってそれ鬼太郎じゃん!
え?いたちじゃなくてねずみだって?はいいろねずみきつねざる、が正しい呼び方?。ああもうややこし~~。もっとシンプルにいこうぜ、コロとかポハポハとか。でもジョンはすごいね、こんな真っ暗な夜の森の中で、なんでそんな当たり前のように、木の上にいるあんな小さな生き物を見つけられるんですか?!
「よ、すごい!」「日本一!」「大統領!」はおおげさか、「ガイド!」ってそのまんまじゃん!
一番衝撃的な出来事
さてそんなこんな不思議の木々が繁る満月の夜のトゲの森を、動物や鳥や昆虫を見つけながら散歩するナイトサファリ。こどもたちもこの時点で、マダガスカルで一番楽しかったこと、に認定していた。1時間ほど夜の森を散策してバスへ戻ると、運転手がわたしたちに気づいてエンジンをかける。
エ?もしかしてこの人、ここで1人でおれたちの帰りを待っていたの?こんな誰もいない暗~い夜の森で。
こどもたちにとってはそれもすごい衝撃みたい。
マダガスカルで一番すごかったこと、に認定していました。