マレーシア・ボルネオ島子連れ(長男小5、次男小2)旅行記〜ダナンバレー・レインフォレストロッジ編

2019年4月23日

ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ

ダナンバレーについて

ダナンバレー自然保護区域は、ボルネオ島北東部の内陸に広がる低地熱帯雨林の保護区。ダナン川とスガマ川に囲まれるようにして、いまだ手付かずの原生林が広がり、世界で最も生物の多様性が高い場所のひとつとして知られている。

本来この貴重な森も伐採される予定だったが、イギリスの団体がその研究的価値を主張し、伐採計画が変更となった。1986年には保護区内に「フィールドリサーチ・センター」が開設され、主に熱帯雨林の研究の他、環境教育プログラム等が行われている。1994年にはさらに奥地に一般の観光客向けの宿泊施設として「ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ」が建設された。

保護区内の最高地は標高1093mのダムス山。このあたりでは10平方kmあたり約200種類の木が存在する。また、鳥類が275種、ほ乳類が110種、爬虫類72種、両生類56種、魚類37種、そして昆虫は今だ新種の発見が続く程多様な種が存在している。

太古の姿をとどめる熱帯雨林が残るダナンバレーは、一般の旅行者が行く事の出来る中で、最もボルネオのエッセンスを体感できる場所なのだ。面積はおよそ438平方km、アクセスは、最寄りの町ラハダトゥから車でおよそ3時間半(約85km)。

ダナンバレーの滝

ダナンバレーへの道

空港で、別のグループをピックアップしたあと、われわれを乗せたは車は、一路ダナンバレーを目指す。道路が快適なので、あ、こりゃー楽勝だ、と思った矢先、突如、未舗装のデコボコ道になった。

ラハダトゥの町はずれがすでに保護区の入り口になっており、入り口から先の保護区内の道路は未舗装。つまり、ラハダトゥから今夜泊まるダナンバレーのホテルまで、ほぼすべての行程が未舗装ということになる。ああ、だから85kmくらいの距離なのに、3時間以上もかかるんだ。

樹上に作られたキャノピーウォーク
樹上に作られたキャノピーウォーク。眺めがサイコーだよ☆

同乗者との会話

ラハダトゥ空港から合流したグループは日本人の、しかも今時珍しい男2人旅のお方。1人は企業の研究室で植物の研究をしていて、もう1人は大学院で環境問題の研究をしているという。へ~専門家じゃないですかー。2人とも大学時代からのお友達で、卒業旅行ではあのマダガスカルをまわって来たと言う。今回はダナンバレーの他、世界遺産のグヌンムル国立公園や、タビン野生動物保護区などまわる予定とのこと。

ラハダトゥの町を抜け、保護区内の道路に入ると、車窓には一挙にワイルドな景観が広がる。太古の姿のままの熱帯雨林。いつ道の脇からゾウやサイが飛び出して来てもおかしくない。今か今かと目を凝らしてみていたが、しかし、いっこうに現れない。そのうちこどもたちはあきてきて、Jリーグの話しをし始めた。

「だから、ケンゴのあのスルーパスが、、」

「いやあれはジョルニーニュでしょ」

「あれ、君たちカワサキのファンなの?」

それを聞いて植物の研究をしている山内さんがくいついてきた。

「はい、フロンターレのファンです」

カイが嬉しそうに答える。そいいう話しにだけは積極的だ。

「おれは違います。おれはガンバのファンです」

聞かれてもないのにリュウも答える。

「へー、そうか、あ、お父さんも?」

「あ、いや、わたしは広島カープじゃけん」

あれ、お呼びでない?

「もーパパ恥ずかしいから黙っててよ」

それからこどもたちと若い研究者のお兄さんたちとで、ずーっとJリーグの話しで盛り上がっていました。

トラブル発生

ラハダトゥを出発しかれこれ3時間近く走ったところで車が止まった。着いたのかな?と思って外を見るがホテルらしきものは見えない。運転席ではドライバーが何やら無線で交信している。う~~ん、これは何か良くないことが起こっているぞ。いったいどんなハプニングだろー、と身構えていると、ドライバーが後ろを振り返って

「すみません、この先、道路に水が溢れ出していてこの車では進むことができません」と言う。

げっ!何ですと?!じゃあホテルへ行けないの?ここまで来て!

「いえ、ホテルの車が今こちらに向かっています。申し訳ございませんが、ここで乗り換えて下さい」

「・・・その車に乗り換えたらホテルにいけるの?」

「行けます、ホテルはもうここから5kmくらいですから」

なんだ、そーゆーことか。だはははは。脅かさないでプリーズ♪ここからまさか引き返すんじゃないかと思ったよ、まったく。乗り換えるくらい何でもないですよ。

ボルネオレインフォレストロッジに到着
送迎車を乗り換える

ボルネオレインフォレストロッジに到着

ボルネオ・レインフォレスト・ロッジの客室
ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ

しばらく待っていると、われわれが進もうとしていた坂の上のほうからホテルの車が降りてきた。無線で連絡した後すぐ車が来たということは、本当にホテルはすぐ近くなんだろう。迎えに来たホテルの車はいわゆるピックアップワゴンで、広い荷台がついている。車から降りてきたホテルのスタッフが、わたしたちの荷物を、その荷台へぽいぽいと積み替えていく。そしてわれわれのほうを向いて、車内には全員乗れないので、どなたか荷台に乗って下さいと言う。

「じゃあ、わたしたちが」

と研究者のお兄さんたちが荷台にあがると、こどもたちも「いいなー」「おれも乗りたい」と騒ぎ出す。

「ホテルはすぐそこなのでいいですよ」とスタッフ。

「やったぁ~~」「すげー」

OKが出て大喜びで荷台に登るこどもたち。おいおい、あんまり騒いで車から落っこちるなよ。

ラハダトゥから運転して来たドライバーさんとお別れして、わたしたちを乗せたピックアプワゴンはゆっくりと、しかし力強いトルクで発進した。坂道を登って行くと大きくカーブしながらすぐに下り坂になる。周囲は枝や葉が繁る深い森で、少し開いている窓から、緑の風といっしょに虫や鳥やケモノたちのなき声が流れ込んでくる。それはまさにジャングルのオーケストラ!ああ、本当にやって来たんだ、太古の昔の姿をとどめるボルネオの原生林、ダナンバレーに。これこそ「ハートオブボルネオだ!」

坂を下って行くと急に視界が開けホテルが見えてきた。思ったよりずいぶん大きなホテルだね。こんなジャングルの奥地にあるから、ホテルと言っても山小屋のような簡素な宿泊施設を想像していた。これはなかなか立派なホテルだぞ。

ボルネオレインフォレストロッジ
ボルネオレインフォレストロッジに到着

ウェルカムドリンク

車から降りると、靴を脱いで2階へあがるように指示される。ぎしぎしと音をたてる木の階段を登っていくと、2階はものすごく広い空間だ。中央部分が吹き抜けになっていて、そこを囲むように、ソファーが置かれたロビーホールや、バー、レストラン、フロントが整然と配置されている。川に面した側にはバルコニーが突き出していて、眺めがとても良さそうだ。

ボルネオレインフォレストロッジ

あっけにとられてきょろきょろしているわたしたちを、受付のスタッフがにっこり微笑んでソファーに座るように促す。白いクッションが気持ちいいソファーに腰かけるとさっそく冷たいウェルカムドリンクが運ばれてきた。到着からここまでの一連の作業が流れるようにスムーズに進行することだけでも、このホテルの質の高さが伺える。

ウェルカムドリンンクのサービス
2階は広くて開放的なロビー / 冷たくて美味しいウェルカムドリンク

う~ン、ますます気に入った!用紙に記入しサインをしたら「すぐお部屋へ行きますか?」とスタッフが尋ねる。そうだね、ここのソファーも気持ちいいからしばらく景色を眺めていたい気分だけど、とりあえず部屋へ行こうか。

それからゆっくり立ち上がり、スタッフに案内され2階の渡り廊下の先にある客室へ向かうのだった。

客室へ続くボードウォーク
デックスシャーレには4人で泊まれる / 部屋から眺める原生林 / バルコニーも広い

ボルネオレインフォレストロッジの魅力

客室のバルコニーから原生林を眺める長男
バルコニーからの眺め

太古の原生林が壮大な迫力で迫るダナンバレー自然保護区内にある宿泊施設。ボルネオ島本来の自然の姿を求めて、世界中から 研究者やバードウォッチャー、昆虫愛好家、写真家、観光客などが訪れる。宿泊には、ジャングルトレッキングやキャノピーウォーク、 ナイトサファリなどのプログラムが含まれており、わずかな滞在期間でも 見たこともない動物や昆虫を目にすることができる。ロッジ周辺にあるトレイルは全部で7本。その他全長107m、高さ27mのキャノピーウォークなどがある。

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スタッフはもちろんネイチャーガイドの質が高いのもポイント。

客室はマレーシア伝統スタイルの高床式シャレーで天井ファン、温水シャワー付き。デラックスシャーレでは、バルコニーにバスタブが付いているタイプもある。またデラックスシャーレでは1部屋に家族4人で滞在できるのもありがたい。

客室内
デックスシャーレの入り口 / ベッドルーム / リビング

食事は朝・昼・おやつ・夕食付きで、それぞれビュッフェスタイル。マレーシアと中華風、一部イタリアンの 料理はなかなかの味付け。メインロビーにあるバーでは夜23:00まで 各種のアルコール飲料が楽しめる。

バスルーム
バスルームも清潔 / アメニティ

大自然のジャングルの中にいることを忘れてしまうくらいゆったりくつろげる、限りなく「5つ星に近いリゾートホテル」と言える。ただし、周囲は太古の姿をとどめる熱帯雨林であることをお忘れなく。虫、ヘビ/トカゲ、ヒル、を見ただけで卒倒してしまう人には向きません。

ボルネオレインフォレストロッジのお友達

ボルネオオオカブト
男の子が大興奮する巨大な三本角のカブトムシ

1)虫

わたしたちの滞在中、蚊はまったくいなかった。

スタッフに聞いても蚊はほとんどいないと言う。そのかわり、カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、蝶、蛾、の類いはいっぱいいます。客室内には羽ありみたいなのが数匹程いました。

ヘラクレスオオカブトムシを手にのせる長男
3本角の大カブトムシ

2)ヘビ/トカゲ

ベッドメイクをしていたらヘビがいた、とスタッフが見せてくれました。ヘビと言ってもみみずのちょっと大きいやつみたいな感じで人には危害をくわえないそうです。ロビーでも同じ種類のヘビを1回見ました。とかげの類いはそこらじゅうにいます。

3)ヒル

都会育ちの人はご存知ない方もいるでしょうが、ヒルとはナメクジみたいな姿で人や動物にくっついて血を吸う生き物です。ヒルに吸い付かれても痛くも痒くもなく、病気の心配もありませんが、その状況が気持ち悪いです。

ヒルの習性を理解していれば吸い付かれることはまずありませんが、せっかくの機会だからヒル体験をされてみてはいかはでしょうか?そう言えば「ヒルダイエット」とか「ヒルは美容にいい」という話しを聞いたことがあります(笑)ちなみにヒルに吸い付かれると、ホテルで証明書を発行し表彰してくれます(笑)

*ヒルの習性と対策については、「熱帯雨林トレッキング」の項で詳しく説明します。

ボルネオの昆虫
カブトムシがいっぱい! / 捕まえたヘビを見せてくれるスタッフ / 珍しいカミキリムシ

以上、ちょっと大げさに書きましたが、ちなみに、ケニア、タンザニアマダガスカル、などのホテルはもっと過酷です。それに比べたらボルネオレインフォレストロッジは天国のように快適なホテル。

いきなりそれら修行のような場所へ行く前に、まず予行練習としてボルネオへ行ってみるのもいいかもしれません。

レインフォレストロッジのサービス

ロビーでくつろぐ長男
熱帯雨林の原生林に囲まれたロビー

レイトチェックアウト

ボルネオレインフォレストロッジでは、うれしいことに、出発時間まで、自由に客室が使えます。わたしたちは午後4時半の出発でしたが、その直前まで部屋が使えたのは本当にありがたかったです。延長料金もかかりません。

洗濯/乾燥サービス

トレッキングで泥だらけになった靴やシャツを無料で洗濯してくれます。スピード乾燥もしてくれるので、チェックアウト前のトレッキングでも安心。

トレッキング

ロッジ周辺のガイド付きトレッキングの料金はすべて宿泊料に含まれています。基本的に早朝、午前、午後、夜の1日4回のトレッキングプログラムが組まれていて、ゲストは自由に好きなプログラムに参加できます。もちろん参加しないで部屋でのんびりするのもOK。

物干

バルコニーの一角に物干が設けてあり、ゲストは気軽に洗濯物を干せます。

バルコニーと物干し
バルコニーに物干があるのは子連れ旅行者にはうれしいですね

食事

朝、昼、おやつ、夜の食事も料金に含まれています。食事は基本的にビュッフェです。

証明書

ヒルに吸われたときは証明書を無料で発行してくます。旅の記念にどうぞ♪

レインフォレストロッジのディナー

ビデオレクチャー

「で、どうしよか?」

荷物を整理して一息ついた時、ママがこのあとどうるすか聞いてきた。6時半から始まるビデオレクチャーには必ず参加しなければいけないらしい。その後、今夜はナイトドライブサファリが計画されていて、1回目は午後7時にスタート、2回目は8時半にスタートすると言う。ビデオレクチャーの時間までに、ナイトサファリに参加するかどうか、もし参加するならどっちの回に参加するか決めて連絡しなくてはならない。

「あとの回に参加すると寝るのが遅くなっちゃうよ」

「でも最初の回だと夕食を食べるのが遅くなっちゃう」

「サファリのあと夕食べるんだったら、どっちみち早くは寝れないよ」

「じゃあ、お腹が減ってるし、ビデオが終わったらすぐ夕食を食べて、2回目のサファリに参加しようか」

というかお腹が減ってるのなら、あれこれ議論したって最初から答えは決まってるじゃん!!

ビデオレクチャー
レストランの入り口 / ビデオで紹介された「うんぴょう」の姿

ビデオレクチャーは、ロビーホールの一角にあるコンファレンスルームでおこなわれる。内容は、ダナンバレー保護区の自然環境について。ここに生息する動物や昆虫、鳥、爬虫類、両生類、植物の紹介と、それらの自然がいかに貴重なものであるか、それを守ることの意義、保護区に滞在中のルールについての説明が映像を通じておこなわれる。昆虫については、いまだ名前のついていない新種が数万種もいると推測されているらしい。

へーーそりゃすごいね。うんぴょうが5種類いることにもびっくり!

ヒルは全部で7種類いるらしい。そのうちタイガーリーチとブラウンリーチの2種類が人や動物の血を吸う。またダナンバレーには蚊はほとんどいないとのこと。もちろん危険なマラリアを媒介する蚊もいないらしい。

レストラン

なかなか勉強になったね。ビデオが終わって部屋の外に出ると空気がひんやりしている。ケニアやタンザニアでは赤道付近でも標高が1500~2000mあるから、朝夕は肌寒いくらい気温が下がる。それにくらべてこのダナンバレーは標高が高いわけでもないのに、こんなに気温が下がるのは不思議だ。

でも肌寒いというほどではなく、ちょとひんやりした程度の気温。そのうえ蚊がいないので、はっはっはっーと笑いがこみあげてくる快適さだ。さあ、では川に面したレストランで夕食をいただこう!ああ~~お腹ペコペコじゃ。

レインフォレストロッジのディナー

料理の写真
ごはんもあるよ♪

ボルネオレインフォレストロッジの夕食は、ビュッフェ形式。誰に遠慮おかまいなしに、好きな料理を好きなだけとっていただけるので、お腹をすかした猛獣のような子供がいる家族連れにはありがたい。中華料理とマレー料理、それにバーベキューの肉が、わたしたちの口に運ばれるのを今か今かと待っているぞー。うん、あんまり待たせちゃ悪いから、大急ぎでたいらげよう!

料理は美味しいし、テラス席の雰囲気も最高。夜は川の方向をライトアップしていて、森の中から動物がやってきたら観察できるようになっている。それにライトがぎりぎりとどく川の向こう岸の森がうっすら夜の闇に浮かび上がり、昼間とは違う迫力で迫ってくる。

川の流れる音や暗い森から響き渡ってくるケモノたちの鳴き声をBGMに、素敵な雰囲気のレストランで美味しい料理に会話もはずむのであった。

カレー
えびカレー / バーベキュー/ 野菜カレー

子育てコラム〜食育・ビュッフェのマナー

子連れ海外旅行では、ビュッフェの食事はとてもありがたいものです。

メニューが読めなかったり、どんな料理なのかイメージできないケースでも、ビュッフェなら、目の前にある料理を確認して、自分で皿に盛れるので簡単です。それに、お腹が減って野獣と化している子(特に男の子)に、料理が出来るまで席でじっと待ってることを期待するなんて不可能な相談ですから、すぐ食べ始めれるビュッフェ利用には二重三重のメリットがあるのです。

でも、ビュッフェだからといってどんなことでもしていいかと言えばそうではありません。ビュッフェの食事にもきちんと守るべきマナーがあります。まず、ビュッフェにおける一番の基本は、一度皿に盛った料理は絶対に残さない事。口に合うかわからない料理は、少量を取って試しに食べてから取る量を決めるようにしましょう。残さないで最後まで美味しく食べることは、ものを大切にし食事に感謝する気持ちをこどもの心に育む、食育の基本と言えます。

またこどもが自分で料理を皿に盛る場合、こどもが料理を手でさわったり、料理に向かってつばを飛ばしながら大声を出す、泣く、叫ぶ、などの行動はとらせないように注意しましょう。料理の前でのくしゃみやせきも厳禁です。

ディナービュッフェ

それからビュッフェでは、ドリンクバーで好きな飲み物を選べるケースが多いですが、我が家が気を付けていることのひとつは、食事の時の飲み物です。食事の前に炭酸飲料や甘いジュースを飲んでしまうと、それで空腹が満たされたような錯覚を感じるので、しっかり量を食べることができなくなってしまいます。それに味覚がおかしくなる可能性もあります。

そんなわけで我が家では食事の時の子供の飲み物はお茶か水に限定しています。

また、夕食では、食べ終わってから寝るまでの時間を考慮することも大切です。一般的に食べたのもが胃の中で消化するには2時間が必要と言われています。もし夕食を食べ終わってすぐ寝たら、なるほど頭は寝ているかもしれませんが、胃は一生懸命働いているわけで、これでは質の高い眠りを得るのは難しいでしょう。

少なくとも寝る1時間半前には夕食を終えているようにスケジュールを管理しましょう。今回我が家が先に夕食をいただいてから、後の回のサファリに参加するのもこのことが大きな理由です。ま、お腹が減りすぎていたというのもちらっとはありますが。

レストランのテラス席
テラス席の様子

さあ、食事が終わったらいよいよナイトサファリに出発だ。夜のジャングルってどんな感じなんだろう?今夜はどんな動物が見れるんだろう?ちょっとどきどきするね。アフリカのナイトサファリを思い出しながら、レインフォレストロッジのディナータイムはふけてゆくのだった。

ボルネオナイトサファリ

ナイトサファリから戻ってきたサファリカー
サファリカー

第一陣が帰還

食事が終わってテラスから森のほうを眺めていたら、ちらちらとこぼれる灯りがゆっくりこちらに近づいているのが見える。

「何だろう」と思ったがすぐにその正体がわかった。第1陣のナイトサファリを終えたサファリカーが、ホテルに向かって戻って来ているのだ。車寄せのほうに駆け寄って上からのぞくと、しばらくして真っ暗な森からサファリカーが帰還した。ゲストの中に山内さんたちが車から降りるところを見つけて、こどもたちは階段を転がるように下る。わたしたちもあとから付いて行くと、停止したサファリカーの横で何やらこどもたちが興奮していた。

「何が見えたんですか?」

「いや、うんぴょうがちらっと」

「ええ、幻の珍獣うんぴょうですってぇぇ~!それはすごい、うんぴょうはボルネオゾウと並んで最も見る事が困難な動物でしょ」

「ええ、でもわたしたちもやっぱりゾウ狙いなんで。うんぴょうはうれしいけど、ゾウが見れなかったのは残念です」

「じゃあぼくたちがゾウを見てきてあげるよ」

「そうかー。じゃあ、頼んだぞ!!」

2回目のサファリカーの出発までまだ少し時間があったので、こどもたちは捕まえたカブトムシをお兄さんたちに見せる。

「うわぁーこんなのがいるの!」

「こりゃすごい、うんぴょうやゾウよりこっちのほうが断然すごいよ」

こどもの頃からあこがれだったカブトムシ、それもツノが3本もあるこんな大きなやつを手に取って見れるなんて、夢のようです。

「ぼくたち、こどもなのにこんなすごい夢がかなってうらやましいな」

少年の目になった山内さんたちがしみじみと言った。

ナイトサファリカーに乗り込む

女の子とカブトムシ

ここでカブトムシにかかわるちょっとしたエピソードを。

夏休みが終わってリュウの授業参観に行ったら、児童たちの夏休みの研究が廊下に張り出されてあった。ひとつは自由研究で、もうひとつは全員共通の「カブトムシの研究」。それを見て驚いたのは、

女の子の何人かは(1人ではない!)

「カブトムシが飛ぶをことを知らなかった」「初めて触った」「かたいのでびっくりした」と書いてあったことだ。

男の子にとっては夢の宝物であるカブトムシが、女の子にとっては飛ぶ事さえ知らない程度の存在でしかないということ。

今さらですが、それほど男の子と女の子の価値観や考え方は違うんですね。だからお母さんにとって男の子の育児は難しいんだと思います。

サファリカーに乗り込む

ナイトサファリに出発
ヘンリーです、ヨロシク / 夜のジャングル / ドライブはこんな感じ、真っ暗

「みなさん、どうぞサファリカーにお乗り下さい」

山内さんたちとカブトムシを見てたら、出発の時間になった。サファリカーは中型のトラックを改造したような作りで、荷台のところにベンチみたいな横長のイスが取り付けてある。車の後部から上がって、順番に奥から詰めて座る。日本人は私たちだけで、あとはみんな欧米のゲストだ。全員が乗ったら最後にガイドが乗ってきて、荷台の一番先頭にあるガイド席みたいなポジションに立ち、こちらを振り返ってあいさつをする。

「みなさん、こんにちは、わたしは今夜のサファリのガイド、ヘンリーです。これからみなさんとダナンバレーの夜の熱帯雨林に入っていきます。運がよければたくさんの動物や、昆虫などが見れますよ」

あいさつが終わると車のエンジンの音がうなり、ゴォーと力強く発進した。見送る山内さんたちに手を振って、夜のジャングル探検に出発だー!!

マレーオオミミズク
マレーオオミミズク

凄腕のサファリガイド

「行くぞ~」っと気持ちが盛り上がり、車が速度をあげる、が、その矢先、急停止した。そしてガイドのヘンリーとドライバーがごにょごにょと何か話したと思ったら、少しバックして左の横道に入って行く。おいおいどこ行く~~?!そこはホテルの敷地のはずれにあるスタッフの宿舎。ヘンリーがサーチライトを中庭に向けると、電信柱の上に何か生き物がいる。

「え、なになに、何が見えるの?」

「あれはマレーオオミミズク、フクロウの仲間です。夜行性で魚やトカゲなどを補食します」

みんな立ち上がってカメラやビデオをかまえる。へ~~っと感心するけど、あんたよくあんな脇道の暗闇にいるフクロウを見つけたね、そっちのほうが驚きだよ!これはものすごく優秀なガイドにあたったかもしれないと期待に胸が高鳴る。もしかしたらアイアイも見つけてくれるかな?ってそれはマダガスカルだろー!ここはボルネオ!!

「オレはうんぴょうが見たいな」

「パパはボルネオゾウかマレーグマ」

なんて日本語で話していたら「何て言ってるの?」とヘンリーガ尋ねてくるので、こどもたちはうんぴょうを見たいと言ってると伝える。

「う~ん、それはかなり難しいな、うんぴょうは遠くから匂いで人の気配を感じるからめったに見る事はない。でも、がんばって探してみるよ」

おおーーなんと頼もしい言葉。あんなへんぴな場所にいるふくろうを見つけるくらいだから、これはもしかしたらうんぴょうも探し出してくれるかも。

イボイノシシ
イボイノシシ / ムササビの仲間

ムササビ飛ばず

一通りフクロウを観察して、ゲストたちの表情に満足の笑顔を確認したら、車は宿舎のある中庭をぐるっとまわって、さっきのメイン道路に出る。そこから再び、森に向けて走り出した。夜のジャングルは本当に真っ暗で、道路がこの先登っているのか下っているのかさえわからない。まるでスペースマウンテンのようなスリルだ。そして強烈な森の音~虫や生き物の鳴き声、葉のすれる音、枝のきしむ音、それらと、きっと体にいい成分をたっぷりふくんだ緑の空気が、オープンになっているサファリカーの荷台に、シャワーのごとく降り注ぐ。もうこれだけで、ナイトサファリは満足です!と感動。

その時、またサファリカーが急停止して、今度はヘンリーは、サーチライトで頭上を照らす。明るくなって初めて、まわりの木の高さにびっくり!ひゃーあんなに高い木なんだ。夜空さえ見えないよ!はるか頭上の、ヘンリーが照らす木の枝を見ると、どうらやむささびみたいなのがいる。枝をちょこちょこ動いているぞ。

「ちょっと待ってて下さい。もうすぐ飛びますよ」

おお、むささびを見ただけでも嬉しいのにぱっと両足を広げて飛ぶところが見れるなんてすごい。こどもたちは夏に、高尾山にむささびを見に行った時のことを思い出して話し始める。

「あれは座布団が飛んでるみたいだったね」

ヘンリーは口を紡いで音をたてむささびをあおっている。ゲストも飛ぶ瞬間を見逃すまいと頭上を凝視している。でも、むささびは飛びそうで飛ばない。あんまり長い時間上を見ていると首が痛くなってくる。結局むささびは枝の先っぽまで行って飛びそうな雰囲気にはなるんだけど、また別の枝にちょろちょろ移動していっこうにわたしたちの期待に答えてくれない。

飛ぶのか飛ばんのかはっきりしてれ!

とうとうヘンリーもあきらめて「今夜は飛ばないみたいです」とむささびにかわってあやまった。いや、あなたがあやまる必要はないですよ。

ヒヨケザル
ヒヨケザルを見るのはとっても珍しい

年の終わりに

サファリカーは再び夜の闇にエンジン音を唸らせて走り出す。時計を見ると、午後9時前。ああ、2008年もあと3時間足らずで終わるね。日本にいるみんなは元気だろうか?去年の年末年始はマダガスカル、その前の年末年始はタンザニアにいたな。来年はいったいどんな年になるんだろう?どうぞ来年も我が家の日記はママとこどもたちの笑顔で溢れていますように。

ジャングルの夜風がこどもたちの髪をなびかせる。何かの鳴き声にふと見上げると、黒い木々の隙間から2008年最後の月が、にゅーっと顔をのぞかせていた。

熱帯雨林で迎える新年の夜明け

ボルネオの熱帯雨林の夜明け

昨夜は部屋のカーテンを全開にして寝た。ダナンバレーの自然をより身近に感じれると思ったからだ。

明け方は森と同じように、部屋の中もしらじらと明るくなってゆく。その眠りから醒める手前の遠い意識に、鳥や虫やけものの鳴き声、木々の葉のざわめきが届けられる。潜在意識に響く「森の音楽」。ああ、なんという贅沢だろう。それは風も空気も光も香りも音も、すべてがひとつに調和した大自然のシンフォニー。

けたたましく騒ぎたてる目覚まし時計ではなく、悠々と華麗に豪華に控えめに静かに力強く、空気がゆらぐように広がる音楽で目覚めることができるのは、エコツアーならではの特権だ。次第に覚醒してゆく意識の中で、ひときわ美しくこだまする<テノール>の歌声を認識する。これはギボンの歌声だ。幻の珍獣ギボン。

ギボン?!そうだ、わたしたちは今ボルネオにいるんだ!おお、ということは今日は2009年の新年。新しい年の始まりか。

「さあ、朝だ、新年だよ、みんな起きよう!」

「う~~ん」

わたしの声にベッドの中でもぞもぞとカブトムシの幼虫のように動き出すこどもたち。

「お早う!新年おめでとう!!」

バルコニー側の扉をあけると、森の音楽がいっそう力強く、誰かに胸を押されるような勢いで飛び込んでくる。

「わー霧で何も見えないよ」

「でも気持ちいいね~~」

ベッドからはい出したこどもたちもバルコニーに出て来てそれぞれに今年初めての会話を始める。1年の始まりがこんなステキな朝なら、きっと今年もいいことがいっぱいあるに違いない!

新年を迎えたボルネオレインフォレストロッジ
早朝のロッジには濃い霧が漂う

今朝は6時半からキャノピーウォークを歩くトレッキングが予定されている。参加するか、朝食の時間までベッドでごろごろするかはゲストの自由。でもこんな素晴らしい朝に、熱帯雨林の散歩に出かけるなんて、願ってもない体験だ。それも新しい年の始まりの朝に。森に初詣に出かけるつもりで、ちょいと朝飯前のお散歩に出発~~★

トレッキングの前のヒル対策

前述したようにダナンバレーには7種類のヒルが生息しています。そのうち人や動物の血を吸うのは「タイガーリーチ」と「ブラウンリーリ」の2種類。興味深いことにこの2種類のヒルは住み分けをしていて、それぞれの特性を理解し、しっかり対策をすれば吸い付かれることはありません。

まずタイガイーリーチですが、こいつは人間の腰の高さくらいの草や小木の葉にぶら下がっています。ですからへそ出しルックで小木の中を歩いたら、お腹のまわりにたくさんのヒルが吸い付いてくるでしょう。これについては<ダイエット効果>がある。という説もあるので、人体実験にトライされた方がいたらぜひその結果を教えて下さい♪

タイガーリーチに吸われたくなければ、シャツの裾をしっかりズボンに入れて、できればその上からウィンドブレーカーやピステをはおると効果的でしょう。ただし、トレッキングが終わってホテルに帰って、ちょっと暑くなかったからとピステやウィンドブレーカーを脱ぐときは要注意です。上着のどこかにヒルがくっついていて、首筋や背中、胸元などにはらりと吸い付く事があります。

また腰のあたりに手をぶらぶらさせて歩くと、手の甲や指に吸い付かれる可能性があるので、小木の中を歩く時は、手が枝や葉に触れないよう注意して歩くようにして下さい。

トレッキングの説明
これから歩くコースの説明を受ける

一方、ブラウンリーチは、足首の高さから下の主にぬかるんだ地面に住んでいます。こちらの対策として有効なのは<ヒルよけソックス>を履く事です。ヒルよけソックスは、登山用品でいう「スパッツ」みたいな品物。スボンの上から装着して、上部はひもでしっかりくくりつけます。下部はソックスの下に入れて、ズボンの裾からヒルが侵入しないようにプロテクトします。

ホテルの売店や、セピロックリハビリセンターでも売っていましたが、事前に旅行会社から購入するのが一番安かったです。値段ははっきり覚えていませんが確か1セット600円くらいだったかな。登山・スキー用のスパッツがあれば十分代用できますし、裁縫が得意な方なら不要な布切れで簡単に作れると思います。

ママは実はこのブラウンヒルに吸い付かれました。参考までにその時を状況をお伝えします。

トレッキング中はヒルよけソックスを履いていたので完璧だったのですが、ホテルに帰って、泥まみれになったこどもたちの靴を洗っている時にふと見たら、手のひらに3匹のヒルが吸い付いていたのです。おそらくこどもたちの靴に付いたどろの中にヒルがいたものと思われます。

タイガーリーチとヒルよけソックス
葉の先にぶら下がるタイガーリーチ / ヒルよけソックス

なのでヒル対策はトレッキング中よりも、むしろホテルに帰って、やれやれと上着を脱ぐ時や、靴を洗う時のほうが注意が必要かもしれません。ちなみに、吸い付いたヒルを無理矢理引き抜こうとすると、歯だけが残りあとで痒くなります。たばこの火を押し付けたり塩をまぶすと簡単に取れます。

またホテルの1階にあるトレッキングセンターに行くと、慣れた手つきでひょいひょい取ってくれます。そのうえ「ヒルに吸い付かれた証明書」を無料で発行してくれるので、記念に持ち帰りましょう。

そうそう後でわかったのですが、レインフォレストロッジでは、よごれた靴や衣類を無料で洗ってくれます。高速乾燥もしてくれます。そんなんヒルに吸われる前に言ってくれよー、とママが吠えてました。

ダナンバレーのトレッキング

ボルネオ熱帯雨林のキャノピーウォークトレッキング

6時半にロビーホール1階のセンター前に行くと、すでにダナンバレー早朝トレッキングに出かける人たちが集まっていた。

「お早うございます。みなさんハッピーニューイヤー!」

キャノピーウォーク元旦熱帯雨林トレッキング

ガイドのリーさんが元気よくあいさつ。それからロビーにある大きな地図を使って、これから歩くコースの説明をする。今回のトレッキングのメインはキャノピーウォーク。キャノピーウォークとは、高木の樹上をつなぐ吊り橋で、ダナンバレーの熱帯雨林を高いところから効率よく観察するのに適している。

実際、熱帯雨林に住む多くの生き物は、地上30~40メートルの樹上生活をしており、地上から見上げてもその姿を確認することは難しい。キャノピーウォークなら、広い範囲の熱帯雨林を観察することができるうえ、たくさんの鳥や運がよければ樹上で暮らす生き物たちと出会えるかもしれない。また早朝に出発するのは、熱帯雨林に登る朝日を眺めるためでもある。今日は2009年の元旦。まさに初日の出を拝める絶好の機会という趣向だ。

やったね♪ではヒルよけソックスをチェックして、ガイドのリーさんに付いて出発だー。

幻の珍獣ギボン

ダナンバレーのギボン
ギボンの跳躍。お見事!

今朝のトレッキングに参加しているのは、わたしたちを入れて12名。全員が日本人だ。ガイドのリーさんをのぞいて。我が家にとって海外で一度にこんなにたくさんの日本人と行動をともにするのは初めてかもしれない。

ホテルからまず車が通る道に沿って歩いて行く。ところどころ水がたまって泥沼のようになっている箇所があり、それを避けながら歩いて行くと高い木々が群生している場所があって、そこは太陽の光が届きにくいのか、地面にも草が生えてなくて、ちょっとした広い空間になっている。

「このうえにギボンの群れがいます」

先頭を歩くリーさんがその「広場」で立ち止まって上を見ながら言った。ほほー、幻の珍獣ギボンですか。さっきから鳴き声は聞こえているんだけど森の中のそこらじゅうにこだましているのでどこにいるのかはわからなかった。まさかこの上にいるとは。

ゲストたちはみな高い木々の上をいっせいに見上げる。しかしギボンが暮らす枝は地上30~40メートルの高さ。しかも下から見上げると空の明るさが逆光になって見つけにくい。そもそもわたしはギボンを写真や図鑑でも見た事がないので、いったいどれくらいの大きさなのか、どんな姿でどんな色をしているのかさえわからない。わからないものをこんな逆光の中で、しかもあんなに高い所にいるのを見つけるなんて、昼間に星を数えるくらい難しい話しだ。

「あ、あれじゃない?」

上ばかり見上げて首の後ろが痛くなって参ったな~~と思い始めたとき、カイが声をあげた。指差すほうを見ると、う~~んでもぜんぜんわかりません。枝か葉っぱかの区別もつかないぞー。

「だから、ほら、あれ、今はじっとしてるよ。ほら、パパの正面に見える大きな枝の後ろに葉があまりない枝が見えるでしょ、そーずっと上のほう。その先にぶらがている、黒っぽく見えるやつ」

う~ん、あれかな?ビデオでズームしてみる。おー、見えた見えた!人間の子供くらいの大きさで、手がものすごく長い。そのわりには首がほとんどない。へーこれが幻のギボンかー。大きな鳴き声が森じゅうに響いているから、もっと大きな生き物だと思った。

ギボンは枝にぶらさがったままじっとしてるかと思ったら、枝から枝へ勢いよくジャンプする。オリンピックの段違い平行棒を見てるようだ。しばらくギボンの興味深い活動を観察して、もー首が痛いからこれ以上無理だよ、と思い始めたとき、リーさんが「ではそろそろ先へすすみましょう」と発言した。

他のゲストも首が痛いので、いくら幻の珍獣とはいえ、もうちょっと見ていたいと反対する人はいなかった。

キャノピーウォークの構造

キャノピーウォークの入り口
キャノピーウォークの入り口 / 気を付けて歩けよー

さっきの道路に戻って先へ進む。道路からは所々横へ向かってトレイルが伸びている。キャノピーウォークの入り口も、そんな横道に伸びるトレイルの1本のような場所にあった。

「ここからキャノピーウォークが始まります」

リーさんは入り口でいったん立ち止まったが、おかまいなしにどんどん進んでく。

ダナンバレーのキャノピーウォーク
キャノピーウォークを歩くのはゆらゆらふわふわ、空中浮遊のような体験

キャノピーウォークは樹上に架けられて吊り橋のような作りで、歩くとゆっさっゆっさ揺れる。

幅は人1人通れるほど。てすりが低いので背の高い大人だと、腰の下あたりに手すりがくる。うっかりすると手すりを越えて下に落っこちてしまいそうだ。落ちたらどうなるんだろうと下をのぞくが、地面は見えない。

木から木へ伸びるキャノピーウォーク
支柱の木から別のキャノピーウォークが伸びる

ひゃぁぁ~~!こんなに高いんだ。

支柱の木の幹に設けられた休憩スペースで座って休む子供達
支柱の幹に設けられた休憩スペース

下を見て歩くと怖いので、まわりの景色を楽しみながら進もう。

周囲を見渡すとどこまでもひろがる熱帯雨林の緑が見える。すがすがしいほどの開放感と迫力だ。吊り橋で言う支柱の役目を果たしてる木まで来ると、そこからコースを変え別のキャノピーウォークが伸びている。

恐怖!キャノピーウォークのはしご登り

キャノピーウォークの展望台
大木の幹に設けられた中継点は休憩スペースになっています

やがて、道中最大の難関<はしご>が現れた。<はしご>はまさにその名の通り、高い樹上に設けられた垂直の<はしご>。

支柱の役割の木の上に設置されているのだが、そこから先のキャノピーウォークは段違いになっていて、それまでと比べて高いところから釣り下っている。そこまで<はしご>で登らなければならないのだ。

支柱の木に設けられたはしご
なんかヤバそうな仕掛けが見えてきた

「え、まさかあれを登るの?聞いてねぇー」

普通に地面からはしごを登るのであればさほど問題はありません。でもここは地上30メートル近い木の上。そんなところに作られたいかにも心細いはしごを登るとなると話しは違うぞ。

大人たちがどうしようかまごまごしていると、リュウがはしごにつかまってさっさかさっさか登っていく。あれ~~お前こわくないの?と言うかあぶないから気をつけろーー!

キャノピーウォークのはしごを登る子供達
はしごを登る子供達

「ぜんぜん平気だよ」

リュウが上の段まで登り終わるとカイとママも次々登る。お前ら、恐怖心っちゅ~もんがないのか!いやパパはこわくはないんだけど、体がほら大きいでしょ、お前たちより、だから、いわゆるはしごが小さすぎるのかなーなんてちょっと頭のかたすみで蚊の鳴くような小さな声でつぶやくもう1人の自分が、もう1人の自分・・・ドッペルゲンガァーー!

キャノピーウォークのはしごを登るりゅう
支柱のはしごを登るリュウ / 上の段に到着

覚悟を決めてはしごをしっかり握る。それから一段一段慎重に登る。下を見るとありゃぁぁ~~!風とともに宙を舞ってしまいそう。

その時、明日の新聞の見出しが脳裏をのぎる

「邦人ボルネオの熱帯雨林で転落!とんだ元日」

いや、とべないから、この邦人は。

キャノピーウォークからの眺め

ボルネオの熱帯雨林の初日の出

なんとかかんとか上の段に登ると、先に登ったみんなはひと休みしている。おおーー風が気持ちいい。お正月から早起きして、こんなステキな自然にいっぱいふれて、ちょっと怖いおもいをしながら登ったキャピーウォーク。

これだけそろえば無理なお願いもきいてもらえるだろうということで、あれもこれもどん欲なまでに、熱帯雨林に登る初日の出に願をかけるのであった。

目を開くと遠くの森が朝日を浴びて輝いていた。

キャノピーウォークから見るボルネオ熱帯雨林の初日の出
ボルネオのジャングルに登る初日の出。今年もいいことがいいぱいありますように☆

オラウータン現る

キャンノピーウォークトレッキングから戻ってくると、ホテルの前の道に何やら人が集まっている。聞いてみると、オラウータンが出たとのこと。そのへんの木の上にまだいるはずだということで探しているのだ。野生のオラウータンと聞いて、一緒にキャノピーウォークトレッキングに参加していたゲストたちもざわめき立つ。まだ誰もボルネオに来て野生のオラウータンを見ていないらしい。

へ~~、へっへっへ、わたしたちは見ちゃったもんねー、スカウで、と心の中でつぶやきながら「もっと見やすいところへ行きましょう」と声をかけるリーさんの言葉に従った。

オラウータンを探すゲスト
リーさんについて薮の中に分け入る / あ、あんな高いところにいた! / 望遠鏡でのぞくとよく見えるよ♪

リーさんのあとを付いてみんなといっしょに薮の中へ分け入って行くと、少し進んだところでリーさんが立ち止まった。そして木の上のほうを差して「いました、あそこです。わかりますか?」と小声で言う。

みんな息を殺しリーさんの指差すほうを見ると、おーー、何か見える!さっき見たギボンよりひとわまり大きくて、色も赤茶けているぞ。でもものすごく高い木の上なので、下から見上げても途中の葉っぱが視界を遮り「何か生き物がいる」程度にしか確認できない。それでも他の参加者たちは初めて見る野生のオラウータンに興奮をかくせない様子で、無我夢中でカメラのシャッターを切っている。

その時リュウが

「ぜんぜんわかんないじゃん、昨日のほうがすごかったよね」

と大声を出した。

ばかっ、おまっ、シーッ!

心臓に氷を押し付けられたみたいにあわててリュウの口をふさぐ。こどもっちゅーのは空気が読めないからたまらんよ。ちょっと離れたところへリュウを連れて行き、静かに諭すのだった。でも、確かに、この状況と比べると、昨日のスカウでのオラウータンとの遭遇はものすごいラッキーだったんだな、とつくずく思う。あの時ははっきり顔まで見えたし、目が会っちゃった==☆という感じだった。はじめてだったので、それがいかに幸運なことかわからなかったのだ。まさにビギナーズラック!

トレッキング終了

ボルネオレインフォレストロッジのロビーで解散

「ではこれで解散です。お疲れ様でした」パチパチパチ☆

ホテルに戻ってあいさつをするリーさんに、みんな惜しみない拍手。キャノピーウォークを歩いて、ギボンも見たし、最後にオラウータンも見れたし、内容の濃いトレッキングだったね。

リーさんとこの素晴らしいダナンバレーの自然に感謝です。

レインフォレストロッジの朝食

朝食を食べる次男

次は9時半から見晴し台へのトレッキングが予定されている。

レインフォレストロッジのレストラン
朝食もビュッフェスタイル / オムレツコーナー♪ / デザートコーナー

時計を見るとちょうど8時だ。かれこれ1時間半トレッキングをしたんだな。そしてこれから朝食をいただても、次の見晴し台へのトレッキングまでたっぷり時間がある。

レインフォレストロッジの朝食

お腹ぺこぺこだから部屋へは戻らずこのままレストランに直行して、朝食をいただくぞ~~いいぇぇーい!☆

朝食の料理
川のせせらぎがBGM

川とジャングルに面したレインフォレストロッジのレストラン。早朝から森を歩いた充実感と空腹感が、食事をいっそう美味しく感じさせる。

奇跡の熱帯雨林をのぞむ特等席にゆったり座り、コクのある香りが立つコーヒーをすするのだった。

熱帯雨林を間近に眺めるテラス席

見晴し台へのトレッキング

食事が終わってひと休みしたら、今度は見晴し台へのトレッキングに出発だ。見晴し台は、ロッジの東側にある小高い山の展望台。そこから海のように広がる熱帯雨林が眺められるという。また約400年前の先住民族のお墓があったり、滝壺で泳げる場所もあるらしい。楽しみだね♪

見晴し台へ登る

集合場所のセンター前に行くと、すでにトレッキングに出発する人たちが集まっている。って、朝とまったく同じ顔ぶれですね。ガイドもまたまたリーさん。よろしくお願いします♪

朝とおなじように、ロビーにある地図を使って、これから歩くコースの説明がある。朝のコースよりアップダウンが厳しく、見晴し台まで300メートルくらい登らなくてはならない。それも日が登ってきて気温がぐんぐん上昇するジャングルを。よし、気合いを入れ直して出発だぁーー!

吊り橋を渡る
吊り橋が見てきた / 吊り橋を渡ると木が倒れている

最初はロッジの敷地から川に沿って西に向かって進む。そう、見晴し台とは反対方向へ。川に沿って進んで行くと吊り橋が見えてきた。一見、今朝歩いたキャノピーウォークと似ているが、この吊り橋のほうが幅が広くて歩きやすい。

熱帯雨林の中を歩く子供達

吊り橋を渡ると、川の反対側に見えていた稜線の裏側に回り込む。そこから今度は東に向かって、じょじょに登りになってくる。

ジャングルの中を登る
スゴい根っこだね一 / 列に並んで進みましょう♪ / 休憩タイムにハイ、チーズ

トレイルは深い森の中にあるので、直接日光があたらない。そのうえまわりの木や草や地面が水分を含んでいるため、思ったほど暑くない。それでも登ってゆくにつれ、額に汗がにじんでくる。

日本でも真夏の時期にこんな湿った森を歩けば、蚊の大群の攻撃にさらされるものだが、驚いたことに蚊がまったくいないのには驚いた。おかげで快適だ。というより蚊対策として長袖、長ズボン(裾にはヒルよけソックス)の重装備をしてきたのだが、こんなことなら短パンにTシャツで来ればよかった。

リーさんは先頭を歩きながら、時々まわりに生えている木々や草花の説明をしてくれる。たまに珍しいシダやキノコの類いを見つけると、そりゃーもう宝くじが当たったかのごとく嬉しそうに紹介する。いあー本当にダナンバレーが好きなんだね。

上り坂のトレイル
まだまだ登るぞー

進むにつれ、虫や鳥の鳴き声に混じって水の音がだんだん大きくなってきた。さらに進むとわたしたちのまわりに小さな水滴が霧のように漂ってくる。

「この下に滝壺があります。水の音が聞こえるでしょ」

トレイルの分岐点
あ、ホント、堅いや / 滝壺との分岐点。ここから傾斜がきつくなる

えー下にあるんだ。音はもっと上のほうから聞こえてくるように思えたんだけど。トレイルがその先で2又に分けれていて、ひとつはすごい傾斜で下っている。さっきまで川に沿って歩いていたんだけど、気がつくといつの間にかこんなに登っていたんだね。下っていくトレイルの先のほうに、枝や葉の隙間からかすかに白い滝のようなものが見える。

「帰りにはここを降りて滝つぼで泳ぎましょう」

「やったーー」

その言葉にこどものように反応した声が聞こえた思ったら、うちのこどもだった。

木登りトカゲ
木登りトカゲを発見 / ここから10分だって / 傾斜はますますきつくなる~~

滝つぼへのトレイルが下っているのに対して、見晴し台へのトレイルは、ここからが本番、とばかり何もそこまでというくらい急な登りになる。ひーひー息を切らしながら登ってくと。またまたトレイルの分岐点があった。右に進むと、先住民族のお墓があるらしい。

「ここも帰りに寄りますから」と説明し、しばらく休憩するのかと思いきや「では先に進みましょう、ここからゴールまであと10分くらいです」と言ってせっせと登り始めた。

おーちょっと待ってプリーズ!ここから10分、と聞いてほっとしたのもつかの間、分岐点から先の道はますます傾斜が急になっているではありませんか、はりゃはりゃ。平坦な道を10分歩くのだってもう限界に近いのに、こんな急斜面を登るなんて聞いてねーぞ!それでもはーはー汗をかきながら、登って行くと上のほうに木組みの舞台みたいな建造物が見えてきた。おお、あれか。

最後の急傾斜
がんばれー、あと一息だ / おおー見晴し台が見えてきた!

「到着しました。みなさんお疲れさまです」

やったー、ついに見晴らし台に着いたぞ。

見晴台からの眺め
熱帯雨林の大パノラマ!自分の足で歩いて登ってきたから景色が一段と輝いて見える

「うわーいい眺め」

「風が気持ちいいね」

先に見晴らし台に登ったこどもたちとママが歓声をあげている。

「うおーこれは気持ちいい」

あとから登ったわたしもその素晴らしい眺めにここまで来た苦労が一気に吹き飛ぶ。眼下に広がるのは360度すべて太古の姿のままの熱帯雨林。でもここから見えるのはダナンバレー保護区の、ほんの数パーセントに過ぎないというから、いかにこの保護区の面積が大きいかわかる。

でもどんなに素晴らしい眺めだって、もしもホテルからここまでエレベーターがあってそれでひょいひょい登ったきたとしたら、こんな感動はなかっただろう。

見晴台から眺めるボルネオレインフォレストロッジ

「あ、あれがオレたちのホテル?」

足ものと森にかくれそうになってる建物を指差してリュウが言う。

「そうだよ、ずいぶん登ったんだね」

海のように果てしなく広がる原生の熱帯雨林。葉のざわめきと木々の間を吹き抜ける風。まばゆい光に目を細めると、森のプリンセスたちが微笑みながら手を振っていた。

スッパン族の埋葬跡遺跡

足元がぬかるんだトレイル

ダナンバレーの見晴し台からの下山は登りに比べると楽ちん。

でも地面がぬかるんでいるので注意しながら降りよう。何人かは、あっちですってころりん、こっちですってんころりんと滑っていました。そして派手にすっころんでしまったら、おしりや足や手が泥だらけになっちゃいます。

スッバン族の遺跡
落っこちないように注意しながら歩こう / スッパン族の埋葬跡

「この先に先住民族の墓地があります」

分岐点まで戻ってきたら、お墓のほうへコースを変更する。途中、大きな木の根が滝のように垂れ下がっている場所がある。まるで山の斜面を飲み込んでいるようだ。その少し先に、いかにもパワーに満ちた岩の壁が見えてきた。そこにはやぐらが組んであって上のほうにある穴まで登って行けるようになっている。そして岩の足元には、朽ち果てた木が横たわっている。

スッパン族の神聖な岩壁を見学する子供達

「ここは先住民族スッパン族の埋葬跡です」

リーさんの説明によると、スッパン族はダナンバレーを流れる川の流域で生活していた。川を見下ろすこの岩壁は彼らにとって神聖な場所であり、高貴な人の埋葬などの儀式をここでおこなっていたと言う。

約400年前の埋葬跡
あんな高い所まで登るの~ / 穴の中には人骨があります

やぐらを登って穴をのぞくと人骨がある。そして足元の朽木は棺桶。およそ400年前ものらしい。

滝壺スイム

ダナンバレーの滝壺スイム

お墓見学が終わってもと来た道を引き返す。

分岐点からさらに下っていくと、森じゅうに滝の音が響いてきた。

「滝ツボへ行ったら泳いでいい?」いっぱい歩いて汗をかいたこどもたちがわくわくしながら聞いてくる。

「どんな滝ツボか見てからね」

滝ツボとの分岐点までくると、こどもたちはさーっと先頭を走って転がり落ちるように姿が見えなくなる。

熱帯雨林の中の滝壺で泳ぐ子ども達

わたしたちが滝ツボへの長い階段を下ってようやく河原に降りてきた時には、もう2人とも服を脱いで水着になっていた。そしてわたしのOKが出るやいなや、カッパのように滝ツボに突進して水に飛び込むのだった。

ジャングルの中の滝壺で泳ぐ子供達

イルカパパの子育てコラム〜奇跡がいっぱい起きる!お墓参り

お墓の話しが出たので、今日は子連れお墓参りについてお話しましょう。子育てコラムでは今までいろいろな子育ての方法やノウハウ、考え方を紹介してきました。が、その中で子連れお墓参りは、他の方法が束になってもかなわないくらい、子育てにおける最強の要素だと思います。

我が家ではわたしの父が、長男カイと入れ替わるように他界しました。カイが生まれた頃はまだ父の法事が頻繁にあったので、カイは生まれたての頃から「おじいちゃん」のお墓に参っています。さすがに他界してもう12年になりますし、お墓は島根にあるので、今でも頻繁にお墓に参るわけではありません。

でも、たまに休みで島根に行くと必ずお墓に行き、せっせと雑巾をしぼって、墓石や墓のまわりを黙々と掃除します。リュウはこれまた赤ん坊の時からお兄ちゃんその姿を見てきたせいで、負けじと一生懸命墓掃除をします。

お墓参りが、子育てのどの部分にいいのか、なぜそうなのか、理論的に説明するのはむずかしいです。我が家では、お墓参りについてこどもたちに次のように話しています。

パパとママがお前たちを大切に想うように、パパとママの<パパとママ>も、パパとママを大切に想ってきた。だからパパとママの<パパとママ>も、お前たちを大切に想っているし、2人の成長を楽しみにしている。さらにパパとママの<パパとママ>、そのずーっと前の(パパとママ)もおなじように子供たちを大切に想ってきたから、そのみんながお前たちを大切に想っている、のだと。

だからお前たちはたくさんの「パパとママ」に大切に見守られながら育っているんだ。そしてその「パパやママ」たちがもしいなかったら、パパとママもお前たちもこの世に存在していなかったかもしれない。みんがこどもを大切に想い、一生懸命生きてきたから、パパもママもお前たちも、こうして幸せに生きていられるんだよ。その感謝の気持ちを込めて「パパとママ」たちのお墓をきれにしてあげよう。

滝壺からの帰り道
滝壷からの帰り道 / ダナンバレーでしか観られない珍しい植物がいっぱいだよ♪

もしおじちゃん、おばあちゃんがお元気なら、おじいちゃんのお母さんやお父さんはどんな人だったのか、おばあちゃんのお母さんやお父さんはどんな人だったのか、そしてそのまたお母さんお父さんはどんな人でどんな人生を生きたのか、こどもといっしょに聞いてみましょう。そしてお母さんのお母さんのお母さん・・お父さんのお父さんのお父さん・・を身近に感じながらその人たちのお墓を参って下さい。優しいおじいちゃんおばあちゃんに会いに行くような感覚で。

子連れでお墓参りをたくさんすれば、必ず子育てにおいて奇跡的な出来事が、山のようにたくさん舞い降りるでしょう。

イチジクを投げたのは誰だ?!

イチジクの木
締め殺しイチジク。これはまだ小さい木

熱帯雨林の過酷な生存競争

人間にとっては心癒される美しい熱帯雨林も、そこに住む生き物たちにとっては、食うや食われるやの厳しい生存競争の場でもある。そしてここでは、虫や動物たちだけでなく、悠々と枝を伸ばす植物でさえ、丈夫な子孫を残すため激しい生存競争を繰り広げている。

「あれが締め殺しイチジクです」

リーさんが指差したのはストラングラーツリー。日本では一般に「締め殺し植物」と呼ばれる恐ろしい名前の木。植物の世界にも厳しい生存競争があることをひと目で実感できる天然のサンプルだ。締め殺し植物は「健全」に生きている大樹に寄生し、いつしかその本体を乗っ取ってしまうジャングルの「殺し屋」。

締め殺しイチジクの乗っ取りプロセスはこうだ。

  1. 鳥や猿などに食べられたイチジクの種子が、木の上に糞として落とされる
  2. 木の上で発芽した種子は日光が豊富なので枝葉を茂らせる。一方気根は地面を目指して下へ伸びてゆく
  3. 根が地面に到達すると地中の水分・養分を吸収して生長は加速し根は急激に堅く太くなる。そして宿主の幹をじわじわと締め付けてゆく
  4. 生長が続くとさらに枝葉が繁り、宿主の葉に十分光が届かなくなり衰弱してゆく。そしてなすすべもなく枯れてしまう

ポイントは、鳥や猿たちが好んで食べてくれるよう栄養価が高く美味しい実をつけること。大樹が繁る熱帯雨林では、光の届かない地面に種子が落ちても、そこから発芽し、一発大逆転でまわりの高木よりさらに高く大きく生長するのはほぼ絶望的。鳥や樹上で暮らす猿に実を食べてもらえば、光が豊富に届く樹上に糞をしそこから発芽できるチャンスが与えられるのだ。

ギボンの鳴き声が響く熱帯雨林のトレイルを歩く子供達

ギボンの群れと遭遇

「イチジクの実が落ちています」

リーさんはそう説明しながらトレイルをはずれ、横の河原に降りてゆく。ああ、本当だ、イチジクの実がたくさん落ちている。日本のイチジクより小さくて堅そうだけど、栄養がぎっしり詰まっていそうな感じだ。

「イチジクがあるということは、オラウータンやギボンを見れる確立も高いですよ」

リーさんがそう言った瞬間、頭上から何か堅い物がばらばらと落ちて来た。うぉ、いて!痛て!痛て!わたしの星座は射手座の前のさそり座です。ってな事言ってる場合じゃなくって、こりゃーイチジクだ。木の上からイチジクが大量に落ちて来ているのだ。

「ギボンです、ギボンの群れがイチジクを投げています!」

イチジクを投げるボルネオギボンの群れ
木の枝にぶら下がるギボン

その声にみんないっせいに木の上を見上げる。おーー、すげー!ギボンだ!それもあんなにたくさん!!ギボンたちが食べ終わったイチジクを下にいるわたしたちに放り投げているのだ。いや、正確には放り投げているのではなく、食べ終わったイチジクをポイポイ捨ててるだけかもしれない。それが高い樹上からだと加速度が付いて、すごい勢いで地面に落ちてくるのだ。

いや~~痛いけどすごい光景だね。ギボンは世界でボルネオにしか生息していない希少なテナガザル。絶滅危惧種に指定されていて、その姿を見ることさえ難しい生き物だ。それが、あんた、今日は早朝のキャノピーウォークトレッキングでも見れたし、今また何もそこまでというくらい大量にお目にかかれた。

関連記事:写真に収めたボルネオの絶滅危惧種

うははは。これはお正月がついてるぞ。今年もいいこといっぱいありそうだ。他のゲストたちもめいめいに樹上を飛び回るギボンを眺めたり、写真やビデオに納めていた。

枝から枝へ移動するギボン
枝から枝へ移動するギボン

音の絶景

ギボンの正式名称はミューラーテナガザル。ボルネオギボンと呼ばれることもある。それが短くなってここでは単に「ギボン」と呼んでいる。ボルネオ島の熱帯雨林に生息するギボン/ミューラーテナガザルは、長い腕で「枝わたり」(ブラキエーション)をして林冠を移動して生活している。 1夫1妻で、子供を含めた4頭程度の群れを形成し、主にカップルのオスとメスが交互に叫びあいながら、複雑なフレーズを取り混ぜたデュエットを行う。今回のように大きな群れを見る事は大変珍しと言う。

ギボンの鳴き声は大音量の口笛のような不思議な音。それが緑の森に共鳴し、荘厳なオーケストラのように響き渡る。うっそうと繁る熱帯雨林のジャングルに、ボルネオギボンの歌声が響き渡る様は、幻想的で心が癒される。

海外旅行のテレビ番組では、例えば北欧のオーロラとか、南米のウユニ塩湖とか、絵になる画像を取り上げることが多い。その一方で、熱帯雨林のジャングルに響き渡るギボンの鳴き声のような、絵にならない光景を放映することはまずない。だからほとんどの人は知らないのだが、この「音の光景」はあきらかに世界中にあるどの絶景とも肩を並べうるかそれを凌駕するものだ。そしてこれこそ音だけ録音して聞いたのでは絶対に伝わらない、現地に行って体験しなければ味わえない感動だと思う。

この「音の絶景」を体感するだけでもボルネオに行く価値があると言えよう。

熱帯雨林に響き渡るボルネオギボンの鳴き声は音の絶景

ボルネオレインフォレストロッジのランチ

見晴し台のトレッキングから戻ると、レストランのほうから美味しそうな匂いが漂ってくる。う~~んたまりません、すでにランチはいつでもOKみたいだ。時計を見ると11時半。ちょうど2時間くらいトレッキングしてたんだね。お昼にはちょっと早いけど食べちゃおうか~☆いえぇ~~い!レインフォレストロッジのランチはこれまたうれしいビュッフェスタイル。 

ボルネオレインフォレストロッジのランチ

ビュッフェの食事は、メニューを見て食べるものを決めて、スタッフを呼んでオーダーして、オーダーしたものが運ばれくるのをじっと待って、やっと運ばれて来たかと思ったら「それ違いますけど」なんてやり直しがあったり、やっぱりお腹が減ってるんでそれでいいです、じゃあ、伝票を書き直します、というようなめんどくさい手順を一切すっ飛ばして、いきなり好きなものを好きなだけ皿に盛って食べ始めることができるから、非常に効率的だ。ってその説明長過ぎて非効率!

そもそもお腹をすかした猛獣のような男の子がいる家族連れにとって、食事をオーダーして出て来るまでじっとおとなしく待っているなんて不可能。花紀京や岡八郎が登場する全盛期のよしもと新喜劇を観ながら「悲しんで泣け」というくらい難しい話しだ。それに海外ではメニューが読めなかったり、メユーを見ただけではどんな料理なのかわからなかったりするケースも多いが、そんな時でも目の前の出来上がった料理を皿に盛るだけのビュッフェはとっても心強い存在と言えるだろう。

ところで、我が家では食事のとき、子供の飲み物はお茶か水、にしている。鮮やかなグリーンのクリームソーダとか、果汁の入っていないオレンジジュースなど「絵の具で色をつけた砂糖水」は身体にはまったく栄養にならないことをご存知だろうか?栄養がないだけならまだいい。これらの「絵の具水」は、子供の身体から貴重な栄養分を奪い、健全な体の生長を阻害する可能性があるので、ゼロ以下、つまりマイナスということになる。大量の砂糖が混入してあるジューズや、リン酸の入った加工食品は、こどもの成長にかかせないカルシウムを奪ってしまう。それにも増して、食事前にこんな甘いものを飲んでしまったら、それだけでお腹がいっぱいになった気分になり、肝心の食事を食べなくなってしまうだろう。加えて研ぎすまされた本当の味覚も育たない。

一度こどもたちに飲ませている「絵の具水」の正体をじっくり調べてみることをおすすめします。

*果汁100%の果物や野菜ジュースはまだ安全です。ただし果樹100%ジュースに大量の砂糖や香料を加えていることも多いのでよく注意して下さい。

ボルネオレインフォレストロッジのレストラン
熱帯雨林に面したテラス席 / 煮込み料理 / パスタはオーダー製。目の前で好きなものを作ってくれる♪

子育てコラム~こどもの身長を伸ばす方法

一般的にこどもの身長が伸びるかどうかは親からの遺伝によるところが大きいと思われていますがそれは正しくはありません。最近の研究によると子供の身長に与える遺伝の影響は25%程度で、大きな要因ではないことがわかってきています。逆に考えると85%は、子育ての考え方や実践でコントロールできるということで、自分の身長が低いから我が子も・・などとあきらめる必要はないのです。

それではこどもの身長を伸ばす一番大きな要因は何でしょうか?それは「成長ホルモン」です。成長ホルモンをたくさん分泌させれば背が伸びると言っていいでしょう。簡潔に言うと成長ホルモンの特徴と仕組みを理解することが、こどもの身長を伸ばす早道ということです。

では成長ホルモンをたくさん分泌させるにはどうしたらいいでしょう?成長ホルモンが最も多く分泌されるのは、睡眠中、特に午後11時~午前2時です。この時間帯に熟睡していればそれだけ多くの成長ホルモンが分泌されます。背を伸ばしたければこどもを早く寝かせるのがいいということです。

またストレスは成長ホルモンの分泌を押さえてしまうので、いつも笑いが絶えない楽しい家庭環境があることも、こどもの身長を伸ばす要因のひとつだと言えます。

ただし、せっかく成長ホルモンがたくさん分泌されても、実際に体を大きくする栄養が足りないと、無駄になります。ですから規則正しい時間に、栄養豊富な食事をしっかりいただくことも必要となります。また適度な運動も重要な要素です。垂直のジャンプ運動が最も背を伸ばす効果が高い運動であることがわかってきています。運動をするとお腹が減るのでたくさん食べられますし、体が疲れれば深く質の高い睡眠を取ることができます。

まとめますと、子供の背を伸ばす方法とは、太陽の下で思いっきり遊び、栄養豊富で安全な食事をしっかり取って、夜は早く寝る、ということです。

ランチビュッフェ