ボルネオの生き物・動物・昆虫図鑑〜写真に収めた絶滅危惧種たち
絶滅とは?
国際自然保護基金/WWFは2010年4月22日、『Borneo’s New World』というレポートを公表し、2007年2月以降にボルネオで発見された、123の新種について報告しました。
新種の多くが見つかった場所は、ボルネオ島中央部の「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれる、豊かな熱帯林が広がる地域です。その森には、世界中でボルネオでしか見る事のできない、希少な生物たちが暮らしています。しかし、その多くは、森林伐採や環境破壊により、絶滅の危機に瀕しているのです。
「絶滅」とは一つの種(しゅ)が、完全にこの地球上からいなくなることをいいます。今、ボルネオをはじめ世界には絶滅の危機に瀕している野生生物がどれいくらいいるでしょうか? スイスに本部を置くIUCN/国際自然保護連合では、絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリストを作成しています。このリストは「レッドリスト」と呼ばれ、現在、1万6,000種もの野生生物が名を連ねています。
- EX Extinct(絶滅)
- EW Extinct in the Wild(野生絶滅)
- CR Critically Endangered(絶滅寸前)
- EN Endangered (絶滅危惧種)
- VU Vulnerable (危急種)
絶命の原因として最も深刻なものは、わたしたち人間による自然破壊であることは言うまでもありません。そして一度絶滅した種は、もう二度とこの地球上で活動する姿を見ることはないのです。ここでは、実際我が家が今回の旅行中に遭遇した、絶滅の危機にさらされているそれらボルネオ固有の生き物を中心に写真を添えてご紹介しましょう。
スカウのロッジで、部屋のすぐ前に現れた野生のオラウータン
ボルネオオラウータン/絶滅危惧種(EN)/ボルネオ固有種
オランウータン(マレー語で「森の人」という意味)は、アジアで唯一の大型類人猿です。かつて東南アジアとインドシナに広く分布していいましたが、今は、ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島の熱帯雨林だけに生息しています。オランウータンは長い間、一種と考えられていました。しかし現在では、ボルネオ島に生息するボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)と、スマトラ島に生息するスマトラオランウータン(Pongo abelii)の二種に分類されています。
オランウータンは、体毛の密度が低く、長くて荒く、赤みをおびています。雄は成長すると体毛が非常に長くなり、また頬の肉ひだが大きく発達し、特徴的な顔になります。スマトラオランウータンは、ボルネオのものに比べると顔が細長く、体毛が長く少し淡い色をしています。20世紀初頭には18万頭いたと言われていますが、現在は4万頭にまで減っており、保護の重要性が叫ばれています。
ボルネオオランウータンはさらに、
島北西部(主にサラワク州)に生息するP.p,pygmaeus(3000頭)、
北東部(サバ州からカリマンタンにかけて)棲むP.p.morio(13000頭)、
南部(カリマンタン南部)にいるP.p.wurmbii(25000頭) の3つの亜種に分けられています。
ダナンバレーで4つの群れと遭遇。お正月からこりゃ縁起が良すぎない!?
ボルネオピグミーエレファント/絶滅危惧種(EN)/ボルネオ固有種
ボルネオゾウは丸っこい体つきで、大陸に住むアジアゾウやアフリカゾウと比べると、ひとまゎり小降りです。顔は小さく角張っていて、尾は地面に着きそうなほど長く、牙はまっすぐに伸びています。 18世紀にボルネオへ導入されたゾウであるとの仮説が長い間指支持されてきましたが、2003年のDNA検査により、少なくとも1万8千年をかけてボルネオで独自に進化してきたゾウであることが判明しました。
現在1,000 頭から 2,500 頭のみの生息が確認され、生息域も非常に限定、細分化されており、ボルネオ島北東部の5%の地域に限られています。そのわずかな生息地さえ、伐採やプランテーションへの転換などのために急速に減少しており、これに加え、ゾウの殺戮や捕獲といった脅威にもさらされています。
高い木の上で暮らすボルネオギボンを目撃するのは非常に困難。これは首が折れるくらい上を見上げて望遠レンズでとらえた貴重な1枚です。ダナンバレーにて
ミューラーテナガザル(ボルネオギボン)/絶滅危惧種(EN)/ボルネオ固有種
ミューラーテナガザル/ボルネオギボンは、ボルネオピグミーエレファントと並んで、最も姿を見ることが難しい動物です。もともと個体数が少ないうえ、地上30~40mの葉が多い茂る樹上で暮らしているためです。
ただ、彼らの「存在」は割と簡単に確認できます。彼らは歌が大好きだからです。早朝のジャングルでは、ボルネオギボンの歌声が響き渡るのを、容易に聞くことができるでしょう。ボルネオ島の熱帯雨林に生息するミューラーテナガザルは、長い腕で「枝わたり」(ブラキエーション)をして林冠を移動して生活しています。1夫1妻で、子供を含めた4頭程度の群れを形成し、主にカップルのオスとメスが交互に叫びあいながら、複雑なフレーズを取り混ぜたデュエットを行います。
この歌は家族間の絆を深めたり、他の群れに対してなわばりを主張したりすることに役立っていると考えられています。うっそうと繁る熱帯雨林のジャングルに、ボルネオギボンの歌声が響き渡る様は、とても幻想的で心癒されるものがあります。
ボルネオ固有のこの珍しいサルも、スカウでは見飽きるほどお目にかかれる
テングザル/絶滅危惧種(EN)/ボルネオ固有種
天狗のような長い鼻を持つ事から名付けられたテングザルは、その姿だけでなく、生態もユニークです。水辺の熱帯雨林やマングローブ林、湿地林などに生息し、1頭のオスと、複数のメスからなる群れを形成し生活しています。群れの結びつきは弱く、雌雄ともに群れから群れへ行き来します。テングザルは、高い木の上から川へダイビングジャンプをし、泳いだり、水深の浅い場所では直立して歩行します。猿の仲間でこれほど水を怖がらないのはとても珍しことです。
夕方になると、木の枝に腰掛けて、頭を垂れてまるで落ち込んでいる人みたいな姿で寝ます。1本の木にたくさんのテングザルがうなだれて動かない様は、猿の人形の型をした木の実がたわわに実っているようで、とても奇妙で印象的です。(テングザルはスカウで早朝と夕方、リバークルーズで見れます)
キタカササギサイチョウ
ボルネオには8種類のサイチョウの仲間が生息していますが、そのすべての種類がスカウ/キナバタンガン川流域に生息しています。リバークルーズの途中、大きな木の枝にとまってこちらを見下ろすサイチョウの姿を、たびたび目にするでしょう。
ダナンバレー/ボルネオレインフォレストロッジの庭に出てきたヒヨケザル。ほとんど生態が知られていない野生のマレーヒヨケザルをこんな至近距離で撮ったこの写真はとっても希少
ヒヨケザル/ボルネオ固有種
日中は前後足で木の枝にぶら下がって眠るヒヨケザルは、夜になるとまるで傘を広げたような姿で100m以上の距離を滑空します。ヒヨケザルの特徴は、ムササビやモモンガが前脚と後脚の間にしか飛膜を持たないのに対して、アゴの先から尾の先端まで全身が飛膜に包まれていることです。顔がキツネザルに似ていることから「サル」の語が付いていますが、実はサルの仲間ではなく食虫目やコウモリ類に近い動物です。
フィリピンヒヨケザルとボルネオのマレーヒヨケザルの2種のみが現存しますが、夜行性ののため、その詳しい生態はまだほとんど解明されていません。NHKの取材班もびっくりするこんな珍しい動物を、こんな間近でじっくり観察できて、本当にラッキーだったと思います。
スカウではカニクイザルをよく見かける
カニクイザル
カニクイザルはニホンザルと同じマカク属で、ニホンザルにとても近い種類のサルです。見た目もほとんどそっくりですが、カニクイザルのしっぽが長いのに対し、ニホンザルのしっぽはとても短いので簡単に見分けることができます。といっても同じ森でこの2種類を見ることはありませんが(笑)
カニクイザルといっても、カニだけを食べるわけではなく、植物の果実や種子、それ以外にも葉、花、根、小鳥、トカゲ、カエル、魚などさまざまな動植物を捕食します。群れをなして生活し、通常1つの群れに2-5頭のオスが含まれます。群れの大きさは餌の豊富さなどに依存し、群れでのランクは成熟したオスがメスより上位となります。
イリエワニのこども / ヒゲイノシシ / 川を泳ぐオオトカゲ
イリエワニ
ボルネオのワニは、ほとんどがワニの中で最も凶暴なイリエワニです。イリエワニはインドから中国亜熱帯地域、マレーシア半島、フィリピン、ボルネオ、ニューギニア、オーストラリア北部に分布し、池沼や大きな川、塩分を含んだ水域でもみられます。時には外洋へも出ることもあります。中には5メートルを越す体長のワニもいて、これはもうほぼ恐竜ですね。こんなのとジャングルの中で遭遇したら、びっくりして腰を抜かすかもしれません(笑)
ワニは水中では、わずかに目と鼻を出すだけで水面下に浮かんでいますが、からだの安定を保つために胃の中に石が入っています。特に頭でっかちの子ワニは、この石がないと釣り合いがとれないようです。生まれてから1年は、カエルやカニなどの小動物を食べますが、成長すると、それだけでは食欲を満たせなくなり、貝類や魚類も食べるようになります。
成体では魚類のほかに哺乳類や鳥類、まれに人も襲うことがあります。
ボルネオオオカブト/ボルネオ固有種
ボルネオオオカブト(モーレンカンプオオカブト)はコーカサスオオカブトと比べると大きさでは敵いませんが、独特の3本角のバランスは雰囲気がありとてもかっこ良いです。大きさ45~110mmで、日本のカブトムシと比べるとふたまわりくらい大きいですね。
男の子はカブトムシが大好きなので、こんなのが何匹も捕まえられるボルネオは、天国と思うでしょう。
バッタか?! / ムササビ / カミキリムシの1種