アンタナナリボカールトンホテルのコネクティングルーム
楽園のようなノシベをあとに、マダガスカル航空の国内線で、わたしたちはふたたびアンタナナリブへ向かった。
今回の旅行でアンタナナリブ空港を利用するのはこれが4回目。
しかし実際に泊まるのは今日が初めてとなる。
マミーとの再会。あれ、散髪した? / 霧雨に煙るアンタナナリブ空港 / 空港周辺の風景
アンタナナリブ空港に着陸
マダガスカル国内線の路線網は、首都であるアンタナナリボを中心にネットワークされているため、国内移動のさいに立ち寄ることが多くなるのだ。窓の外に棚田が折り重なる盆地の景色が見えてきた。飛行機はじょじょに高度を降ろし、それから霧雨に煙るアンタナナリブ空港に着陸した。
「おお、涼しい~~」
飛行機から外に出てリュウが声を出す。
ありゃ、本当だ。こりゃ寒いくらいだぞ。熱帯のノシベでは毎日強い日差しを浴びていたので、気温の差を余計に大きく感じる。タナは高原地帯にあるため、気温が低いのだ。
マミーと再会
「お帰りなさい!、ノシベはいかがでしたか?」
荷物を受け取り、出迎えの人でごったがえす到着ロビーに出ると、なつかしいマミーの顔があった。
「あ、マミーさんだ」
やっぱり迎えに来てくれたんだ。リュウは久しぶりの再会にうれしくなってマミーに抱きつく。
「リュウ!ひさしぶりですね、元気でしたか?」
「うん、でもカイが、、」
そこで顔をあげたマミーは、カイが元気がないことに気づく。
「あれ、カイくんはどうしたんですか?」
「うん、ちょっと具合がよくないんだ」
カイは昨日の夕方から高熱が出て、解熱剤をもらって飲んでも、あまり熱が下がらず、容態もよくならないことを説明した。
「それはいけませんね、ちょっとアサカワに相談してみます」
そう言ってマミーは携帯のボタンを押す。アサカワさんはマミーが働く旅行会社「マダガスカルサービス」の社長だ。こちらに来て30年になる。マミーは浅川さんとフランス語で少し話してから、わたしに携帯をパスする。
「アサカワが直接お話したいと申しています」
携帯を受け取り耳に当てるとすぐ声がした。
「こんにちは、浅川です」
「こんにちは、イルカです」
「お子さんの具合が悪いとマミーから聞きました」
わたしは電話の向こうの浅川さんに、カイの容態と経緯を説明する。すると「では、日本人が看護士をやっている病院を知っているので、これからそこにお連れしましょう」と言う。今から自宅を出るので、空港から移動しているわたしたちと、ちょうど同じ頃にホテルで合流できるという。浅川さんとの電話を切って、わたしはすーっと肩の力が抜けて心が落ち着くのを感じた。見知らぬ国でトラブルにあった時、やはり日本人の存在は大きいなと思う。
アンタナナリボブカールトンホテル
音もなく降る霧雨にしっとりと包まれたアンタナリボの町。やがて前方に高層の建物が見えてきた。今夜わたしたちが宿泊するカールトンホテルだ。空を覆い尽くすほど枝葉が茂るジャカランダの並木道を走り、湖の手前を右折する。それから車はゆっくりとホテルの敷地に入っていった。
カールトンホテルはマダガスカルの首都アンタナナリボを代表する高級ホテル。人工の湖アヌシ湖畔に建ち、日本大使館から約500メートル、町の中心独立大通りから1kmのところにある、マダガスカル最大規模のホテルだ。実はこのホテル、つい最近名称が変った。わたしたちが予約した時は「ヒルトンマダガスカル」だったのだが、到着の数日前に「カールトンホテル」に変更になったとのこと。そんな珍しいこともあるんだね。
名前はどうでもいいのだが、わたしはヒルトンホテルのメンバーなので、宿泊すればポイント(航空会社のマイレージのようなもの。ホテルポイントがたまると無料で宿泊できる)がたまったのに。ちくしょー!ちなみにヒルトンのメンバーには誰でも無料でなれるので、すぐに予定がない人もとりあえずメンバーだけにはなっておこう。客室数は170、建物はアンタナナリボ一の高さを誇り、設備やサービスも申し分ない。レストランや銀行、旅行会社のオフィス、ショップも入っており、フィットネスクラブや室内プールも備えている。
カールトンホテルに到着し、車を降りてエントランスからロビーに入る。白を基調としたセンスのいいモダンな内装に、一瞬で旅の緊張感がほぐされ、体中からまとわりつくような湿気を帯びた疲れが蒸発していくようだ。
コネクティングルーム
「こんにちは、イルカさんですか?」
わたしたちより先にカールトンホテルに到着していた浅川さんが声をかけてきた。
「そうです。こんにちは、はじめまして。今日はお休みのところわざわざすみません」
「ああ、それはいいんです。それでどんな容態ですか?」とカイのほうを覗き込む。
マミーがチェックインの手続きをして、荷物を部屋に運んでもらい、わたしたちもいったん部屋に上がりさっと着替える。わたしたちの部屋は10階のダブルとツインのコネクティングルーム。コネクティングルームとは、隣合う2部屋を内側でつなげて1部屋として使用できるタイプの部屋。子連れ家族には大変ありがたい味方だ。コネクティングルームは部屋数が少ないので、予約の段階で確約してもうようにしよう。
さて、ロビーで浅川さんが待ってくれているのであんまりもたもたできない。着替え終わったら急いでロビーにもどり、浅川さんと病院へ向かったのだった。
広くて高級感のある客室。コネクティングルームは家族連れに便利