それ行け!子ども6人連れアフリカ・キャンプ旅行記〜環境問題に直面するナクル湖で最初のサファリだー!フラミンゴ見たよ編
どうやら朝方まで雨が降っていたようだ。テラスに面したガラス戸を開けると、みずみずしい空気が部屋の中に流れこみ、森の緑がしっとりと鮮やかに濡れている。ああ、今アフリカにいるんだ。
長旅と時差で夕べはそりゃーぐっすり眠れた。ベッドに入ってよこになり一瞬目をつむって開いたら、もう朝になってましたっていう感じ。っていや、そりゃーおおげさかい?
ジャンボ〜!
6歳(幼稚園年長)から11歳(小学6年生)まで6人の子どもを連れて、猛獣が闊歩するアフリカのサバンナでキャンプ旅行。今日はアフリカに来て最初のサファリに出かけるぞー!
ナクル湖の朝・アフリカ最初のサファリ
今日はアフリカ初サファリ。野生がどんなドラマを見せてくれるか、大人もこどももドキドキだ。約束の6時半にロッジの車寄せへ行くと、ウィルソンとクレメンスがニコニコしながら待っていた。われわれが乗るサファリカーは、2台とも屋根が全開になっており、もういつでも発進できる体勢だ。
「ああ、ついにこの時がきた!」
感慨をかみしめながらサファリカーに乗り込む。期待にはやる胸の鼓動と、サファリカーの力強いエンジン音が共鳴し、もういてもたってもいられないぞー。アヒルファミリーも全員サファリカーに乗り込んで、いつでも準備OKのようだ。
よ~し、じゃあ出発しようか、ルーフの上から顔を出し、いざ出陣の合図、スリー、ツー、ワンダー、GO!
ロスチャイルドキリン/バッファロー
いきなりバッファロー
ロッジの敷地を出ると、いきなり何か黒くて大きな生き物が何匹もサーッ、サーッっと車の前や後ろを横切る。
「いったい何だ?」
前の車に乗っているケンタが「バッファロー!バッファロー!」と大声で指差しながら叫んでいる。ええぇー!ロッジを出ていきなりバッファローですと。
わははは、すげーぜアフリカ。やってくれる。
突然目の前にあらわれた爆走バッファローに、みんな息をするのも忘れ目をまるくして見入っていた。と言うか、ロッジのすぐ外にこんなやつらが群れてたなんて、うかつに出歩かなくてよかったよ。ほーっ。
それからケンタ、そんなに大声で叫んだら、ノドから血が出るぞ。
次はヒョウ
大きなぬいぐるみみたいなヒョウ
バッファローが去ったあと、斜面を下って湖を1周する道に出た。
道と言っても未舗装のワイルドなダート道で、轍にはまって左右に激しく揺れたり、泥の中でスリップしたり、けっこうスリリングだ。
この時間、空気はまだひんやりしていて、全開にしたサファリカーの屋根から気持ちいい緑の風が吹き込んでくる。
しばらく湖畔を走っていると、反対側からやって来たサファリカーのドライバーが、スピードを落として興奮しながら大声で何か話しかけてくる。
ウィルソンも車を止め彼の話に耳を傾ける。
どうやらこの先の森にヒョウがいるらしい。
って、なに~
早くもそんな大物現るですかぁ~!
ナクル湖は、肉食獣では最も見ることが難かしいヒョウに出会えるチャンスが大きい。
だからといってあんた、サファリ初日のしかもまだロッジを出発していくらもたっていないのに、いきなりのご対面?!
ちょっと待って、わたしたちまだ心の準備ができてません!
湖畔の草原からうっそうとした森の中へ道は続いている。ヒョウはこのどこかの木の上にいるらしい。いったいどの木だろう?うす暗い森の中をサファリカーはゆっくり進んでいく。
張りつめた緊張感。そのヒョウってさ、木の上から屋根が全開になっているわれわれの車に、飛び移ってこないよね?やがて前方に6~7台のサファリカーが止まっているのが見えた。
みんな車の屋根から身を乗り出し、左手の大きな木の上を見上げている。
「あ、あそこ、ヒョウだ!」
カイが指差す枯れた大木に目をやると、おお~本当だ、あんな木のうえにヒョウがいる!
牙をむき出しにし、グルグルと狂暴なうなり声をあげて、目が合ったらも~飛びかかってきそうな、そんな殺気にまみれた野生のヒョウを想像していたのですが、彼(?)は木の上で満足そうにだらりんこんと寝そべって、動き出す気配すらない。
ちょっと大きな猫のぬいぐるみといった感じだ。
それはそれで思わず抱きしめたくなっちゃうくらいカワイイ☆じっとしてるから写真もいっぱい撮れるし。となりの車のアヒルファミリーも全員屋根から乗り出し、夢中になって、そのカワイイ猛獣を眺めている。
「きっと食事が終ったあとなんでしょう」
ウィルソンがぼそっと説明する。
「ああ、なるほど、だから満足そうな表情をしているんだな」
まだアフリカ旅行は始まったばかりだが、もうこの先ヒョウは見れないかもしれない。
われわれも満足のいくまでそこに居座って、木の上のヒョウを観察していた。
バブーンの森
心ゆくまでヒョウを観察して、それからサファリカーはゆっくり動きだす。
ヒョウの森を抜けると広い草原があり、むこうのほうに黒いかたまりが見える。
どうやらバッファローの群れのようだ。
その草原のさらに先には、ナクル市の住宅街が広がっていて、もう文明社会はすぐそこに迫っていることを知らされる。
大きなカーブを曲がってさらに進むと、見覚えのあるゲートに出た。夕べウィルソンたちがゲートを開けてくれと交渉していた、公園の管理事務所だ。夕べは真っ暗でよくわからなかったが、まわりには芝の広場やピクニックテーブルなんかが置かれている、なかなかしゃれた所だったんだね。
しばらく待っていると、事務所に入っていたウィルソンとクレメンスがご機嫌な顔をして出て来た。夕べの交渉では、今日お金を持ってくるということでゲートを開けてもらったらしいんだけど、今話して必要なくなったとのこと。おお、それはよかったと言うと、まあでもアフリカではよくある話らしい。その時の気分で物事が決まるってやつ。
事務所から出てしばらく走ると、両側の木の上に何か動物がいる、それもものすごい数。バブーン(オリーブヒヒ)だ。バブーンはわれわれの頭上の木の枝を飛び交っていたが、ウィルソンが車を止めると、みんな次から次へとぞろぞろ地上に降りてきた。
「うわぁ~~すごいたくさんいる!」
バブーンがどんどん木から降りてくる
みんなわれわれの車に近寄ってきて、中をのぞこうとする。怖ぇ~~。
げっヤバッ!目が合っちゃった!!
あ、どもすみません。っておい!サルにあやまってどーする。
でもいっせいに襲いかかられたらピンチですよ。
バブーンたちはしばらくわれわれの車を取り囲んでいたが、そのうちたち去って行った。どうやら食べ物でももらえるんじゃないかと寄ってきたみたいだ。
サファリのルールのひとつに「野生動物に餌を与えてはならない」というのがあります。
一度人間から食べ物を与えられた動物たちは、野生に戻れなくなるからだ。それは動物たちにとっても悲しいこと。ここのバブーンがこんなに車にたかってくるのも、きっとどこかの観光客が自分勝手な都合で、餌をあげちゃったからに違いない。
少し先にナクル湖の湖面とフラミンゴが見える
シロサイ発見
バブーンの森を抜けてさらに進むと、木々がまばらになり草原とそのむこうにナクル湖が見えだした。
その時「あ、何かいる、すっごくでっかいやつ!」
とカイが遠くの木と木の間を指さしながら言う。
「おお、サイですよ。よく見つけましたね」とウィルソン。
彼の説明によると、シロサイはケニアでは絶滅したとのこと。今この公園にいるのは、南アフリカから輸入した個体らしい。ナクル湖は、周囲を電気フェンスで囲まれていて、動物が他の場所へ移動できないため、保護しやすく現在では繁殖して数も増えてるらしい。
それにしてもあんな遠くの動物を見つけるなんて、
おまえの視力はマサイ族か!
シロサイとバッファローとフラミンゴ
ナクル湖国立公園のフラミンゴ
それから森を抜け、草原を走り、ナクル湖の湖畔に出た。
水辺にはバッファローやシロサイ、シマウマがいる。
そして水の中にはものすごい数のフラミンゴ。
やったー、すごい!これこれ、この湖をピンクに染めあげるフラミンゴの大群を見に来たんですよ。
そしてなんとここでは車から降りてもいいらしい。
ええー本当ですか~ウィルソンちゃん。(ってなぜちゃん呼び〜)
こどもたちも大喜びで車から飛び降りる。あっちのアヒルファミリーの車でも同じ現象がおこっていて、みんな興奮してポイポイ車から降りてくる。
ナクル湖の湖畔ではガイドの許可があれサファリカーから降りることもできる
よし、もっとフラミンゴの近くに行ってみよう!昨夜の雨のせいで地面はぬかるんでいる。それにかなり滑るぞ。さらによく見るとおそらくバッファローのそれと思われる特大の置きみやげが、あっちこっちにばらまかれている。
おーい、あんまりはしゃすぎてうっかり転ぶなよ!そしてまちがっても、転んで糞の上に手をつくなよ!
フラミングの群れ。これでも例年に比べ鵜rと「かなり少ない」らしい
フラミンゴは写真を撮ろうと近づくと、潮が引くみたいにさーっといなくなる。
本当はものすごい数のフラミンゴがいるのだが、写真にはこれくらいしか写せませんでした。
フラミンゴは何故ピンク色なのか?
ケニア中央部にあるナクル湖は、百万羽を越えるレッサーフラミンゴ(ピンクフラミンゴ)の飛来地として世界的に有名な湖だ。今回われわれがナイロビからナクル湖まで足を伸ばしたのは、湖面をピンクに染めるフラミンゴの大群をひと目見たかったから。
ところで、フラミンゴは何故あんなに鮮やかなピンク色なんだろう?どうやらそれはナクル湖の水質と関係があるみたい。
ナクル湖の水質は、アルカリ性で高塩分濃度。そのため、そんな特殊な水環境に適応できる植物プランクトン、スピルリナというラン藻類が繁殖している。
実はフラミンゴはそのスピルリナを餌としており、スピルリナのカロチノイドによって、鮮やかなピンク色になるのだ。
で、そのスピルリナって美味しいのかな?
ナクル湖のフラミンゴ/広くてすごい景色だね
ナクル湖国立公園について
ナクル湖を取り囲む周囲188平方キロメートルの地域は、1968年ケニアで最初の国立公園に指定されている。ナイロビから160kmと手軽な場所にあるため、現在ではケニアで年間最も多くの観光客を集める国立公園となった。湖の周辺には、サバンナや森があり、フラミンゴ以外にも400種におよぶ野鳥や、キリン、サイ、ライオン、ヒョウなど多くの野生動物が生息している。
中でもヒョウは、最も見る事が難かしい肉食獣だが、ナクル湖はヒョウを見れる確率では東アフリカ一と言われている。公園の周囲は電気フェンスで囲まれていて、公園内の動物が他地域へ移動することはない。反対にケニアでは絶滅したシロサイや、絶滅危惧種であるウガンダキリン(ロスチャイルドキリン)が、他地域から搬入され、手厚い保護のもと最近では繁殖が確認されるに至っている。
公園の入園料は、ケニアの野生動物保護を管轄する「Kenya Wildlife Service(KWS)」が徴収している。
ナクル湖と環境問題
ナクル湖のシロサイ/バブーン群れ/珍しいヒョウと遭遇!!
ナクル湖はまた、開発と自然環境の共生という難かしいテーマに直面し、世界中から注目を集めている湖でもある。
ナクル湖の北側斜面に隣接するナクル市は、1962年には人口38000人だったが、現在約36万人にふくれあがり、ケニア第4の都市としてなお発展中。このリフトバレー州の州都であるナクル市の急激な成長は、都市や周辺地域の環境の著しい悪化を招いている。ナクル湖は閉鎖湖(流れ出る川がない)のため、ちょっとした大雨でも、都市であふれた生ゴミやビニール、食べかす等生活雑排水が湖に流れ込む。
また工場や農地の拡大によって農薬や工業廃水も溢れ出している。さらに、これも閉鎖湖の宿命であるが、湖への流入水量と、湖面からの蒸発によって湖の水量が決まる構造は、何より温暖化や異常気象など地球環境の変化の影響をまともに受けやすい。
日本はこのような環境問題に対処すべく1990年代から、ナクル市の上下水道の整備や、下水処理施設建設などの援助を行なっている。
しかし
皮肉なことに、
こうした都市インフラの整備が、かえって人口流入を招き、
更なる環境悪化へ拍車をかける一因となっている。
ナクル湖は、ラムサール条約登録湿地に指定され、世界的にも重要な自然保護区。だが、このままでは、ナクル湖からフラミンゴが姿を消す日が来るのも、そう遠い未来のことではないかもしれない。
ロックハイラックスの展望台
今度はあの展望台に行ってみよう、
ということで、
湖の西側にあるちょっと小高い岩山に登る。
頂上で車をおりて少し歩くと眼前にナクル湖の大パノラマが広がっていた。
うわぁ~~これはすごい眺め!
とみんな大声が出そうになった時、
レンジャーが近寄ってきて
「しーしー」と言う。
そのひと差し指を唇にあてるしぐさは万国共通なんですね。
どうやらロックハイラックスやバブーンが来てるらしい。
ロックハイラックスは小さいうえに岩と同系色なのでわかりづらいが、よく見るとうじゃうじゃいるいではないか。
バブーンも
赤ちゃんを抱えたやつや、
あんたが大将でしょう
といういかにも大きくて立派なやつまで、
老弱男女が勢ぞろい。バックの景色もすごいし、
もう本当にありがとう!
としか言いようのない光景だった。
大満足の初サファリ
岩山から降りて湖の南側の岸に沿って進む。
そろそろロッジにむかって帰り始めたようだ。
湖畔に広がる草原には、トムソンガゼルやシマウマの群れ、
お、イボイノシシにダチョウもいる。
その草原の先の湖にはフラミンゴのピンクのかたまり。
ちょっと信じられない風景だね。
一方、道の反対側にはアカシアの森が広がっていて、こちらにはキリンの群れがいる。
あの小さい2匹は双子の赤ちゃんかな?
よく見ると模様の違うキリンがいるが、これはロスチャイルドキリン。
やはりケニアでは絶滅してしまい、隣のウガンダから運んできた個体らしい。
ナクル湖にはゾウはいないらしいが、それにしても動物いっぱい見ちゃったね。バッファローにヒョウ、シマウマ、シロサイ、バブーンにフラミンゴ、ペリカン、ダチョウ、ハイエナ、イボイノシシ、トムソンガゼルにウォータバック、インパラ、それにマサイキリンにロスチャイルドキリン。
初日からこんなに見てどうすんの~?!
というくらいの満足感にいだかれて、ロッジに戻るわれわれだった。
時間はもう10時。3時間半もサファリしてたんだね。
夢中になってたからあっという間だったよ。
ああ、正気に戻ったらお腹減った~。
さてロッジにもどって朝食をいただきましょう♪