スイス子連れトレッキング(3)〜視界ゼロの山越えであわや遭難!レーティ山~ブスアルプ

2019年2月3日

スイス子連れトレッキング

レーティ山~ブスアルプ

レーティ山~ブスアルプ

レーティ山からブスアルプのバス停まで、

753mの高低差をひたすら下るコース。

 

レーティ山の岩場を抜けると、

草原と高山植物の花畑が広がる

牧歌的な風景

の中を歩く気持ちのいいコースになる。

 

コースの終点ブスアルプから

グリンデルワルドまではバスがあり、

所要時間は約20分。

 

最終バスは午後6時にブスアルプを出発する。

(夏期のみ。それ以外の時期は要チェック)

 

濃霧のレーティ山越え

         雪でコースがわからないよー / レーティ山山頂付近 / ママたちはもう先へ行っちゃった

 

山小屋とおせんべい 

 

山小屋に駆け込んだわたしたちは、

とりあえず床にドカドカと腰をおろした。

 

ふ~、ここまでずーっと歩きっぱなしだったので、

もう足が棒のようだ。

 

でも、カイは座ろうとしない。

全然疲れてないから平気だと言う。

「それより早く行こうよ」だって。

何者だ、おまえ?

 

小屋の中は6畳くらいの広さで窓はない。

イスや暖房器具とかもない。

何にもなくてただガラーンとしている。

しかし雪や風をしのげるのでちょっと暖かいぞ。

 

ママがリュックサックをごそごそやって、

何を取り出すのかと思ったら、

おお!

ナント

おせんべいですかぁ~!

 

いや~ママ、ナイスプレー!

 

こうゆうとこで食べるせんべいって美味しいよねー。

 

岩の墓場

 

せんべいを食べて、水分も補給して、

そろそろ出発しようか。

 

最終バスの時間までに

ブスアルプに着かないとシャレになんないよ。

 

小屋を出ると外は相変わらず雪とガス

休んだせいでちょっと寒く感じるけど、かまわず進もう。

 

今度は登って来たのとは反対側の道を下る。

しばらく進むと足もとが岩だらけになり、

しかも雪が積もってだんだん歩きにくくなってきた。

 

まわりには2~3メートルもある岩の柱が、

まるで墓標のようにあっちこっちに立っているのが見える。

 

映画「スタートレック」で宇宙船の隊員が、

未開の氷の惑星を探検するシーンみたいだ。

 

でもこれは現実。

雪やガスは益々ひどくなるし、

歩いても歩いても標識がないので、

このコースが正しいのかもよくわからなくなってきた。

 

「これは危ない」

 

と直感したわたしは、

先を進んでいるママとカイに叫んだ。

 

「おーい、残念だけど引き返そう」

 

レーティ山を下る

 

かまわず前進

 

「やだー!」

ガスで姿が見えないママの声が、

かなり遠くから聞こえてきた。

 

えっ?やだって?

 

いや~そんなわがまま言ってる場面じゃないよ、ここは。

 

山は下りで遭難すると言う。

 

下るのやめて引き返すというのは、

下ってきた道を登らなきゃならない。

 

登るのをやめて引き返すのとは大変さが何倍も違う。

 

それはよーく承知していますが、

正しいかわからないコースを

これ以上やみくもに進むのは危険だ。

 

視界も悪いし、寒さで体力も消耗してる

わたしはもう一度大きな声で叫んだ。

 

「お~い、これ以上進んだら危ないぞー、引き返すよー!」

 

しばらくして全く見えないガスの、

さっき声がしたよりもっと遠くから

ママの返事があった。

 

「やだー!先に行ってるよー」

 

ガスの中のトレッキング

 

霧の中の追跡

 

ありゃ~、こうなったらお手あげだ。

とにかく追い付いて説得するしかないか。

 

わたしはリュウとペースをあげて進む。

しかしなかなか追い付けない、

というかむしろ引き離されてるじゃん

 

どーしよー。

 

リュウもありったけの声をしぼって

「おーい、待てー!」

と叫んでいるけどもはや届かないみたい。

 

 

はあはあ息を切らしながら歩いているうち、

足もとが歩きやすくなっているのに気づいた。

 

いつの間にか岩がなくなり、

石が転がっている程度になっている、

そのうち石もなくなって、

草原に伸びる歩きやすい1本道に変わった。

 

そして雲の下に出たのか、

雪がやみ、

ガスが晴れて

視界もどんどんよくなってくる。

 

目をこらすと、

向こうの尾根の稜線を誰かが歩いているのが見える。

ママとカイだ、

ひぇ~もうあんな所まで行っちゃてるよー。

 

ガスが晴れて視界がよくなってきた

 

霧が晴れて谷の向こうにアイガー北壁が見えてきた。

 

雲が晴れてきたアイガー

 

山羊使いのお姉さん

 

この感じならもしかしたら大丈夫かもしれない。

そう思いながらさらに進むと、

風に乗ってベルの音が鳴り響いてきた。

 

何だろうと、

小高い丘の向こう側にまわってびっくり!

 

たくさんの山羊が、

首につけたベルを鳴らしながら草を食べているのだ。

 

トレッキング中にヤギ使いのお姉さんと遭遇

 

「わぁーヤギだー」

リュウが興奮しながら走ってヤギに近づいていく。

 

ヤギの群れの中には

すでに先をすすんでいた

カイが混じっている。

 

そして女の人が1人。

山羊使いのお姉さんか。

 

遭難するんじゃないかと不安だったわたしは、

それを見てほっとため息。

 

どうやら助かったみたい。

 

お姉さんにブスアルプはこの道でいいのか尋ねると、

「大丈夫よ」と答える。

 

ここからブスアルプまであと40~50分くらいで行けるらしい。

ああーよかった!

 

 

ブスアルプまでもうすこし

 

お姉さんにお礼を言って、

先へ進む。

 

山羊の群れはしばらくこどもたちに着いて来ていたが、

お姉さんが棒をぶんぶん降って静止していた。

 

先の尾根まで来たら振り返りもう一度手を振る、

「バイバーイ、お姉さん!」

お姉さんも帽子と棒を振って応えていた。

 

その尾根を越えると、

今度はずっと遠くのほうに家が何件か見え始めた。

 

どうやらあれがブスアルプの村のようだ。

もうゴールが近いと思うと、

また元気が出て来て、

わたしたちは歌なんか歌いながら、

雨あがりのアルプスの草原を軽やかに歩いて進んだ。

 

 

一時はどうなるかと思ったけど、なんとか無事たどり着いたね」

「無事じゃないわよ、本当に遭難しちゃったって心配したんだから」

 

そのわりにはさっさとすすんでましたが。

 

遠く雲の下には、

しっとりと緑の濃いグリンデルワルドの家並みが見えてる。

 

「あそこにボクたちのホテルがあるんだね」

 

それは微笑ながらそっと寄り添って、

わたしたちの帰りを待っているようだった。

 

雨上りのアルプスの草原

 

コース概要

 

出発地点レーティ山の標高は2553m、

ゴールのブスアルプは標高1800m。

高低差753m。

 

下りっぱなしの道では、

ひざやももに負担がかかるので注意が必要。

コース後半、わたしはもうひざが痛くて痛くて仕方なかった。

そしてこの筋肉痛は2日目も尾を引いた。

 

所要時間約1時間40分。

 

ブスアルプからのバスの最終時間はあらかじめ確認しておこう。

バス停の前には、レストラン兼カフェがある。

 

ブスアルプに到着