迷わず選んだのはペダルボート
ずっとカイの看病ばかりしていたから、リュウのことを考えるとちょっと可哀想。
リュウだって遊びたくてしょうがないだろうに、まったくそんなことを口に出さない。
普段は大暴れして手がつけられない悪ガキだが、さすがにお兄ちゃんの容態がただごとではないことを察し、心配して、おとなしくしているのだろう。
どうしてもやてみたかった
気分転換に、わたしはリュウを連れて正面のビーチへやって来た。
イランジャではカヤックやウィンドサーフィン等、いろんなマリンスポーツが無料で楽しめる。無料だから何でもいいぞ、と言うと「ぜったいコレ!」とリュウが選んだのは「ペダルボート」だった。
「えっ?お前がどうしてもやりたいのはそれなの?」もっと、こう、ほかにいろいろあるだろう、例えばウィンドサーフィンとか、あるいはウィンドサーフィンとか、はたまたウィンドサーフィンとか。
それでも、どうしてもペダルボートをやってみたいと言うので、トムに言ってボートを借りる。では、2人仲良くペダルを漕いで、 沖までサイクリング、ならぬ、ペダリングしてみることにしましょう。
ぷかぷか波間に浮かぶペダルボート。最初は勢いよく海に漕ぎだしたけど、すぐスピードが落ちてしまった。ペダルを一生懸命漕いでも、割に合わないくらいちょびっとしか進まない。それに、何だこれ~~、舵取りがどえりゃ~難しい。これはけっこうな運動になるぞーー。それでも、慣れてくるとなかなか面白い。それに運動して暑くなったら、海の中へどぼ~んと飛び込めばいいし。
「カイも元気になって、いっしょに出来ればよかったのに」
お兄ちゃんの心配をするリュウ。
お前、いつもいじめられてケンカばかりしてるのに、そんなにお兄ちゃんのことが好きななんだね。
オレンジジュースが美味しい!
リュウと呼吸を合わせ、なんとかリーフエッジまで出る。浜から100メートルくらい沖に出たところだ。
じゃあ、このへんで海に飛び込もうか。それっ!わたしが先に飛び込んで、水面から顔を出す。振り返るとボートがない。あれ、どこに消えた!?突風が吹いて、リュウだけになったボートは、あっと言う間に流されてしまったのだ。潮にも乗ってものすごいスポードで、離れていく。わたしはあわてて、遠ざかるボートに大声で聞いてみる。
「おおーい、自分で漕いで浜まで戻れるか?」
「大丈夫」
ほ~~、さすが、常日頃から「自転車が欲しい」と言うだけのことはあって、これは大人が漕いでもけっこうきついのに、体中思い切り伸ばしてやっとペダルに足がとどくかどうかというリュウだが、風と潮に逆らって、なんとか無事に浜まで帰りついたのだった。じゃあ、ご褒美に、オレンジジュースをもらってあげよう。イランジャでは、ビールを含むドリンク類は、いつでもどこでも無料でもらえる。浜辺にいるスタッフに頼んでみると、ビーチのわたしたちのテーブルのところまで運んで来てくれた。
ああ、美味しそう!
マダガスカルの太陽いっぱい浴びて熟した、オレンジをふんだんに使ったジュース。きんと冷えて、美味しいったらありゃしない!こんちくしょ~~。
じゃあ、次はパイナップルジュースをお願いします!ってあつかましいぞ!