凍りつく入国審査〜アッシュドット港
今日は5時半に起床。
早起きすると1日が長く感じられるから、休日の早起きはお得だ!!でもやっぱねぶい!ふぇ~~、
朝食をいただくために屋上のヘラデッキに行くと、火のように燃え上がる朝日に巨大な煙突やクレーンが照らされている。
おお~~、昔から「早起きは三文の得」と言うけど、こんなきれいな朝焼けの海が見れるなんて「三文」どころか3ドル、いや3ユーロくらい得してるって!
アッシュドット
アッシュドットはテルアビブの南の地中海に面して建設された貿易港。イスラエルらしい遺跡や古い建物は皆無で、ぱっと見た目にはどこの国かわからない。何人かが写真を撮ろうとデッキに集まってきたが、すぐ潮が引くようにいそいそとカメラをしまっていなくなった。
同じ港町でもテルアビブ北方にあるハイファやアッコーなら古い街並が残り、海上からの景観も楽しめるのだろう。でもエルサレルへ行くには南のアッシュドットの方が確かに近い。それに、おそらくこういう貿易港のほうがクルーズ船の接岸料みたいなのが安いのではないだろうか。
ヘラデッキでビュッフェの朝食をいただいているうちに、ブルーモナークはアッシュドットの港に接岸した。時計を見ると6時半。
「そろそろラウンジのほうへ移動しようか?」
「今日はキリストが生まれた町へ行くんでしょ?」
「そうだよー、よく勉強したね。今日はキリストのお墓がある教会へも行くんだよ」
エクスカーションの集合場所であるラウンジに降りて行くと、昨日と同じですでに大勢の人で混み合っていた。でも昨日の教訓で、わたしたちはもうあせらなくてもいいということを知っている。
エクスカーションはまず、人数の多いギリシャ語のツアーから出発して、英語ツアーは一番最後になるのだ。だから順番がくるまで、ゆっくり待っていよう。
船のロビーから外に出るあの / 建物が入国審査場だよ / 外見からは想像もつかないくらい中はピカピカ
テロリスト扱いの入国審査
さて、おとなしくラウンジで待っていたら、やっぱり一番最後に英語ツアーが呼ばれた。ラウンジを出て、ロビーの出入り口から船の外へ出る。それからスタッフたちに見送られてタラップを降りると、目の前に入国審査をおこなう建物があった。
古い倉庫のような建物だったが、中に入ると一転してピカピカで、国際空港のような内装だ。そのギャップにびっくりしながら、入国審査の列を進むと、
もっともっとびっくりすることが待ち受けていた!
わたしたちの番になって4人分のパスポートを見せると、それまでニコニコしていた審査官の顔が、
さっと厳しくなったのだ。
えっ?えっ?何々?なんですかー、なんでそんなこわい顔をするの。
わたしたちの審査官は、若くて頭のよさそうなきれいなおねえさん。審査も、わたしたちが子連れファミリーなので形式的に見てさくさく終わるのかと思いきや、
まるでテロリストを発見したみたいな怖い形相になっている。
やーー、もうやめてぇ~~!いやな予感がびんびんに頭の中を回ってるんですけど、うう。
審査場から外へ出る / バスがたくさん待っている
「インドネシアに行っている」
おねえさんは、私たち4人のパスポートをめくりながらぼそっとつぶやく。それからパット顔をあげてまわりにいた他の審査官を呼びつけた。あっと言う間にわたしたちは、まるで凶悪犯人を取り押さえるように怖い顔をした審査官たちに取り囲まれてしまった。
ひえぇーー、わたしたち普通の日本人の家族ですよ~~、その緊張した顔つきはなんですかー。もっと穏やかに、そう落ち着いて話せばわかりますって。
そこではたと思いついた、そうか、インドネシアはイスラム教の国。周囲をイスラムの国に囲まれて常に自爆テロの脅威と隣り合わせのイスラエルでは、イスラム教の国へ行ったことがある人というのは、ものすごく怪しまなくてはいけない対象なんだ。平和な日本で暮らしていると、インドネシアがイスラムの国だなんてこと、別に意識もしてなかったな〜。
「インドネシアへ何の目的で行ったのだ」
厳しい顔でにらみながらお姉さんが質問する。
「インドネシアはメナドというところにダイビングで行ったんですよ」
「家族でか?」
「そうです、わたしたち家族で、この春休みに」
「インドネシアに知り合いはいるのか?」
「え、いえ、いません」
「あ、そうそう、わたしたちが行った島はスラウェシ島といって、そこではイスラム教よりキリスト教のほうが盛んなんです」
キリスト教の名を出せばなんとかなるかと思ったが、これは墓穴を掘った。今でこそイスラエルはアラブと対立しているが、中世には、ユダヤ人はキリスト教徒から迫害されているのだ。このへんしっかり歴史の勉強をしておかなと痛い目に合う。
アッシュドットの港 / 今日はこのバスだよ
やっと解放!
結局、審査官が数人で話し合いをして、「行ってよし!」ということになった。
ふ~~、もーー汗たらたらだよ。
それから入国審査場の外へ出てバスに乗る、今日は9番のバスだ。わたしたちが乗るとバスはすぐに走り出し、一路西へ、エルサレムを目指して出発する。真っ青な夏のイスラエルの空の下、平坦な農地をしばらく走ったら、山道になってきた。
この山岳地帯の向こうはもう、エルサレムだ。
意外と緑が多いね / もうすぐエルサレムだ