カイロのみやげものショップで買ったオベリスクのボールペンとエジプト国外に持ち出されたオベリスク
考古学博物館を見学したあと、カイロ市内にある土産物ショップに向かった。
店内に入ると、まずパピルスの作り方の実演を見学。
パピルスは、古代エジプトで紀元前2000年頃から使われていた「紙」。ナイル河畔に茂っていたカヤツリグサ科の植物の、茎の表皮から作る。紀元前後には大量に生産され、エジプトの代表的な輸出品としてヨーロッパ方面へ出荷されていたが、9世紀頃に中国から紙の製法が伝わると徐々に廃れていった。現在ではシチリア島シラクーザなど一部の地域でわずかに作られている。
ちなみに「パピルス」は、英語の「paper」の言葉の由来になっている。
古代の紙、パピルスの作り方を実演するお兄さん
カイロのみやげものショップ
おみやげショップでは、パピルスに古代エジプトの文字ヒエログリフを描いたものや、風景画、デザイン画などが販売されている。値段は大きさや絵の内容によってまちまちだが、80cm×40cmくらいのもので、2万~5万円くらい。日本に帰ったあと画材屋さん(世界堂みたいな)で額縁に入れてもらえば、立派なエジプトみやげになる。
パピルス制作の実演を観たあとは、店内をぶらぶら歩き回る。アヌビス神の木像や、ツタンカーメンの黄金の玉座のレプリカ、つぼ、絵皿、アクセサリー等々、ものすごい種類と品数の商品が所狭しと積み上げてあり、こどもたちがうっかり当たって崩してしまわないかハラハラしっぱなしだ。どうせ買うなら壷でも木像でも、大きいものが欲しいが、これからまだ旅は長いので、そんなものを運びながら移動するのは大変ということであきらめた。
クレジットカード、ドル、ユーロのトラベラーズチェック、ドル、ユーロの現金が使える。トイレもあります。
こどもたちは、クラスやサッカークラブの友達へ、何かおみやげを買おうと迷っている。
一方、古代からエジプトを訪れた西欧人たちは、もっともっととっても大きな「おみやげ」を本国へ持ち帰っている。
オベリスクだ。
オベリスクは花崗岩で作られた柱型のモニュメント。高さは20~30mほどあり、側面には 建立者の功績や神に捧げる言葉がヒエログリフで刻まれている。また頂上にはピラミッドを小さくしたような四角錐型のキャップストーンがのっていて、神殿や門の入り口に建てられている。エジプトの創造神話では、創造主が降りたった最初の丘に、四角錐の豊穣の石があったと言う。オベリスクの頭頂部が四角錐になってるのは、それを表しているからだとされる。
また、別の見方では、オベリスクはピラミッドの替わり、という意見もある。オベリスクが作られるようになった時期は、ピラミッドが作られなくなった時期と重なっている。ピラミッド建造には王の権力と莫大な財力が必要だが、王朝が衰えてくると ピラミッド建設が困難になってくる。それで替わりに神殿に納められたのが、オベリスクというわけだ。
ちなみにオベリスクはギリシャ語の「焼き串」を意味する言葉からきている。
オベリスクがピラミッドの替わりに作られたのなら、ピラミッドが王の墓だという考え方は、ますます可能性が低くくなるのではないか。だってオベリスクは、どう考えたって墓じゃないでしょう?
おみやげショップの入り口 / たくさんのみやげものが並んでいる
国外に持ち出されたオベリスク一覧
さて、現在エジプト国外にある、つまりエジプトから「おみやげ」として持ち出されたオベリスクは23本。そのうちの13本がローマにある。一方エジプト国内には5本しか残っていない。
エジプト国外にあるオベリスクの一蘭は下記。
- イタリア/ローマ/サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ広場
- イタリア/ローマ/バチカン市国,サンピエトロ広場
- イタリア/ローマ/ポポロ広場
- イタリア/ローマ/モンテチトリオ広場
- イタリア/ローマ/ナヴォーナ広場
- イタリア/ローマ/エスクイリーノ広場
- イタリア/ローマ/クイリナーレ広場
- イタリア/ローマ/スペイン階段の上
- イタリア/ローマ/ピンチョの丘公園内
- イタリア/ローマ/ローマ国立博物館の南庭
- イタリアローマ/ロトンダ広場
- イタリア/ローマ/ミネルバ広場
- イタリア/ローマ/ビラ・チェリモンターナ
- イタリア/ウルビーノ/リナッシメント広場
- イタリア/フィレンツェ/ピッティ宮殿跡
- イタリア/カターニア/ドゥオーモ広場
- トルコ/イスタンブールヒッポドローム跡地
- イスラエル/カイザリア/ヒッポドローム
- フランス/パリ/コンコルド広場
- フランス/アルル/レプブリック広場
- イギリス/ロンドン/ビクトリアエンバンクメント
- イギリス/ウインボーンキングストン/レーシー・ハウス&パーク
- アメリカ/ニューヨーク/セントラルパーク
パリのコンコルド広場に建つオベリスク。写真左手はホテルクリヨン。建物が重要文化財に指定されている。正面奥に見えるのがマドレーヌ寺院、写真右手先にはルーブル宮殿、左手の先にはシャンゼリゼ大通り、写真の後方には世界でいちばん美しい橋、アレクサンダー三世橋がある
現存しているオベリスクのうち、もっとも美しいとされるものが、パリのコンコルド広場にあるオベリスクだ。これはルクソール神殿から運ばれたもので、高さ25m、重さは推定254トン。欧米各都市に散らばった古代エジプトのオベリスクを観てまわることをテーマにした旅行も、面白いだろう。
ところで、エジプトから持ち帰ったオベリスクを町の広場に飾る、という発想は日本人には理解しにくい。日本人がオベリスクをち帰ったとして、はたして新宿三丁目の交差点に置くだろうか?
自分の部屋の家具の配置に気を使い、カーテンやクロスの色にこだわるように、欧米の人は、町をおしゃれにする意識において、日本人と決定的に異なるのだ。
「決めた、これを買おう!」
やっと友達へのおみやげに買うものを決めたこどもたち。
のぞいて見ると、それはオベリクス型のボールペンだった。
ツタンカーメングッズは人気が高い