世界遺産カルタジローネのスカーラを親子で駆け上がって見た景色

2019年3月13日

世界遺産カルタジローネのスカーラ

路地をさまよう

ひっそりと静まりかえった細く迷路のような道を歩いている。午後のシエスタの時間なのか、わたしたち以外誰1人見かけない。

「ねーもう歩きたくないよー」

観光が嫌いなこどもたちがついに文句を言い始めた。午前中アグリジェントでたくさん観光したから、我慢の限界に達しているようだ。

「本当にこっちでいいの?」

ママも心配になって尋ねる。

「全然OK!」

だってただ「カン」でこっちに進んでいるなんて言えないでしょ。道の両側の建物高過ぎ。見通しがきかないので自分たちがどこにいるかもわかりません。

 

世界遺産カルタジローネの陶器の大階段スカーラ

 

世界遺産カルタジローネ

カルタジローネは、標高608mの丘の下から上まで、灰褐色の建物がびっしり建ち並んだ、立体迷路のような町。イスラム支配の時代から陶器作りがさかんで、今も町のあちこちでさわやかな色合いの陶器と出会うことがでる。2002年には「ノート渓谷のバロック都市」の一部として、旧市街全体が世界遺産に登録された。今わたしたちが子連れで目指しているのは、そのカルタジローネのシンボル、スカーラ。下の町の中心市庁舎と、上の町の中心サンタ・マリア・デル・モンテ教会をむすぶ142段の階段だ。

この階段ただの階段ではない。動物や植物をモチーフにしたデザインのマヨルカ焼きタイルで装飾され、下から見上げるとまるで陶器のグラデーション。しかもすべての段でデザインが異なるという手の懲りよう。まさに「陶器の町」カルタジローネを象徴する建造物だ。

 

正面から見上げるスカーラ

 

スカーラが突然現れる

「あそこまで行ってだめだったらあきらめて引き返そう」

駐車場から酷暑の中をずっとあてもなく歩いて来て、いいかげんくじけそうになった時、突然広い空間に出た。

「おお!スカーラだ」

今までの暗く人気のない路地とは一転して、陽のあたる明るい広場。そこからバロックの建物に挟まれた陶器の階段が、まっすぐ青い空へ続いている。階段の途中で立ち止まって上を見上げる人、階段に腰掛け下を見下ろす人。様々な人々を乗せたその階段は、まるで巨大な舞台のよう。

階段の両側には陶器職人の工房や、ショップが並んでいて、大勢の人で賑わっている。

 

カルタジローネのシンボル、スカーラ

          カルタジローネのシンボル、スカーラ/階段は1段1段デザインが異なる

 

子ども達と階段登り競争だ!

この階段を見て、今まで歩けないと文句を言っていたこどもたちががぜん元気になった。

「誰が最初に上まで登れるか競争しよう!」とカイとリュウが走り出す。

おいおい待ってくれ、パパは疲れて走れないよ。はーはー息を切らしながらマイペースでついてゆくわたし。

 

サンタ・マリア・デル・モンテ教会とスカーラの最上段にある水道

 サンタ・マリア・デル・モンテ教会/スカーラの最上段にある水道。冷たくて気持ちいい/タイルで描かれた絵

階段の上から

ついこの前までオムツ換えたり、抱っこして歩いてたのに、子供の成長は早いな~。

あの頃は本当に子育てって大変だと思ってたけど、いつの間にかわたしを追い越して、階段をかけ登って行くこどもたち。そのうしろ姿を追いながら、とてもなつかしく、そしてなんだか寂しく思ったりもする。

我が家の子育ての時間は、季節で言うと、もう真夏が終ろうとしてる頃かな。

シチリアの真夏の太陽も、今は西の空に傾き、サンタ・マリア・デル・モンテ教会の影が、階段の下のほうまですーっと伸びている。

カルタジローネのシンボル、スカーラの最上段から家族で見下ろす世界遺産の町並は、時を積み重ねてきたものだけが纏える、やすらぎとやさしさに満ちた光に包まれていた。

 

階段の途中にあるジェラート屋

スカーラを登ったら汗をいっぱいかいた。階段の途中にあるジェラート屋さんで、子ども達と冷たくて美味しいジェラートをいただきま~す。

 

陶器屋

                スカーラの両側に建ち並ぶ陶器ショップ