孵化したばかりのウミガメの赤ちゃん海へ帰る

2019年3月5日

孵化したばかりのウミガメの赤ちゃん海へ帰る

ウミガメの赤ちゃんが海へ帰るシーンを見学する

美しい海に囲まれたノシイランジャ/マダガスカルは、ダイビング/スノーケリングや、ホエールウォッチングが楽しめるポイントとして知られているが、ウミガメの産卵地としても有名だ。

ウミガメは週に2~3回の頻度で、1年を通して産卵のためにこの島に上陸する。従って、イランジャロッジに3泊以上すれば、かなりの確率でウミガメの産卵に出会えるチャンスがあることになる。レセプションに希望を伝えておけば、スタッフが夜中にビーチを見まわりして、産卵が始まりそうになると部屋まで起こしに来てくれる。ひゃぁ~~、それはすごいありがたい。もちろんこのサービス、宿泊者は無料で享受できます。

ウミガメの卵

                                                   ウミガメの卵 / ピンポン玉みたいだよ

一方ウミガメの孵化のほうは、産卵日から計算して、何日の何時から孵化が始まる、というのがわかるらしい。過去の産卵の時刻と場所をスタッフが記録しているので、産卵と同じように孵化のほうも、スタッフに希望を伝えれば、日時と場所を教えてくれる。

わたしたちは滞在日数が限られていたので、チェックインの時その旨を伝えた。するとレセプションのスタッフは、過去の産卵記録をチェックして、何曜日の何時、というように向こう1週間分の孵化の予定を教えてくれた。その日のその時間に南の浜へ行けば、孵化する瞬間と、孵化したばかりのウミガメの赤ちゃんが、ぱたぱたと砂浜を移動して海へ帰るシーンが見れると言う。それは楽しみだね♪

これがウミガメの赤ちゃん

             これがウミガメの赤ちゃん。とっても可愛いよ

さて、バナナボートライドが終わり(本当はロケットボート)、トニーが楽しかった?と聞いてくる。そりゃーもうサイコーだった、と笑顔で答えるわたしたち。

「ちょうど今からウミガメの孵化の時間だ」と、わたしちをボートに乗せてそのまま南の浜へ移動。お礼を言って浜に上陸すると、少し先で10人くらいのゲストがしゃがみこんで熱心に何かをのぞき込んでいた。あ、あそこで孵化するんだ!

砂の中からはい出してきたウミガメの赤ちゃん

              砂の中からはい出してきたウミガメの赤ちゃん

わたしたちも駆け足で近づく。するとスタッフの1人が「注意して」と言う。すでに孵化した数匹の赤ちゃんが、足下の砂浜を歩いてた。

ひゃぁ~~かわいい!

ママはその赤ちゃんを見て思わず歓声を上げる。みんなが覗き込んでいる穴の中を見ると、たくさんの白い卵があり、その中からウミガメの赤ちゃんがもそもそはい出してる。予定は午後5時からのはずだったが、少し早まったらしい。ウミガメの卵は白くて、まん丸で、ちょうどピンポン玉くらいの大きさ。というかまるでピンポン玉じゃないかーー。それ、スマッシュ!

孵化したばかりのウミガメの赤ちゃん

    サンゴのかけらさえ赤ちゃんには大きな障害

それから5~6匹の赤ちゃんが卵を割って砂の上にはい出すのを見ていたが、スタッフが今回はこれで終わりと言う。ええ~~、まだたくさん卵が穴の中に残っているよ。でも、スタッフはこれはもうだめだと言う。「だめ?」つまりこの卵はもう死んでて、これ以上待っても孵化しないのだと言う。よく見ると卵から半分はい出した状態で動かなくなった赤ちゃんもいる。

う~~ん、それは哀しいね、自然の現実はとても残酷です。

一方、先にはい出した何匹かは海の方角を目指して賢明に手足をばたつかせている。体が小さいから、浜に落ちている枯れ木やサンゴのかけらさえ、大きな障害だ。

海を目指す赤ちゃんウミガメ

              ガンバレ!ガンバレ!海はもうすぐそこだ

がんばれーがんばれー、

海に帰る様子を見守っている全員が、声にならないかけ声で応援している。卵が埋められた場所から南の浜の波打ち際まで、およそ80mくらい。体長5センチばかりのウミガメの赤ちゃんには、それは途方もなく長い距離だろう。途中で鳥に襲われたり、ひっくり返って動けなくなって、海までたどり着けない赤ちゃんもたくさんいるらしい。鳥が襲ってきたら助けてやろうと考えていたが、そのようなシーンはありませんでした。

ウミガメの赤ちゃんの写真

それより驚いたのは孵化する確率の低さだ。今日わたしたちが見た卵は、スタッフの記録によると2007年11月6日に産卵されたものらしい。卵の数は全部で56個。今海を目指してぱたぱたと進む赤ちゃんは、たったの11匹。産卵された卵の5個に1個しか孵化しない計算になる。さらに海いたどりつく前に、鳥に襲われるもの、海に入ってから大きな魚に飲み込まれるもの、それらを考えると、たくさん生まれた卵から1人前のウミガメになるのは、ほんのひとにぎりということになるのだ。

最近では、人間の捨てたポリ袋のゴミなどを、大好物のクラゲと勘違いして飲み込み、窒息死するウミガメが増えているらしい。あるいは甲羅が高く売れるため人間に捕獲されるものもいる。

せっかく奇跡の確率で孵化し、海にたどり着き、数々の試練を乗り越えて大人に成長しても、そこでもまた人間のエゴのため、ウミガメたちは生存の危機にさらされるのだ。

最初の1匹が無事波打ち際にたどり着いた。

すると突然の波に飲まれて姿が消えてしまう。ゲストはみな一瞬不安な表情になる。でもすぐ沖のほうでぷかと浮かび上がり、わたしたちに元気な姿を見せてくれた。それから悠々と大海原へ泳ぎだす。

よかったーー、元気でな!キミの人生に幸多からんことを祈って!

こどもたちと見つめるその海の先に、今日もおだやかに夕日が沈んでいった。

赤ちゃんを見送るゲストたち

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