大ピンチ!時間前にフェリーが動き出し置いてきぼりになるわたしたち家族
待ち合わせの時間
電車の時間や人との待ち合わせに、5分くらい遅れてくる人もいれば30分前には着いてる人もいる。沖縄の人は5時の待ち合わせと言ったら5時59分までが許容範囲らしい(間違ってたらごめんなさい)。わたしはどうかというと、早すぎもせず遅れもせず、ジャスト時間通りに行くタイプ。
海岸通のピッツェリアで食事を終えわたしたちが港に戻ってきたのは、午後7時40分くらいだった。フェリーの出向時刻は午後8時なので、わたしにしてみれば、ずいぶん慎重に時間より早く着いたことになる。
もしかしたら今日のクルーは気まぐれで、「ちょっと早いけどもう行っちゃおう、行っちゃおう」なんて定刻より前に出発されちゃったらエライことになるからね。
大ピンチ!フェリーが動き出す
港のフェリー乗り場へ戻って、わたしたちは違和感を覚えた。
さっきフェリーを降りた時と様子が違うぞ。
次の瞬間、ことの重大性が飲み込め体が凍りつく。フェリーに乗り降りするタラップ階段がない!
跡形もなくなくなっちゃってる!ええ~!あれがないとフェリーに乗れないぞー!これはやられた。定刻より20分も前に戻ってきたのに、もうフェリーは出航体勢に入っているのだ。ピ~ンチ!
いったい何があったの?!いやいやあせってはいかん。
このままでは、人は置いてきぼり、荷物だけシチリアへ、という冗談みたいな結末になっちゃう。
まずは落ち着こうオレ、ひつじが1匹、ひつじが2匹、って違うだろう。う~ん、何かいいアイディアはないか、、、
そうだ!これはフェリーだから、たしか船の最後尾に自動車専用の入り口があったはず。あそこならもしかしたらまだ開いてるんじゃないか?
急げ!!
ことは一刻を争う。わたしたちはいっせいに走りだした。急げ!こうしている間にも自動車専用の入り口が閉まってしまうかもしれない。
フェリーの船体に沿って息を切らし走りながら、このフェリーなんて長いんだろうと思う。走っても走っても最後尾が見えてこない。あーもう走れない、と思ったとき、みんなより先にフェリーの最後尾に着いたカイが
「あー閉まっちゃう!閉まっちゃう!みんな早くー」と叫ぶ。
なにー、それは大変。残っている最後の力を振り絞って、あと20メートル、10メートル、5メートル、なんとかフェリーの最後尾に着いたら、自動車専用の跳ね橋みたいな入り口は今まさに閉じようとしていた。
いかーん!
「急いで船に飛び移れ!」
大声で叫ぶわたしの言葉を聞いてママとカイがジャーンプ。それを見てまわりにいたスタッフがびっくり仰天!日本人なんて無茶をするんだ、と怒鳴りながら走り寄ってくる。
しかしわたしたちにはもう選択の余地はない。静止しようとわたしめがけて駆け寄ってくるイタリア人たちを振り切り、リュウを脇に抱えて、いちにのさーん、それ、ジャ~ンプ!
飛べたか?落ちたか?おお、やりました、ちゃんとフェリーに飛び乗れてる。間一髪!ぎりぎりセーフ!
いや、しかし何だってこんなミッションインポッシブルスリーみたいなスリル満点のアクションしなくちゃいかんの?
少しずつ離れていく岸壁に目をやると、わたしたちのドタバタ劇を見ていた人たちが、笑いながら拍手してる。
「ブラボー!」「ブラボー!」
えっ、ブラボーなの?これって。よくわからん。
その後ろで、ライトアップされたヌオーヴォ城が、ナポリの黄昏の空に鮮やかにうかび上がっていた。
ナポリの黄昏の空にうかび上がるヌオーヴォ城