大人もはまるヤドカリランド遊び
イランジャに来て思ったのだが、この島はヤドカリが多い。南の島へ行けばヤドカリなんてたくさんいてあたりまえなんだが、ここはそのレベルを超越している。も~道端にもビーチにも植栽の中にもごろごろいるのだ。あんまりたくさんいるので、捕まえてかごの中に入れていく。そのうちかなりの数になってきた。よ~し、こうなりゃいっちょうみんなでヤドカリランドを作ろうかぁーー!
ヤドカリランドを建設する
イランジャロッジの客室は1棟独立タイプのヴィラで、部屋のまわりはプライベートガーデン、部屋の前はプライベートビーチになっている。そのテラスのすぐ下の浜辺に、夢のテーマパーク、ヤドカリランドの建設が始まった。
浜辺に落ちている流木や大きな石を集めてくる。それで壁を作り、その中にヤドカリを放し飼いにするのだ。ひゃぁ~~楽しそう!こどもたちもどんなものができるんだろうと目をらんらんと輝かせて手伝っている。
わたしが小学生の頃、よく学校の門のところで、ひよこやらカブトムシやらが売られていた。ごくたまーにヤドカリが売られていることがあって、そのあまりの珍しさについ買ってしまったことがある。でも家で飼うといってもせいぜい虫かごとか洗面器。それも1匹か2匹。それがここでは大相撲の土俵くらい大きなヤドカリランドを作って、捕まえた60匹近いヤドカリを放し飼いにできるのだ。ふっふっふ、すごい構想だろう、スケールが違うぜ。って誰に何を自慢してるんですかーー。
捕まえたヤドカリはこの中に入っているよ / 何匹いるか数えてみよう
強烈な日差しの中で、重い流木や石を運んで積み重ねていくのは思ったより重労働だ。汗まみれ砂まみれになりながらもせっせと働いていると、テラスで読書をしていたママがひょいと上から顔をのぞかせ「ねえ、そんなことして楽しい?」と聞いてくる。
「男の子はこんなことこそ楽しんだよ!」
悪戦苦闘の末、わたしとこどもたちで作ったヤドカリランドがなんとかかんとかついに完成!やった~、さっそくヤドカリを放そう!
カイが部屋からヤドカリを入れてあるかごを持ってくる。リュウも「オレもいっしょに取ってくる」と言って走りだしたら、ヤドカリランドの壁につっかかって転ぶ。それでせっかく作った壁の一部が崩壊してしまった。それを見たカイが「お前、何こわしてんだよ!」と怒る。リュウは立ち上がって「転んだだけだよ」と喧嘩が始まる。まーまーまー、こんなもんすぐ治るからと壁を作り直すわたし。
さあ、今度こそ気を取り直して、放出タ~イム!
いっせいに60匹のヤドカリが放出されました。右へ行くもの、左へ行くもの、その場でじっと動かないもの。様々です。でも時間が経つと結局みんな壁をよじのぼって脱出しようとする。けしからん!人がせっかく作ったヤドカリランドから脱出するなんて!いったいどこが気に入らないと言うのだ!
枝に登って降りてこないヤドカリたち
脱出したヤドカリを捕まえては壁の中に戻す。その作業を続けているうちに、あることに気がついた。それは脱出しようとするヤドカリは皆、海とは反対側の壁をよじ登っているということだ。それでふと思い立って木の枝をランドの中央に突き立ててみた。するとたくさんのヤドカリがその枝に登り始めたのだ。もしかして壁をよじ登っていたヤドカリたちも脱出しようとしてたのではなく、別の理由があるのではないか?枝に登ったヤドカリはそこから降りてこようとしない。
「これ、なんでだと思う?」
こどもたちに聞いてみた。
「う~ん、木登りが好きだから」
「いや、それはお前だろう」
「わかった、波が怖いんじゃないの?」
そうか、すごい、そうだよ、カイ。きっと潮が満ちてくるとこのへんも海になっちゃうんじゃないかな。だからヤドカリは高い所に登ろうとしているんだ。
次の朝起きてヤドカリランドを見たら、全部波にさらわれて跡形もなくなっていました。
ああ、ヤドカリ溺れちゃた?
だいじょうぶ、パパが夜、枝ごと高い場所に移しておいた。
潮の満ち引きと、それを察するヤドカリの知恵、たくさんの発見があったヤドカリランド遊びでした。