アフリカ一の絶景ビーチ!文明社会からもっとも遠い村につながる海に浮かぶ砂の回廊

2019年3月5日

アフリカ一の絶景ビーチ

幻の砂の回廊ハイキング

ノシイランジャは北島と南島の、2つの島からできている。私たちがいる南島は、砂とヤシの木だけの、絵に書いたような南の島。ここにはイランジャロッジがあるのみ。一方、北島のほうには小高い丘があって、南島と比べるとかなり大きい。漁村があり、現地の人々が暮らしている。

干潮時には、2つの島の間に海中から真っ白な砂州が浮かび上がり、歩いて渡ることがでる。その光景はこの世のものとは思えないくらい美しく、マダガスカルを紹介するパンフレットやビデオにもたびたび登場する。ビーチではまさにアフリカ一の絶景と言えるだろう。そしてこの砂州を歩いて渡るハイキングは、ノシイランジャで体験すべき最も貴重なイベントと言える。

砂州の長さはおよそ1.5km。干潮の始まりと、ピーク、終わりの時間は、ダイビングセンターの黒板に毎日書き出されるので、それを目安にハイキングをしよう。自分たちの足で歩いていけるので、宿泊者には無料のエクスカーションだ。

ちなみにノシベ本島の各リゾートから、この砂州を訪れるツアーが組まれている。ノシベ本島からの所要時間はスピードボートで片道1時間半。砂州を歩いたり、北島に滞在してビーチで泳いだり、島周辺のポイントでスノーケルをするといった内容だ。通常ツアーにはランチも含まれており、ビーチの木陰に設けてあるピクニックテーブルで、楽しく食事をいただくことができる。

砂の回廊の写真

             ここから向こうの島まで、干潮時には砂の道でつながる

今日の干潮のピークは午後3時。今、午後2時を少し過ぎたところだから、ゆっくり歩いて行っても、再び潮が満ちてきて砂の道が海中に没するまでには、余裕で戻って来られるね。じゃあ、お昼食べ終わったら出発しようかーー。リュウは体調が完全に復活したので、いっしょに行くと言う。カイももちろん行く気満々。一方、ママは暑いから部屋でごろごろしてるって。えーーまた~~?なんかママ、イランジャに来てからごろごろばかりしてない?でも、無理やり連れて行って、シチリアでエトナ山に登った時みたいに日射病になっても大変だし。部屋でゆっくり帰りを待っててもらうことにしましょう。

イランジャロッジがある南島の一番北側には、東屋みたいな建物があって、ソファーとテーブルが置かれている。そこから対岸の北島を望むことができ、引き潮が始まった今は、うっすらと砂の道が浮き上がって、それが向こうの北島まで続いているのが見える。おお~~、スバラシイ眺めだ!今からこの魔法のような砂の道を歩いて行くんだな。

「ママ、じゃあね」

「おれたちのことカメラで撮ってね」

準備はいいか?いざしゅっぱ~~つ!

コチラ側でお留守番するママに別れを告げて、こどもたちと砂の道に足を踏み出した。

砂の回廊を歩く子ども達

                潮の引き始めはまだ砂の道は水の中

まだ引き潮が始まったばかりで、水は完全には引いていないので、所々道が水没している。といっても水深は10センチもなく、そういうところを歩くのが、こどもたちはすごく楽しそう。ところが歩き始めは元気だったこどもたちだが、しばらくするとあきてきた様子。北の島はすぐそこに見えているのだが、歩いても歩いてもなかなか近づいている感覚がないもどかしさがある。それに砂に足を取られ、ちょっと進むのも思ったより体力がいるぞ。想像以上にアップダウンもあり、さらにこの灼熱の日差しだ。

水分だけはいっぱい持ってきてよかったね。

この世のものとは思えない景色

もうちょっとで北の島に到着という所で、砂州に囲まれた天然のプールのような場所を発見。想像力を総動員して遊ぶと、いろんなことができて、こどもたちには楽しそうな所だ。わたしは北の島に行って、丘を登り、2つの島がつながっている部分の景色を見たいだけなのだが、それはきっとこどもたちには退屈なことだろう。

「パパはこれからあの山の頂上まで登ってくるけど、おまえたちはどうする?ここで遊んで待ってる?」

カイはどっちにも関心を示したが、リュウはもうこれ以上暑い中を歩くのはいやだと言う。この楽しそうな天然のプールで遊んで待っていたいと。じゃあ、カイもいっしょに待ってろ、ということでここから先はわたし1人で行くことにした。

	 天然のプールで遊ぶこどもたち

                  天然のプールで遊ぶこどもたち

こどもたちとも分かれてさらに進む。そしてとうとう北の島に上陸。その途端、わたしはタイムスリップしたのではないかと自分の目を疑った。畑の間に茅葺き屋根の素朴な建物が点在する集落がそこにあった。今が18世紀だと言われても違和感がない。まるで映画のセットに迷い込んだような村だ。

この村から一番近い町はノシベ本島にあり、スピードボートでも1時間半、村の人々の船だと、半日以上かかるだろう。その意味でこの村もまた、地球上でもっとも孤独な村、いや文明社会から遠く離れた村、そして天国に一番近い村だ。

この村にも、今までのマダガスカル旅行で見て来た村々と同じように、電気もガスも水道もなく、もう何百年も昔から何も変わらない生活を、村人たちはおくっているに違いない。

村の入り口で出会った少女

                                             村で出会った少女 / ここで小道は二手に分かれる

村の東側には大きく湾曲したビーチがある。そのビーチに沿って歩いて行き、一番奥の突き当たりを左に折れて村の中に入っていく。

村の様子を写真におさめながら小道を進んで行くと、やがて登り坂になり、その先は村の北側にそびえる、この北の島で一番高い山へ続いてゆく。集落の屋根の高さまで登った所で、ぐーんと180度旋回し、さらに進むと大きな木の幹のところで、道は2手に分かれていた。右に進むとそのまま山の尾根づたいに頂上の灯台がある頂につながっている。左に進むと道はさらに細くなり、畑の間を縫うように登ってゆく。傾斜はこちらのほうがきつい。畑の一番上まで登ったところで振り返ると、南の島と砂州がつながった絵ハガキような景色が広がっていた。

わたしはこのあと、島の高台をくまなく調べたが、砂州と南の島を望めるポイントはここだけしかないと思う。他の場所からは覆い茂る木々が視界を遮るので眺望は得られない。

わたしがこのビューポイントに到着したのは、ちょうど午後3時。干潮のピークの時間だった。わたしが撮影した写真を見てお気づきと思うが、干潮のピークでは海上に現れる砂州の部分が多過ぎて、あまり「いい写真」にはならない。海の中に現れるはかなくか細い1本道の風景を撮りたかったら、干潮の初期に大急ぎでコチラ側に来るか、砂州が消えるぎりぎりまでここで粘るのがいいだろう。戻れなくても保証はしませんが(笑)

しばらく、このスバラシイ景色をしっかり瞳に焼き付けて、それから山を降り始める。

イランジャ、幻の砂の道。写真を撮るならもっと潮が満ちているほうがいい

村まで降りてビーチのよこを抜けると、目の前に砂州が現れ、こどもたちは天然のプールで楽しそうに遊んでいた。まるで今まで時間が止まっていて、わたし1人が、時が止まった世界で山の中を彷徨っていたかのような、不思議な感覚がした。

「パパ、どこまで行ってたの?」カイがわたしに気づいて質問する。

「あそこに見えるあの山の頂上だよ」

「何があったの?」

「何もないけど、この砂の道や南の島がよく見えて、すごいいい景色だったよ」

「ふ~~ん、おれも行きたかったな」

それから3人で手をつなぎながら、蜃気楼のような砂の道を歩いて帰る。南島が近づいてくると、岬の先端で誰かが大きく手を振っているのが見えた。

「あ、ママだ!」

そのかけ声を合図に、空と海の青が解け合う風を切って、みんないっせいに駆け出した。

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