ラグーサへのドライブ中に立ち寄ったレストランで
シラクーサ県とラグーサ県の境界。赤い斜線は「終わり」を意味している
ラグーサへ
次の朝、ママはやっぱり体調が悪いみたい。どうらや軽い日射病にかかったようだ。
わたしとこどもたちで朝食を作り、その後プールで遊ぶ。いつもならのんびりこどもたちの無邪気に遊ぶ姿を眺めているのだが、今日はどうも落ち着かない。シチリアで過ごす日も今日を入れてあと3日。ママの体調の不安と、旅の残りが少なくなってきた寂しさとあせりが、さらに「そこへ行きたい」という気持ち後押ししていた。
「具合はどう?」
部屋に戻ってママにたずねる。
「うん、昨日よりはだいぶいいみたい。でも今日はどこにも出かけたくないな」
「あの、、、おれ、ラグーサに行きたいんだけど。今日行かないともう行ける日がないかもしれない」
「いいよ。行ってきたら。わたしは観光するの好きじゃないし」
「じゃあこどもたち連れて行くからゆっくりしてな」
「うん、でもリュウは行きたがらなかったら置いて行ってもいいよ」
こどもたちに尋ねると、リュウはやっぱりプールで遊んでいたいって。それでカイと2人で出かけることになった。この旅の本当の目的地、ラグーサへ。
快適なシチリアのドライブ。道の脇に車を止めて写真を撮る/牛が出ますよ~/ランダバウト
ちびっ子ナビゲーター
いつもはママが助手席に座って、地図と道路標識をにらめっこしながら大切なナビゲーター役を務めている。ママがいない今日は、カイがその大役をつとめる。大丈夫~?でもそんな心配をよそに「そこ右」とか「次左」とか的確に指示を出すカイ。おお、こりゃーママより頼りになるぞ。
こんなところに突然レストランがあった
レストラン発見
シラクーサ県からラグーサ県にかけての地形は、高原のような台地が果てしなく広がる見晴らしのいい土地。ところどころ深くえぐれた谷があり、道路はその谷を見下ろすように、台地の端をくねくねうねりながら伸びている。のんびり遠くの景色を見ながら進んでいると、突然左手に農園風レストランが現れた。
駐車場には車が数台、それに大型バスまで止まっている。
ちょうどお腹もすいたし、この先にレストランがあるかわからないから、ここで食べて行こうか。こんなに車が止まっているってことは、きっと美味しいに違いないよ~。
こんなところで日本人とご対面
「あのバスで来てるの日本人だと思うよ」とカイが言う。
「おいおい、いくらなんでもそんな思いつきでモノを言っちゃいけない。こんなへんぴな場所に日本人が来るはずないだろー」
と言いながらレストランのドアを開けた瞬間、
わたしのほうが思いつきという言葉を撤回しなければならなくなった。
入り口付近の正面のテーブルで、10人くらいの日本人グループが食事をしていたのだ。
え?今の何?
こんなところで日本人を見てびっくりしたわたしは、気が動転してしまい、なぜか一旦ドアをバタンと閉めた。一呼吸してからもう一度そおっとドアを開けてみる。ああ、やっぱりいる、日本人だ!。その日本人グループのほうも、まさかこんなどこだかわからないへんぴな場所で、日本人親子がドアを開けて入ってきたので、宇宙人にでも出会ったような顔をして驚いている。そのうえドアを閉めたり、またそ~っと開けたり。
「え、やっぱ日本人のかたですか~?」
「え~どうしてこんなところに」
「ところでさっきからドアで何してはるんですか?」
その後、お互いのいきさつを話しあう。このかたたちは大阪から、南イタリア周遊旅行に参加しているグループ。てっきりみなさんお知り合いなのかと思ったら、たまたまこのツアーで一緒になっただけなんだって。今日はシラクーサからアグリジェントへ移動する日で、途中にあるこのアグリツーリズモのレストランで休憩しているらしい。よく見たら、少し離れたテーブルに、添乗員のお姉さんとバスの運転手さんもいらっしゃる。それにしてもこの人数であの大型バスなんて、すごいリッチですね。
食事はパスタとサラダ、パン、デザートと飲み物。パスタは豚肉とトマトソースのラザニア風パスタで、この地方の名物料理らしい。なかなかボリュームもあって美味しい。さて、お腹もいっぱいになったので、大阪の人たちにお別れを言って、ラグーサまでもう一走り。
車に戻り、カイのナビゲート、かげろうゆらめくシチリアの大地を、エンジン全開で風のように突っ走った。
データ
アグリツーリズモ/FATTORIA GIANNAVI`
TEL 0931-881776