ポートサイドに上陸〜露店で帽子を買った時の日本ではあり得ないやり取り

2019年2月22日

あれ、、、? 船が揺れていない!

急いで窓の外を見る。真っ暗というより群青にかわりつつある空と海の色が、夜明けが近いことを知らせている。

そしてそのダークブルーのキャンバスには、船の灯りではない、おそらく町の灯り、が点灯している。

灯りは海面にも無数に反射して、空より海のほうが明るい。

どうやらエジプト/ポートサイドに到着したようだ。

ポートサイドに上陸

ポートサイドに到着

時計を見ると午前5時。

わたしたちが寝ている間にも、船は人知れず星空の海をすすみ、夜の静寂ごとエジプトまでわたしたちを運んできてくれた。それを思うとこのブルーモナーク号がとてもいとおしく思える。

クルーズ最初の寄港地、ポートサイドは、エジプトの首都カイロ北東約200kmに位置する国際港湾都市。スエズ運河の地中海側入口となる港でもある。人口は約50万人、カイロ、アレクサンドリアに次ぐエジプト第3の都市だ。しかしカイロやアレクサンドリアに比べると町の歴史はずっと新しく、1859年にスエズ運河の建設基地として作られたのが始まり。ポートサイドという名前は、当時のエジプト総督サイード・パシャにちなんで命名された。「サイド」は港のそばではなく、「サイードさん」という名前からきてたんですね。

運河完成後は、スエズ運河会社の所在地として発展し、造船などの工業もおこり、エジプトを代表する都市として成長した。しかし1967年6月、第三次中東戦争によるイスラエル軍の攻撃で戦災を受け、運河も閉鎖される。さらに運河の東岸がイスラエル占領地となり市の復興の見通しもたたなかったが、1974年にイスラエル軍が撤退すると、75年に運河も再開して市の再建が始まった。

「さあエジプトに着いたぞーー!みんな起きよー」

2組の2段ベッドが空間のほとんどを占める船室の灯りをつけると、子供たちの寝顔がライトに照らされ、まぶしそうに身体をくねらせる。

「エジプトに着いたの?」

隣のベッドの上段に寝ているカイが最初に口をひらいた。

「着いたみたいだよ」

「やったーー、ついにピラミッドが見れるね」

下段から今度はリュウの声。

「ママは?」

「まだ寝てるんじゃない?」

みんなで覗き込むと

「起きてるよ!朝からぎゃーぎゃーうるせーな」

と今日も威勢のいい声。

では朝食をいただきに参りましょうか、確か今朝は早かったな、と思いながら窓際にたたんでおいた船内新聞を広げる。船内新聞にはその日の食事の時間や夕食時のドレスコード、エクスカーションの集合場所などの情報が掲載されている。うまく読みこなせば、初めてのクルーズでもじゅうぶん楽しむことができるのだ。

「げっ!朝食、5時半からだよ、そしてエクスカーションの集合が6時半になっている。もう行かなきゃ」

それはタイヘンと、みんなでベッドから飛び出し、朝食会場がある屋上デッキへ向かうのだった。

   東の空が明るくなってゆく / このタラップを降りたらエジプトだーー / クルーズ船用の入国管理事務所

エクスカーション

「おお~~エジプトだ」

デッキに上がると船が大きな埠頭に横付けになっているのがわかった。その埠頭ではすでに、人や車がせわしなく動き始めている。どこの国でも港の朝は早い。デッキから見下ろす町の風景は、イメージしていたより近代的で、エジプトではないどこか別の国に来たように見える。振り向くと町と反対側の空が、薄紫にぼんやり光っている。その方角が東なのだろうか?きっと今頃日本では、同じ陽光を夕日として見ているのだろう。

海側のテーブルに陣取り、みんなでビュッフェの朝食をいただく。濃いめのコーヒーをすすっている間にも、空は次第に白々しく明けてきて、町の様子がはっきりわかるようになってきた。誰かに肩をさすられたような、ささやかな風がそよいでいた。

食事が終わって、エクスカーションの集合場所であるラウンジへ移動する。おそらく乗客のほぼ全員が、今日のエジプトツアーに参加するのだろう。説明会場となっているラウンジは、収集がつかないほど大勢の人でごった返していた。そして誰もが一刻も早くエジプトの地を踏みたいと気迫のオーラを放っている。

責任者らしき人がマイクをもって何か説明しているが、会場のあまりの熱気とざわめきによって、水滴が蒸発するように声が途中で意味のある言葉でなくなってしまう。

「え、何言ってるの?ぜんぜんわかんないよ」

かと言って会場の中へ進むこともできないので、なかばあきらめた心境で立っていると、いくつかのグループが船の出口のほうへ移動し始めた。ひとつのグループが移動すると、また別のグループが移動する。そうやってじょじょに会場から人がいなくなって行く。

わかった!

マイクを持って説明している人は、英語をしゃべってはいないのだ!クルーズの上陸エクスカーションは、いくつかの言語ごとにグループ分けされていて、観光も言語ごとのグループでおこなう。ここではギリシャ語のグループが最大で、まずその人たちむけにツアーの詳細を説明していたのだ。もちろんギリシャ語で。何を言っているのか聞こえないと思っていたのは、ギリシャ語で説明していたからだった。あはは、そりゃーわかるわけないよ~~。

で、ギリシャ語グループが全員いなくなったら、今度はドイツ語での説明が始まる。そして次がスペイン語、その次がイタリア語。英語ツアーは一番人数が少なくて、最後のおまけのような扱いだった。

ポートサイドに上陸した子ども達

     とりあえず前の人についてゆく / とりあえず写真を1枚 / とりあえずこんなのも撮っておこう

入国

説明が終わり、名前を呼ばれたらパスポートを受け取る。

パスポートにはすでにエジプトビザのスタンプが押してあった。へぇ~~、エクスカーションの参加の申し込みをするだけで、ここまでやってくれるなんて便利だね。

パスポートを持って、船の出口で並ぶと、エジプトの入国管理官が乗船してきて、1人1人をチェックする。と言っても形式的なものですぐに終了。

「行ってよし」の合図に、わーっと船を出て階段状のタラップを降りる。

さあこれでいよいよ本当にエジプトに上陸だ。

          いきなり物売りがあらわれてびっくり!

ポートサイドの露店

タラップを降りたところは埠頭の岸壁の上。そのコンクリートの地面を少し進むと、突然、土産物がずらりと並ぶ通路になった。物売りが通路の両側に立っていて、民芸品やらバッグやらを差し出して大声をで叫んでいる。すごい活気というか殺気だ。

「うひょぉ~~、いきなりこれかよ、船を1歩降りたとたんすごいことになっているね」

その中に帽子を売っている人を見つけた。ちょびひげ顔のちょっとあやしいおじさんだ。リュウの帽子がないから安ければ買おうか、とママ。おじさんが手に持っている帽子を指さして、それはいくらですか?と尋ねる。

「1つ2ユーロ」との答え。

ピラミッドとラクダの絵が着いて、エジプトと書かれた文字もある。

「これが2ユーロなら悪くないんじゃない」

「そうだね、じゃあそれ1つ下さい」とわたしが帽子を受け取ろうとすると、おじさんは「じゃあ3ユーロだ」と言う。

あまりにもさりげなく当たり前のように言うのでつい

「ああ、あはは、なんだ、3ユーロなんですね。ではそれでお願いします」とつられて言っちゃいそうになる。あぶねぇ~~

ちょっと買う気を見せただけでいきなり値段をつり上げるなんて、やるじゃないか。

ぐっとこらえて「3ユーロならいらない!」と強気で突っぱねると

「仕方ない、それなら2ユーロで売ってやるよ、このケチケチ男め!

みたいな感じで代金を受け取るおじさん。買い物してお客さんなのにこっちが何か悪い事したみたいでシュンとなる。いや~~いきなり強烈な商慣習に遭遇しましたね。日本じゃ絶対あり得ない、でも、楽しいよ、これだから旅行はやめられない。

物売りでごったがえす通路を抜けたらまた建物に入った。そこは手荷物検査場で、そこを抜けるとと本当にエジプト上陸だ。

ポートサイからカイロまでは、バスでおよそ3時間。

さあ、ではピラミッドがあるギザへ出発じゃぁ~~!帽子も買ったし。

カイロ行きのバス

        ではバスに乗ってピラミッドへGO!