ペルー子連れ旅行記〜オリャンタイタンボ・ペルーレイル・ビスタドーム号編
オリャンタイタンボ駅のホームに停車する列車
ペルー子連れ旅行(長男中1、次男小4)滞在5日目。早朝ウルバンバのホテルをチェクアウトし送迎車でオリャンタイタンボ駅へ移動します。ここからペルーレイルでいよいよ旅行のハイライト・マチュピチュを目指します。
オリャンタイタンボ駅と遺跡への行き方
「おはようござます」ウルバンバのホテルで朝食をすませ、部屋を片付けてロビーへ向かうと、お迎えのスタッフが待っていました。「準備がよろしければ出発しましょう。これからオリャンタイタンボ駅までみなさんをお送りします」
チェックアウトの手続きをして、エントランス前に止めてある送迎車に乗り込みます。時刻は早朝6時半。川のせせらぎと小鳥のさえずりを追い越し、わたしたちを乗せたミニバンは朝靄につつまれたウルバンバの谷を駆け抜けます。日本の山あいの村にタイムスリップしたような景色の中を走る事およそ30分、わたしたちはマチュピチュ行きの列車が出発するオリャンタイタンボに到着しました。
オリャンタイタンボ遺跡
クスコの北西に位置するオリャンタイタンボは、インカの聖なる谷に点在する遺跡の中でも、マチュピチュを凌ぐ大規模な遺跡が存在することで近年注目を集めています。またクスコより標高が低い事、マチュピチュに近いことから、マチュピチュへ向かう観光客が前泊する宿泊地としても脚光を浴びています。特に、クスコ~オリャンタイタンボ間の路線が、異常気象による豪雨でたびたび土砂崩れに見舞われ運行不能になることから、前日にオリャンタイタンボまで移動するようにすすめるツアー会社も増えています。
そのためインカ時代からほとんど変わらぬのどかな風景だったオリャンタイタンボ村に、外国人観光客向けのオシャレなレストランやホテルが林立しみやげ物店が軒を連ねるようになりました。ちなみに「タンボ」はインカの公用語であるケチュア語で「宿」という意味です。インカ時代から交通の要所であり大規模な要塞が築かれていました。
スペイン軍とピサロによってインカ皇帝アタワルパが処刑され帝国が滅亡した3年後の1536年、マンコ・インカ・ユパンキ率いるインカ軍が反乱を起こしオリャンタイタンボ要塞でスペイン軍を撃退したことは有名な史実です。150mの高低差がある急斜面に築かれた要塞は、強固な守りを誇りスペイン軍といえども攻略するとはできませんでした。しかしその後マンコ・ユパンキはオリャンタイタンボを放棄し、さらに奥地のビルカバンバに身を潜めてしまいまいます。
インカ軍が去ったあと、スペイン軍はオリャンタイタンボの神殿など主要施設を破壊したため、現在は土台となる石組みなどの残骸しか残っていません。その中で太陽神殿の一部と考えられている6個の巨石は、オリャタイタンボ遺跡観光のハイライトと言える存在でしょう。
巨石のひとつにはチチカカ湖畔にあるティワナク遺跡で見られるのと同様なジグザグの菱形模様が描かれています。巨石の高さは4m、幅10m、重さは1つ80トンと推定されていますが、ウルバンバ川の対岸の石切り場から切り出し、川を渡して、さらに150mもの急斜面をどのような手段を用いて引き上げたのでしょうか?鉄器も車輪ももちろんクレーンのような重機も持たなかったインカ文明の謎を間近で体感することができる遺跡です。
*開場7:00-18:00 無休 クスコ周遊入場券が必要
オリャンタイタンボへの行き方
わたしたちはクスコから旅行会社の送迎車でウルバンバへ移動し、1泊して、翌朝再び送迎車でオリャンタイタンボへ送ってもらいました。
定期バスはクルスデルスール社がクスコ~オリャンタイタンボ間を1日3便運行しています。料金は20ソル。一方、乗り合いバス/コレクティーボの料金は12~15ソルですが、人数が集まらないと出発しないため時間の制約がある観光客には向いていません。
タクシーの料金はおよそ60ソルです。3人以上の家族連れであればタクシーや旅行会社の送迎車を利用したほうが便利なうえ安上がりと言えるでしょう。クスコ~オリャンタイタンボ間の所要時間は1時間45分~2時間です。
上の写真は送迎車を降りて今来た道を振り返って撮影した写真です。朝靄にかすんでいる方角にオリャンタイタンボ遺跡があります。中国の山水画の景色のような山が印象的です。
駐車場を出たところには早朝にもかかわらずたくさんの露店がオープンしていました。
オリャンタイタンボ駅はこの先のようです。ちょっとお店をのぞいて行きたい気もしますが、列車の時間があるので残念です。
オリャンタイタンボ駅
道の突き当たりに緑色のゲートがあってその中が駅のようです。送迎車のおじさんはここから先には入れません。ゲートの入り口には駅員さんが立っていて列車のチケットを確認します。
「では気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとう!」
送迎車のおじさんに見送られて駅の中へ進みます。すぐそこまで急斜面の山肌が迫るホームには、テレビで見た事のあるマチュピチュ行きの列車が出発の準備を整えて停車していました。でもそれは勘違いでわたしたちが乗るのはこの後来る別の列車のようです。
どきどき興奮を押さえられないまま、オリャンタイタンボ駅のホームで列車の到着を待つのでした。
マチュピチュへの行き方
クスコからマチュピチュへ行く方法をもう一度整理しておきましょう。移動手段としては、1)列車、2)バス+徒歩、3)全行程徒歩、4)全行程自転車の4通りがあります。
1)列車
クスコ~マチュピチュ間は、ペルーレイル、インカレイル、アンディアンレイルの3社が運行しています。サービスや運行時間に大きな差はありませんが、料金的にはペルーレイルがやや高めです。その分信頼度も高いようです。
乗車駅はクスコ/ポロイ、オリャンタイタンボの2駅。クスコ市内からポロイ駅まで車でおよそ20分、オリャンタイタンボ駅まで車でおよそ2時間。クスコ市内から乗車駅までの移動手段は、コレクティーボ、タクシー、ツアー会社の送迎車です。
列車には、上級、中級、エコノミーの3クラスあります。料金の目安は一番安いエコノミークラスで、クスコ~マチュピチュ往復およそ10000円~です。ハイシーズンになるともっと高くなります。これにクスコ市内からそれぞれの乗車駅までの移動料金がかかります。
所要時間はクスコ~マチュピチュ3時間半、オリャンタイタンボ~マチュピチュ1時間半です。
2)バス+徒歩
クスコ市内>水力発電所>徒歩
料金の目安は片道1200円程度。
所要時間は片道9時間半(そのうち徒歩の区間は10kmで所要時間は2時間半~3時間)程度です。
クスコから水力発電所までのバスのチケットはクスコ市内のツアー会社で購入できます。コレクティーボでも行けますが2~3回乗換えるうえ料金的にもかえって高くなるケースがあります。
3)全行程徒歩
クスコ~マチュピチュの距離はおよそ104kmです。
時速5kmで50km10時間の計算だと、途中のオリャンタイタンボで1泊すれば、2日間20時間歩けばただでマチュピチュへ行けます(笑)。お子さんが中学生以上で健脚ならいい思い出になると思います。
あるいは、クスコからオリャンタイタンボまでコレクティーボ、タクシーなど移動して1泊し、オリャンタイタンボ~マチュピチュの50kmを歩く、という方法もあります。所要時間は10時間くらいでしょうか。50kmとえばフルマラソンの距離に少し足したくらいですから走ってみてもいいかもしれません。まあ荷物を背負ってということになりますし、高所なので、かなりきついとは思いますが。
またインカ道をトレッキングで移動する方法もあります。入場制限があるのと、ガイド付きツアーでないと歩けないので、料金的には高くなります。トレッキングツアーは5時間コースから3泊4日コースまで種類があり、最長の3泊4日コースで、およそ50kmの距離を歩きます。
4)全行程自転車
クスコ~マチュピチュ間は104kmなので、元気なチャリダーなら1日で走破できる距離です。ただしオリャンタイタンボから先はほとんど未舗装なのでロードバイクではタイヤがもたないかもしれません。さらに最後の8kmくらいは線路を進むので自転車をかついで行かなければなりません。
それでも「何かやってみたい」と野心に燃える人は挑戦してみる価値があると思いますよ(笑)。
最後に、「ええ、聞いてないよ~」とならないために補足説明。ここで説明してきた「マチュピチュ」とは「マチュピチュ村」のことです。マチュピチュ村からマチュピチュ遺跡までは、専用シャトルバスで往復20ドル、所要時間はおよそ30分かかります。
ペルーレイル
マチュピチュへの行き方を説明してきましたが、我が家は列車「ペルーレイル」で行きます。自転車やトレッキングは子ども達がもう少し大きくなってから再挑戦したいです。(*インカ道トレッキングツアーは人数制限があるため、早くから予約で埋まります)
さてオリャンタイタンボ駅に到着したのは午前7時過ぎ。列車の出発時刻まではまだ時間があるので、少し駅の様子を見てみましょう。ホームにはおしゃれなカフェがありました。
ホームをさらに奥のほうへ進むと待ち合い室があり、そこにもカフェがありました。
ショーケースに美味しそうなケーキやパンが並んでいてこどもたちはもの欲しそうに見ていましたが、さっき朝ごはん食べたばかりですから、何も買いませんよ~~。
ホームに列車が入ってきたので、「これかな?」と思って駅員さんに聞いてみたら「違う」と言われました。わたしたちが乗るのは7時45分発のペルーレイルです。この赤い列車は7時10分発のアンディアンレイルのようです。
ようやくわたしたちの乗るペルーレイルの列車が入線してきました。
ホームの先のほうに停車したので、追いかけます。
列車が到着するとどこからか人が大勢出て来ました。みなさんこの列車に乗車するようです。でもあんたたち今までどこにいらしたのぉ~~?
ホームの壁に「緑茶」という看板がありますが、日本人の方もたくさん来るんでしょうね。
列車のスタッフに乗車チケットを見せて、確認してもらいます。さあ、いよいよ出発です!
マチュピチュまでの車窓を楽しみましょう。
マチュピチュ列車のグレード・料金比較とビスタドーム号車窓からの写真
ビスタドーム号マチュピチュ行きの客車は天井部分にも窓があり標高が高いアンデスの山々の頂も見ることができる
マチュピチュ列車のグレード
ペルーレイルでマチュピチュへ行く列車は次の3タイプがあります。
エクスペディション号(バックパッカー)
往復およそ100ドル。3タイプの中で一番料金が安い。クスコ発は1日1本、オリャンタイタンボ発は1日6本。夜出発するのはエクスペディションのみ。
ビスタドーム号
往復およそ150ドル。客車天井にも窓がついた展望列車。クスコ発は1日2本、オリャンタイタンボ発は1日7本。
ハイラムビンガム号
往復およそ600ドルフルコースの食事がついた豪華列車。クスコ発1日1本のみ。
ビスタドーム号でGO!
オリャンタイタンボ駅からわたしたちが乗車したビスタドーム号は全席指定です。ところがわたしたち家族4人の席はばらばら。ありゃーーこれは困ったなーー。とりあえず客車に入って座席の近くへ行くと、他の乗客もなにやら交渉みたいなことをしています。
「ああーーみんな席がばらばらなので移動しえもらえないか話し合っているのね」
それでその輪の中に入り一緒に交渉することにしました。みんな国籍も年齢も性別も家族構成も違いますが、交渉する目的がひとつなので意外とあっさり解決し、私達家族は4人が通路を挟んで横一列に並ぶことができました。
出発してしばらくすると、朝食が配られました。お、、なんだ食事が付くんだ、さっきホテルで朝食バイキング思いっきり食べたから腹いっぱいだよ~~。こんなことなら少し余裕を残しておくべきだった、と悔やみましたが、せっかくなので食べました、って食べたのかよーー!
食事はフルーツ盛り合わせと焼きたてのパンのサンドイッチ、それにビスケットです。インカ織りのきれいなかごに入っているのが印象的でした。
車内の様子です。4人掛けの対面シートの座席がほとんどですが、わたしたちは前向きの2人掛けシートでした。
座席の前のテーブルを広げると食事や勉強をするのに便利です。
車窓からの写真
出発して間もない時の眺めです。赤茶けて乾燥した山肌には木がほとんど生えていません。
やがて高い山が現れてきました。列車の窓から見てるだけだとひょいと簡単に登れそうに見えますが、実際はとても険しい山なんでしょう。
おお~、ついに雪をいただく山も見えて来ました~。5000メートル級の山々が連なるアンデス山脈です。
進むに連れ緑が増えてきて、美しい桃源郷のような景色に変わりました。こんなところに住んだらどんな生活なんだろうかと想像します。
線路の横を流れるウルバンバ川です。よく見ると河原や水の中にレールが散らばっています。
2010年3月の洪水で線路が寸断されたためこの路線はしばらく不通だったのですが、2012年7月1日に復旧工事が完了し列車の運行が再開されました。
ところどころクレーン車やブルドーザーが修復作業をしています。そのため工事区間では列車がスピードを落としのろのろ運転になります。それにしも凄まじい水害だったんですね。
インカ道トレイル
インカ道のトレッキングルートです。ここの駅から約5時間のハイキングでマチュピチュの太陽門に行けます。ただしインカ道を歩く為にはあらかじめガイド付きの専門ツアーに申し込む必要があります。
インカ道トレッキングのスタート地点となる駅です。最長では3泊4日のコースもあります。
よく見ると対岸の山壁に沿ってインカ道が伸びているのがわかります。川のこちら岸の前方には遺跡も見えます。
マチュピチュ村に到着
周囲の緑がだんだん濃くなってきました。
出発地点であるオリャンタイタンボの標高はおよそ2800メートルですが、到着駅マチュピチュ村の標高は2000メートルです。800メートルも一気に下るわけですから、周囲の環境も様変わりになるわけですね
すっかりジャングルのような景色になってきたな~と思ったら、列車は速度を落とし、前方に目的地であるマチュピチュ村が見えてきました。途中の工事区間で速度を落として運転したため予定より30分くら遅れての到着となりました。