真夜中に賑わう不思議な町・世界遺産パラッツォロアクレイディの晩餐会

2019年3月15日2020年2月25日

世界遺産パラッツォロアクレイディの大聖堂前広場

1. オレのほうがイタリア人
2. こんなとこにも世界遺産って
3. 星間ドライブ
4. パラッツォロアクレイディのレストラン
5. もう一人のゲスト
6. 無口な男が口を開けば
7. 真夜中に賑わう商店街
8. Trattoria La Casareccia

オレのほうがイタリア人

今日はニコラの家族が夕食に招待してくれる日。楽しみ～♪待ち合わせは夜8時。イタリア人は時間にルーズというから、8時といってもどうせ8時半くらいだろうよ、とのんびりシャワーを浴びてくつろいでいた。

そしたらなんと、8時ちょうどにニコラのお父さんが部屋に呼びに来たじゃありませんかぁ～、えぇー！時間ぴったり？！ニコラのお父さん日本人みたい。っていうか、準備できてないオレだめジャン！おれのほうがてんでイタリア人だ。

　　　　　　　ニコラのお父さんに案内されてお店まで歩く。まるで映画のセットのような美しい町並み

こんなとこにも世界遺産って

今夜ディナーに出かけるのは、パラッツォロ・アクレイディ。アグリツーリズモがあるビビア村から、さらに島の内陸に20分くらい走った、まわりを急峻な谷に囲まれた岩山の頂にある町だ。

ほととんどの日本人が名前さえ知らないこんな小さな町でも

「世界遺産」都市だなんて、シチリア島は奥が深い。

星間ドライブ

アグリツーリズモを出ると、日はすっかり沈んでいて外は真っ暗闇。かすかに西のほうの空だけ紫色の光が残っている。

シチリア島内陸のこのあたりは標高が高く遠くまで見通せるので、はるか彼方の町の灯りがまるで星座のよう。それが本物の夜空に浮かぶ星座と重なって立体的に広がり、わたしたちは宇宙空間を小粋にドライブしてるみたいな、幻想的な気分になる。

パラッツォロアクレイディのレストラン

写真上の豆の煮込み料理みたいなのも実はパスタ。見た目からは想像できないくらい美味しい。ニコラの両親はこの店のオーナーと友達

町に着くとニコラのお父さんは例によって道端に路上駐車。車を降りて細い路地をすたすた登って行く。わたしたちも後をついて行くとライトアップされた広場に出た。ドゥオーモ広場だ。来週には、教会の扉が開いて誰かが戻って来るのを祝うお祭りがあるって言ってたから、日本のお盆みたいな感じなんだろうか。広場にはテーブルとイスが置かれたくさんの人たちがくつろいでいる。

広場から伸びる通りにも電飾されたアーチが続き光のトンネルのよう。広場を横切り別の細い路地へ入って行くと今日ディナーを食べるレストランがあった。

お店の名前は「トラットリア・ラ・カサレシア」。このあたりでは一番美味しいレストランだと言う。ニコラの両親はこのお店のオーナーとも友達のようだ。

もう一人のゲスト

実は今夜わたしたちの他にももう1人招待されているゲストがいる。バイクでシチリア島を1人でツーリングしているマルコだ。

マルコはトリノに住んでいてジェノヴァからフェリーにバイクを積んでシチリアへやって来た。わたしたちと同じアグリツーリズモに泊まっていて、ニコラのお父さんが「一緒に食事でも」と声をかけたのだ。

無口な男が口を開けば

レストランは入り口からは想像できないくらい広く、グループ用の小部屋がいくつもある。さすが評判なだけあって満員だ。

前菜は好きなものを自分で皿に盛るビュッフェ形式。そのあとスープにサラダにパスタ2品、肉料理2皿と、ものすごいボリューム。どれもシチリア島南東部の伝統的な田舎料理と言うが、クセがなくとても食べやすい。というか泣きたくなるほど美味しい。

マルコも多少お世辞が入ってるだろうが、トリノあたりの料理とは比べモノにならないくらい美味しいと言う。わたしみたいにおしゃべりな人間が美味しいと言ってもなんだか軽く聞こえてしまうが、マルコは1人旅してるだけあってものすごく無口。その無口なマルコがぼそぼそっと言うもんだから説得力ありますね。オレも少し無口になろうっと。

　　　　　　　　　　　　　いったい何時だと思ってんだぁー！真夜中すぎなのにこの人出

真夜中に賑わう商店街

もう食べられんっちゅーくらい料理を満喫して、お店を出て、少し町を散歩しようか。ニコラのお父さんが案合してくれるぞ。

それにしてもこんな時間なのにものすごい人出。シチリアの人は暑い日中は外出せず家で昼寝をする。だいたい4時間くらい寝るらしい。それで日中の町はひっそりしているのだ。人々が町に繰り出すのは夜。真夜中をすぎた頃がピークで、お店はどこも満員。中学生くらいの女の子のグループがジェラートをほおばっている。小さなこどもを連れた家族やカップルもいる。昼間なら日本でもふつうの光景だろうが、今、夜中の12時すぎですよ～。

こんな深夜にこんな光景が展開してるなんて、本当に世界にはいろんな国があるもんだなー。これだから海外旅行は面白い。

わたしたちは乾いた夜風に吹かれながら、しばしこの知られざる世界遺産の町を散策したのだった。