1日中陸地を見ることがないく過ごす日々〜クルーズ船のプールにて
ブルーモナークは最初の寄港地エジプトを目指して青い海の上を進む。
昨日の夕方ギリシャを発って、エジプトに着くのは明日の朝の予定だ。
40時間近くもかかることになる。地図で見るとギリシャとエジプトって近そうに見えるけど、けっこう離れているんだね。
だから今日は1日中航海の日。
そして1日中陸地を見ることがない日。
クルーズ船のプール
考えてみれば、陸で生まれて陸で育ったわたしにとって、1日中陸を見ないなんて人生で初めての経験ではないか。もちろんママやこどもたちにとっても。
「おいおい、パパ、すごいこと発見したぞ」
「なになに」
「今日はパパもママもお前たちも、1日中陸を見ないんだ。生まれて初めての体験だよ、すごくない?」
「へ~~」
「へ~~、って何そのスルー的な反応?!」
「うんうん、すごいと思うよ」
「ね、すごいだろ、パパの大発見」
よし、この話しは盛り上がると思った時ママが横から口をはさんだ。
「こどもたちは約束の2時間勉強したんだから、ヒマな話ししてないでさっさとプールい入れてあげなさいよ」
その言葉を待ってましたとばかり、まるで砂時計をひっくり返したように勢いよく水に飛び込むこどもたち。水しぶきが宝石みたいにキラキラと宙に舞う。
「あ~~あ、せっかくこれから盛り上がるところだったのに」
「あなたの話しにつき合ってたら遊ぶ時間がなくなっちゃうよ」
う、キツッ!
ブルーモナーク号には2つのプールがあるが、どちらも決して大きくない。でも深さは3メートル近くある。
その深いプールに潜ったり、飛び込んだり、プカプカ浮いたり、まるでアシカのこどものように夢中になって水と戯れるカイとリュウ。その幸せそうに泳いでる様子を見て、こどもと習い事の関係を考えてみた。こどもに習い事をさせるのは、今やごく一般的なことになっている。でも、こどもが熱心にやってくれないとか、思ったほど上達しないと嘆いている親御さんは多いのではないだろうか。
そう、こどもの習い事は親が熱くなればなるほど、うまくいかないのだ。
逆にどうでもいいとほったらかしにするほうが、こどもが上達するケースもある。
卓球の福原愛選手がその例だ。愛ちゃんの両親は長男=愛ちゃんのお兄さんを卓球選手にしようと熱くなっていた。自宅に卓球台を買って長男と両親は毎日特訓をする。愛ちゃんは兄の練習の邪魔になるからと相手にされずにいた。そこで自分も卓球が上手くなれば親の関心を引けると思い、1人で猛特訓をして腕をみがいたのだ。
また、親が楽しそうに夢中になっている姿を見せることも効果がある。
イチローの父親は、イチローが小さかった頃、イチローをよくバティングセンターに連れて行った。でも自分だけ楽しそうにボールを打ち、いくらイチローが自分もやりたいと言っても「まだ早い」と言って、決してやらせなかったと言う。だから、やっとボールを打ってもいいと言われた日以来、イチローは夢中になってバットを振っているのだ。
水泳に関しては、わたしはどもたちに泳ぎ方を教えたことも、水泳教室に通わせたこともない。こどもたちが小さかった頃は一緒に海やプールへ行っても、わたし1人で楽しく泳いでいることが多かった。今にして思えばそれがこどもの脳に「いいな~楽しそうだな~、ボクもやってみたいな~」という動機の回路を形成したのかもしれない。
一方、わたしは学生時代野球をやっていたので、こどもにも野球をやって欲しくて、こどもたちが小さいうちからずいぶん鍛えた。上手くできないと「どうしてそんなことができないんだ」と大声でしかったり。
ママも、インターナショナルスクール出身なので、こどもに早くから英語を覚えさせようと熱心に教えていた。
そしてやはり熱心さが行き過ぎて
「何度言ったらわかるのよー」とか「お前バカじゃない!」「英語なんかやめてしまえ!」と切れまくっていた。
はっはっは、完全に本末転倒ですね。
言うまでもないが、我が家のこどたちは野球も英語もぜんぜんだめです。
親が熱く教えなかったサッカーに夢中になり、水泳やテニスに熱中している今日この頃。
もう一度子育てをやり直せるなら、とも思うけど、サッカーをやっているカイやリュウの姿はかっこいいので、それはそれでよかったのかなと思う。何よりこどもたちが夢中になっているのがいい。
今子育てに悩んでおられる方が、もし何かアドバイスをもとめているなら、次のようなメッセージを贈りたい。
お父さん、お母さん、大人の先入観を捨てて、こどもといっしょにいろんなことに挑戦し、感動体験をいっぱいいっぱい共有して下さい!
日差しがずいぶん傾いたなと思い顔をあげる。
西の空が黄色いセロファンに覆れたように柔らかく輝いている。プールでは、いつの間にか外国の友達と仲良く遊んでいるこどもたち。
あれだけ熱くなって教えた英語が少しは役立っているのかな?
子供達の笑顔がこれまた誇らしげに輝いていた。