ヴィーナスの生まれた海を眺めるレストランで一休み
クリオンの古代遺跡見学が終わったら、バスに戻り、再びパフォスを目指して走り出す。
コバルトブルーに輝く海を左手に見ながら、道は登ったり、下ったり、カーブしたりしながら、西へ西へと続いている。
やがて、高台にあるドライブインの前でバスは止まった。ここでちょっと休憩するらしい。
レストラン、ペトラ・トゥ・ロミウからヴィーナスが生まれた海を眺める
ヴィーナスの生まれた海
う~~ん、確かに紺碧の海を見下ろす素晴らしいロケーションのドライブインだけど、別にまだお腹も減ってないし、早くパフォスへ行ったほうがいいんじゃない。しかも、このドライブインのレストランはツアー料金に含まれていないから、各自で支払ってくれとのこと。
えー、聞いてねーよ、そんな痛い話し。じゃーますますここで休憩する意味ないじゃん。ユーロ高のおり(この時のレートは1ユーロ190円!!)、日本人にとって家族でちょとお茶するだけで、4000円近い涙ちょちょギレの出費になってしまうのだ。
ひとこと言おうと思った時、ガイドのアシュードラが付け足して言った。
「ここから見える海は、ギリシャ神話に登場する愛と美の女神アフロディテ(ヴィーナス)が誕生した場所です」
なにぃ~~!聞いてねーよ、そんなすごい話!って言うか、先に言ってよ、それ。あぶね~、あやうく文句言うところだったじゃないかーー。
ちなみに、アフロディテが生まれたビーチは、ペトラ・トゥ・ロミウ海岸と言う。海に突き出た大きな岩の先の水の色が、ちょっと変化しているが、あのあたりでアフロディテは生まれたらしい。
へ~~。
じゃまあ、そういうことならちょっとぐらい中に入ろうか。
子ども向けプレイグランドで遊ぶカイとリュウ / プレイグランドの入り口 / ヴィーナス誕生の像
駐車場には小さいながら遊具が置かれ、こどもたちも少しの時間ならいい子で遊んでくれる。
「先に中に入ってるよー」
レストランの名前もビーチと同じで「ペトラ・トゥ・ロミウ」。なるほど、建物が海側にせり出しているため、アフロディテが生まれた場所が、も~~恥ずかしいくらいよく見える。
お店に入ると、前の観光バスで来た客でどのテーブルも埋まっていたが、まるで申し合わせたように、わたしたちと入れ替わりで全員がいっせいに席を発った。おかげで、一番窓側の眺めがいい特等席に座ることができた。
おお、ありがたいですね。
ちょうどそのタイミングで、外で遊んでいたカイとリュウが、アタマから水をかぶったみたいに汗まみれで、レストランに入ってきた。
「もー暑くてノドがからから!」
「それじゃあ、ビキビキに冷たいアイスクリームでも食べちゃおうか」
「やった~~!!」
アフロディテが誕生した神秘のビーチを見下ろしながら、冷たくて美味しいアイスクリームをほおばる。開け放たれた窓から流れ込む風が気持ちいい。
ヴィーナスが生まれた海
レストランで休憩したあと、今度はそのアフロディテが生まれた、ペトラ・トゥ・ロミウ・ビーチに下りてゆく。こどもたちと、ビーチを散歩したり、岩に登って遊んだり、膝まで海に浸かったりてし、のんびり時間をすごしたのだった。日本からはるか遠く離れたキプロスの海。
ヴィーナスが誕生したビーチの、きらきら水面にきらめく光。
海を渡る朝風に髪をなびかせ、振り向くこどもたちの笑顔がまぶしくて、わたしは目を細めた。
大きな岩の先の海でアフロディテが生まれたと伝えられている